大会規約は不備が必ずあるもの。大会を主催する勇気と覚悟は称賛すべし!

私は以前スポーツの国際大会を主催していました。4年に一度の大舞台に選手が出場するための、いわゆる「公認大会」で、世界新記録が出れば「公認」され、それを国内選手だけではなく、海外からも出場OKの「国際大会」として主催していました。

初回は小さな手作り大会でしたが、2回目から公認大会&賞金大会として開催し、選手の「やる気」と大会の「魅力」を作りました。(10年継続しました)

その中で「大会規約」もどんどん進化・変化していきました。

私の場合は以下の人数をコントロールして大会運営を行っていました。
国際大会審判員 数名(海外からの派遣あり)
ドーピング検査員 数名
国内審判員 約80名
国内外メディア 20~30社
ボランティア 約100名
協力・協賛企業 約30社 
選手 約250名

<大会には2つの約束事がある>

大会規約と競技規則は別物です。競技についての細かい設定は「競技ルール」「競技規則」などと呼ばれるものです。
「大会規約」は、
・この大会は○○を目指して開催するよ!
・この大会のルールは○○競技規則に準じて行うよ!
・選手は、この大会の○○を理解し納得して応募してね!
・気になることは参加前に質問してね!
・応援観戦する人もこのルールは守ってね!
・このルールや内容で大会を開催したいです!協賛社さん、お願いします!
など、大会の魅力・目標などを記載した、主催者の思いが詰まった文章です。これを読むと、主催者(大会)の個性がわかります。

<最初から完璧な大会規約はない>

私自身、初回大会の規約は、数個の大会の規約をコピペし、不必要なものを省き、つなぎ合わせただけで、選手への注意文や審判のルールなど記載の順番も無茶苦茶なものが完成しました。

当然、批判やお叱りも有りましたが、「大会を開催する!」という目標のために、運営側・選手・ボランティアの皆さんが支えてくれました。

<2回目からは下調べ>

初回を無理やり開催したことで、次回大会へ向けての反省点・改善点が見えてきました。「鉄は熱いうちに打て」を実行し、初回大会の次の日からすぐに、反省項目と改善項目とスケジュールプランを作成し、主催者としての責任の覚悟が芽生えてきました。協賛企業へのアプローチなども2回目からは丁寧に対応し始めましたが、今回は「規約」のみの話に絞って進めます。

わかりやすく簡潔に記載するのが基本なのは当たり前です。これを読まないと参加する資格はない!と少々強気に出たくなることもありますが、選手あっての大会であり、大会あっての選手であるという、お互いがんばろうな!が伝わらないといけない文章だと2回目以降気をつけました。

2回目の大会で、大会らしい規約ができたと思っています。他大会と似た文章も多くなりましたが、独自の大切なルールも明確にできたと記憶しています。

<3回目以降は、急激に進化と自信>

私の場合、日本語・英語での規約提出が義務の国際大会でしたので、海外大会のサイトと翻訳機能とのにらめっこ状態でした。海外大会は賞金金額がデカくて羨ましいな~と感じたり、こんな緩い規約で国際大会開催できてんのか!と驚いたり、実際に海外大会に出場した選手にヒアリングし、海外大会の運営環境などの情報を収集し、次回大会の規約に反映させていきました。

日本人の常識が通用しなかったり、海外選手のプロ意識の高さに驚いたり、私自身、地方人の知識不足で選手を困らせたこともありました。運営者としての「未熟さ」を感じてしまうことも多々ありました。
またお国柄特有のルーズさに怒りを覚えたこともあります。アジア人への偏見に対して楯突いたこともありました。

トップ選手に成ればなるほど、大会の改善案を持っていることに気がつき、海外大会へ出場している選手に積極的に話を聞くようにして、「選手ファースト」ができる余裕を持てるように変化していきました。3回目くらいになると、主催者の周りも積極的ではないけど、協力的になってくれ、主催者の思いが徐々に伝わりはじめたと感じました。

そして規約に「選手は審判に感謝の気持ちを」を記載、若い選手へ対し横柄な言動は自分のためにならないという感情をルールに記載し、大会を通して一緒に成長してほしいとの願いを込めました。

<私が作っていた規約の要点>

・関係者全員の注意点
・競技運営の注意点
・選手の注意点
・その他常識の範囲の注意点

・関係者全員の注意点 運営・審判・選手・ボランティア・応援者等、すべての人に、主催者の思い(願い)を記載。そしてこれはだけはしっかりと守って大会やイベントに参加してくださいという約束事の記載。

・競技運営の注意点 どの競技ルール(競技規則)で大会を行うか、またその根拠。この大会独自のルールはどのようなものか。この大会での成績がどのように反映されるのか。罰則規定はあるのか。緊急時の対応方法等、「その他常識の範囲の注意点」より優先度の高い注意点を記載。競技ルールへの質問は競技団体に質問、大会運営に対する質問は大会運営に質問することを記載。

・選手の注意点 実際に競技に参加できる選手の条件・参加するならこれを守って欲しいという競技ルール(競技規則)以外の条件や、大会の撮影に関する著作権の個人使用についても記載。大会主催者として、この大会が目指す選手の理想像を記載。

・その他常識の範囲の注意点 「こんなの常識だろ~」ってことを省かないことが重要で、例えば「喫煙は喫煙所を利用する」こんなの常識だろと思うでしょうが、非日常感覚になる場所では気が大きくなる人はたくさん居ますので、大会で発生しそうなトラブルをすべて記載。金銭的保証、保険、自然災害時の対応、運営の不幸事等での中止に関する事項等、とにかく気になることがあれば、すべて記載して良し。ここに格好悪いなどはなく、非常識な行為は退場させるくらいのことを記載。
最後に「今後、追加事項があればお知らせする」と記載。

<競技をやってきた年数によって常識や反応が違う>

初心者はルールもあやふやなまま大会に出場してきたりします。またその周りの方もルールを理解していないことも多いです。競技のベテランの方に競技だけでなく、大会での所作なども学ぶことが重要です。

少し競技に慣れてきてる中堅選手やその周りの人は気が大きくなりがちの人が居ます。またルール変更を理解していないまま大会に出場したりしている人が居ます。毎大会ごとに、しっかりと競技規則や大会規約を把握するクセをつけてほしいです。

ベテラン選手は「うっかり」が発動します。ルールの変更を理解しているにもかかわらず、以前のルールで準備してしまったり、大会競技中に体が勝手に以前の規則通りに反応してしまったりすることがあります。そして、うっかりの中に、口を滑らしてしまうこともあります。ベテラン選手はお手本であってほしいです。

審判は新ルールを理解していますが、それに該当する場面かどうかの判断が遅れることがあります。頭では理解している新ルール、しかし現場で新ルールに該当するかもしれない行為が発生した場合、その判断をすることの勇気に若干の戸惑いが生じてきます。

運営者は一番ミスが許されないと思いますが、実は一番ミスが多いポジションです。選手分・審判分・ボランティア分・協賛企業分・観戦者分・関係者分など全ての人数分の大会準備を主催者の数名で行っています

万全だ!と思っていても、観戦者の一部からのクレームや、選手が予定通りに行動しなかったり、機材ドラブルが発生したり、大会前夜は選手と同等に緊張と不安な状態です。

そして大会当日、褒められるのは選手のみ。運営はできて当たり前と見られます。

運営で飯を食っている企業であれば、その責任の対価はありますが、地方大会やコミュニティ大会では無償でやっているのがほとんど。
運営できないのなら大会開催するな!との批判が出たりしますが、出場できる大会があるから選手が出てくるのであって、大会の批判は選手だけがして良いものと思っています。応援者は大会へ批判するのではなく、こうしてもらいたいというお願いしか出来ないものと思います。

<最後に言いたいこと>

なぜ批判やトラブルが起こるのか?

運営者にも初心者・中堅・ベテランが存在するからです。
運営初心者は選手の活躍する場所を増やしたい!この思いを実行した勇気ある人です。それは元選手かもしれませんし、関係者かもしれません。間違いないのは、勇気を出して行動した勇敢な方です。それは選手の為に自分の時間を犠牲にする覚悟を持った方です。

選手の初心者に対してはみんな応援したり助言しますよね?同じように運営初心者にもどうして同じことが出来ないのでしょうか?

それは運営をしたことが無いからです。大会やイベント運営のノウハウを知らないまま、勝手に参加した気分でいるから、平気に暴言を吐いたり、野次を飛ばしたりしているのです。大会運営が順調に進み大会の開催が増えていくと批判も減っていきます。それは運営が大会を改善し、成長し、自信がついた証拠です。選手の成績は数字で判断したりしますが、大会は回数(継続)が成績なのです。

選手の成長や結果を体感できるのは、大会があってはじめてわかるものです。大会主催の重要性を選手や応援者はしっかりと考えて、感謝し一緒に成長してほしいと願います。


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