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倒産寸前の加工屋を黒字会社に変貌させた話 その7

オーエスイーを立て直せ④ 赤字社員たちとの闘い

わたしの考えでは赤字社員は、赤字社員になりたくてそうなっているのではないと思う。
しかし、毎日無気力であったり、会社の方針に従わず暴走したり、改善活動には断固反対をしたり、その精神態度を続けることで、いつの間にか赤字社員となっていくのだと思う。
習慣とは怖いものである。
特に悪い習慣は断つのが難しい。

赤字社員の多くは俯瞰して物事を見れず、データや事実を見ようとせず、感情の浮き沈みが激しい人が多いように感じる。
一度、赤字社員になった者は何を語りかけても、頑固にその考えを曲げず、退職か解雇になるまで、社内で問題を起こし続ける。
経営者は社内を蝕む精神態度とは断固闘うべきだと、わたしは思う。

オーエスイーの社員たちは、オーエスイーがアルムにM&Aをされた瞬間から、残業はゼロになり、給料は上がり、賞与も上がることを期待していた。
仕事内容は変わらないし、生産性も以前から上がるわけでもなく、何一つ改善もしていない段階から、現実離れした期待を膨らませる者が多かった。

自分たちが何も変わっていないのに、良いことが起きると期待することは非現実的である。
しかし、オーエスイーの赤字社員たちにはそんな簡単な事実さえも見えなくなっていたのだ。

期待外れとばかりにあからさまに無気力になる者、改善活動に毎回屁理屈をこねて従わない者や大きな溜め息をついて不満を示す者、先代社長のやり方に固執して赤字受注を繰り返す者など、一人の問題が片づけば次の一人が、その一人が片づけばまた違う一人が問題を起こす。

あまりにも社内が酷い状況のため、わたしに協力的だった切削部門リーダーのKくんまで「なぜ俺が何でもかんでもやらないといけないのだ。他の奴らは何もしないし、何もやろうとしない。俺は何のために頑張っているんだ」と消極的な思考に陥ってしまう。
このKくんについては後述するが、彼は見事にキャリアアップして、今ではわたしの片腕として、マネジメント側の立場にいる。

赤字社員が何か問題を起こすたびに、または、逆に何も行動しようとしないたびに、十分な価格で受注したものでも赤字となる案件が発生する。
また、会社方針に従わず、隠れて赤字受注を繰り返して、信じられない赤字を垂れ流す案件も発生する。

わたしはまず先代社長のように赤字受注を続けるSくんを管理職から外し、Kくんを管理職とする。
そして、オーエスイーの時間チャージを決算内容に紐付いて自動計算される原価積み上げ方式に変更する。人為的な赤字をなくすためだ。

また、部品一点一点の見積と実績比較をして、見積通り加工出来なかった製品の振り返りを一緒にして、使用工具、段取りのやり方、加工手順までを教育していく。
そのおかげで赤字受注はゼロとなる。
大きな出血を完全に止めることに成功した。

次に無気力社員、改善には反対社員は何度か面談をするも理解を得られないため、退職勧告、または解雇とする。
そこに至るまで数年彼らに語り続け、我慢し続けたが、全く状況が変わらないための決断であった。
「社内を徹底して整理すべき」
これがわたしが下した決断であった。

一旦社内を整理すると決めたら中途半端はダメだ。
全員と話をして、辞めてもらう者には辞めてもらい、新しい方針のもとオーエスイーで頑張りたい者には残ってもらうことを明確にした。

結果、元々36名いた社内が10名にまで減り、社内が寂しい感じとなり、社内外から遂にオーエスイーは終わりか?と言われるようになる。
取引先の中には「社員は家族のようなもの。そんな簡単に切るべきではない」と、オーエスイーの社内事情も知らずに説教を垂れてくる人もいたくらいだ。

しかし、その人員整理の時期がコロナと重なり、赤字が大いに膨らんでから人員整理をして、大混乱している会社が散見されるようになる。
そして、「平山社長の決断は英断だった」「平山社長は正しかった」と語る取引先が多くなっていった。
勿論、残された社員たちもわたしの決断が正しいものであったと信じてくれている。

人員整理をした後も5S、品質の徹底管理、赤字ゼロ活動を続けた結果、売上は以前の半分程度になったものの、買収以来、初の黒字化を達成。
2021年3月度のことである。

それ以来、ARUMCODE1の実加工テスト、研究開発受託も重なり、2022年も黒字、2023年も黒字決着となる予定で、純利益も優良レベルまでになっている。

今、オーエスイーではARUMCODEシリーズの実加工テストや検証、受託部品製造の受注増のため、人員を増やす計画をしている。
まずはオーエスイーを再生させ、それから雇用を増やす。
まだ完全再生とまではいかないものの、かつて倒産必至であったオーエスイーも未来が見える会社へと変貌することができたのだ。

コロナ以来、製造業を取り巻く環境はより不安定になり、何が正解で、どう進めばいいのか分かりづらい状況だ。
経済的な不安もある中で、売上が下がると心配で押し潰されそうな経営者もいるだろう。

しかし、どん底にあったオーエスイーでさえ、粘りに粘り、なり振り構わずやり切ることで、全くの変貌を遂げた。
同じ境遇にある人たちを全力で応援したい。

次回はオーエスイーを支える社員の皆が、どう変貌してきたかをご紹介したいと思う。

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