サプライチェーンに関する思索 その2

前回、加工企業がサプライチェーンの一部を構成する事前準備として、企業査定がなされることを記述した。
相当管理が杜撰だったり、財務評点が低いとサプライヤー登録が見送られるわけだが、それでも何とか大企業と取引できる手段はいくつかあることにはある。しかし、ここでは割愛する。

サプライチェーンの課題の一つとしては、この企業査定があまり機能していない、普段の業務で活用されていないことにある。
余程計画生産する製品でない限り、都度受注、そこから生産計画を立てるものであり、大抵は一品一様の生産となる。
つまりは、サプライチェーンには突発対応が常に求められるわけだ。

ここで事前の調査が役立てばいいのだが、調達企業の多くは提供してほしい製品に対して、出来ると手を挙げた企業に任せてしまう。
つまりは、製品と企業をマッチングする調達手法を取っている。

このやり方の弊害はいくつかある。

①元請企業が中抜き企業化する。元請企業の利益確保が優先されて、二次、三次下請けはほぼ利益がない状態を我慢しなければならない。二次、三次下請けの企業的成長が難しい。

②日本国内の二次、三次下請けで価格が合わなければ、中国やアジアで生産するという、見た目国産の製品が実績として登録されて、次回よりそのコストに合わせるようにとの圧力がある。

③小さいサイズの製品を大きな機械で加工するという生産効率の面や環境面から見ても良くない状況が続く。

④調達員が加工技術を学ぶことなく、非効率な加工があったとしても設計へのフィードバックがなされず、そのまま次の案件まで持ち越される。

⑤サプライチェーン全体で見ると、設備の埋まり具合を調整できず、生産委託の平準化ができないため、常に納期トラブルを抱えることになる。

これはわたしの経験談だが、ある自動車部品大手の部品受託生産をやっていた頃、弊社の半額で加工できる会社がいるとのことで、そちらに加工委託を振り返るとのこと。仮にその会社をA社としよう。我々が何度も工程検討したが、どうしても価格は下がらない。

調達員の話では、A社は日本国内の自社工場で生産しており、その工程検討努力で半額までコストダウンできていると自信満々だ。
しかし、A社にどういうやり方で加工しているのか確認したところ、中国企業に全て外注しており日本では生産していないと、何の悪気もなく言う。

A社は中国企業に年間数十億円外注をしているが、表向きは国産として大企業に納品していることは、中国では有名で、調達企業だけがそれを知らない図式だったわけだ。

結果として調達が無事に出来れば問題ないわけだが、地政学的な問題、コロナによるロックダウン、天災などが起きれば、他社で生産が出来ないくらいの価格設定になっており、それは安定的なサプライチェーンとは程遠い状態と言えるだろう。

何かのリスクが生じた時に生産企業の切り換えできないこと。
これが、調達企業が製品と企業をマッチングすることにより生じる問題である。

この問題を解決するには、製品と企業ではなく、製品と生産設備をマッチングする能力を身につけることである。
一番良いのは、事前査定の内容に基づいて加工先選定が出来れば理想なのだが、次から次へと発生する案件をこなすことに必死で、それも叶わない。

我々アルムとしては、この課題解決をMMOP(MMOPの詳細説明は後述する)でやろうとしている。
製品の要求仕様と、生産設備性能を自動判断・マッチングするアルゴリズムはすでに開発済みだ。

調達企業がこのシステムを活用することで、無理なく、無駄なく、ムラなく調達活動ができ、サプライチェーンを構成する企業も安定した受注活動が出来るようになるだろう。

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