サプライチェーンに関する思索 その4

前回はサプライチェーンにおけるコスト問題の解決をどう図るか考えてきた。
前述のように中国産を国産と偽ったり、バックエンドで人が作業しているのにAIや自動化と嘘をつくのは、真摯に開発している競合他社にいらぬ説明や検討をさせることになったり、AIや自動化に対して歪んだ理解を世間様に与えることになったりして、社会的に多大な損失を与えることになる。
最近の製造業でその嘘に乗っかるYouTuberや、プラットフォーマー、自称AIメーカーが跋扈している様子は非常に残念なことであり、日本の製造現場がいかに弱くなっているかの証左である。
ここは各自が自重を持って反省すべきであり、現実と現物をしっかり確認する努力を取りたいものだ。

さて、本題に話を戻すが、今回はサプライチェーンにおけるD(納期)について考えようと思う。

サプライチェーンの課題を解決する要点は、欲しい製品仕様と生産設備性能をマッチングする調達方式を取り入れることは既に述べた。

納期の問題もこれを適正に実施することで粗方解決するが、残る問題は時間軸、つまり生産設備のスケジューリングである。

対象製品を加工するのに、いつからいつまで掛かるのか。
これを的確に読めなければ、生産設備の空きを予測することも難しくなる。
生産設備のスケジュールを立てられないと、それだけ納期に影響するわけだ。
だからといって、スケジュールに余裕を持ち過ぎると、生産設備の稼働率に影響を与え、引いては会社の売上、業績にとってマイナスとなる。

なぜスケジューリングが難しいのか。

それは加工工程が一気通貫で自動化されていないためである。
人が介在する工程が多ければ多いほど、不確定要素が多くなり、当初のスケジューリングとの差異が発生する。

オンタイムで生産を進めるため見積や受注時から丁寧に進めるあまり、社内会議が増えたり、慎重になり過ぎて売上や稼働率が下がったり、納期のコントロールは非常に難しい。
サプライチェーン安定化の道は永遠のテーマと言えるだろう。

この面での解決策も自動化とデジタル化である。

少なくとも受注の意思決定をする時に、それ以降の工程が一気通貫で自動化されていれば、スケジュールを正確に組むことができ、意思決定権者が即断できる。
それ以上にスケジューリングさえ自動化することも可能になってしまう。
そうなれば見積も自動化でき、受注の意思決定だけ人がやれば良い状態になるわけだ。

加工工程の一気通貫の自動化。
これは簡単なようで簡単ではない。
あらゆる混在した制御を統一するか、制御同士データ連携する必要がある。
(アルムでは異なる制御のデータ連携を「制御間制御」と呼んでおり、制御と制御に必ず隙間ができる部分のソフトウェア化を指している)

完全自動化の観点で全ての工程の制御を見ると、連続しづらい仕様になっており、それを実現しようとすると、あらゆる知見を有した技術者を必要とするし、各メーカーの了承と協力、多大な費用も必要とする。

実はARUMCODEは加工工程の完全自動化を実現しようとの意思の中で生み出されたもので、それ単体では使いづらい部分がある。
しかし、自動化された加工機(アルムのTTMCなど)と併用することで生産性が爆発的に向上するわけだ。

自動化の恩恵は生産性だけでなく、計画がその通りに上手くいくことに現れる。
納期計画がその通り実行される。
それは売上、利益につながる。
だから、自動化をする。
要は儲けることを離れての自動化はあり得ないし、自己満足の何ものでもないのである。

経営者としては、自動化の目的を社員への恨みつらみに向けるのではなく、儲けることに集中することが大事なのである。

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