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倒産寸前の加工屋を黒字会社に変貌させた話 その1

秋田県秋田市。
株式会社オーエスイー。
精密金属部品の切削加工、放電加工、研磨加工を社内で一気通貫で行なう会社。
創業30年で新工場も建設し、業績も順調に見えた。
しかし、わたしの会社であるアルムがM&Aをした頃には、中身はボロボロ、死に体の会社だった。
M&Aしたのが2015年。
2023年3月度の決算で三年連続黒字となる予定だ。
倒産必至の加工企業をどう盛り返して、再生させたのかを振り返ることで、今、苦しい状況にある加工企業や製造関連企業の皆さまを勇気づけるものとなってほしいと思う。

オーエスイーをM&Aした理由

我々アルムは切削加工の完全自動化を目指す自動化メーカーで、そのモデル企業を買収すべく調査をしていた。

その折に特注部品調達先一番手のオーエスイーの社長(現在は退任)から電話が入る。

「今月の支払いを10日ほど早めてもらえないか?」

オーエスイーの早期支払い要請は今回だけでなく、数ヶ月連続していた状態だった。
わたしは思い切って尋ねる。

「社長、もしかして、経営が苦しいのですか?」

社長はどもりながらも「実は資金繰りがかなり苦しい」と吐露する。しかし、次の大きな仕事が決まれば挽回できると無理くり元気に振る舞って、わたしに不安感を与えないように頑張っていた。

「社長、もし経営が苦しいのなら、わたしに会社を売ってもらえませんか?それで会社が生き残って、社長も借金から解放されるなら良いとおもいませんか?わたしも一品一様の切削加工現場の自動化をやりたいので、是非考えてみてもらえませんか?」

少しの間があって、社長は声を絞り出す。
「宜しくお願いします」

35年も経営した会社を手放さざるを得ない感情はよく分かる。
なぜなら、わたしの父親も35年会社経営をして倒産となった時、半年近く家族にも行方をくらましていたからだ。
わたしは当時、父親の会社が倒産すると分かりながら、母親が「お前が実家から離れては生きていけない」と泣き崩れるのを見て、他社の内定を蹴って父親の会社で働くことになったのだが、最後は父親が行方をくらましたがゆえに、社員の自宅一軒ずつ訪問して、残された社員たちの最後の給料を手渡した経験がある。
わたしとしては、肝臓がんと闘いながらも、不器用に35年経営をやってきた父親が行方をくらましても、それは仕方ないと思っていた。

その父親とオーエスイー社長の姿が重なる。
ただわたしも経営者であるし、単なる同情で会社を買い取るわけにもいかない。
アルムの研究開発である切削加工の完全自動化の実証実験をする場として活用しようと考え、M&Aを申し出た。
オーエスイーを部品一個作っていくらの世界から、自分たちのノウハウで製品を開発する企業に変貌させるのだと決意した瞬間でもあった。

完全自動化の開発を進められる!
わたしの胸はワクワク感しかなかったのだが、赤字企業が持つ落とし穴に見事にはまることになる。

つづく。

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