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倒産寸前の加工屋を黒字会社に変貌させた話 その5

オーエスイーを立て直せ① 工場を綺麗に

2016年4月。
先代社長も解任して、わたしがオーエスイー新社長に就任した。
わたしがまずやったのは徹底した5Sである。

図面は散乱。
工具もあちこちに散らかり放題。
切り粉は掃除せず放置。
クーラント液で床が滑りやすい。
故障した機械も放置。
材料置き場もバラバラでどの製番か分からない。
事務は重複作業だらけで残業ばかり。

「まずは毎朝掃除」
「床も自分たちで塗り直そう」
「切り粉は毎回の加工後には掃除」
「故障した機械は処分」
「置き場も決める」

こうして汚くて雑然とした現場が見違えるまでになった。
昔のオーエスイーを知る人は、明らかに変わった現場に驚くだろう。

検査器具の集中管理。今まで校正も定期的にやっていなかったが、メンテナンス担当を決める。
工具の集中管理。今まで加工担当者ごとにバラバラに管理していたものを、工具管理担当者が一括管理する体制に。そのおかげで年間1,200万円の経費削減を実現。
材料の集中管理。今まで材料を無駄にしていたが、一括管理することで材料代を削減。
精度を出せない老朽化した機械を徹底して処分。年間600万円の修繕費を削減。

矢継ぎ早に改善していき、経費を一気に削減する。
5Sを徹底することで、無駄が見える化され、さらに経費を削減。
オーエスイーに無かったものをカルチャーとして根付かせて、今でも5Sを頑張っている。

オーエスイーを立て直せ② 絶対品質を実現せよ!

先代社長時代は、不具合が多く、クレームで返ってくる製品が多かった。
それがゆえに納期遅延することが頻発していた。
その時の不具合記録は無かったので、定量化されたデータを提示はできないが、わたしの肌感覚ではクレーム率50%程度だったのではないかと思う。
オーエスイーは品質不良、納期遅延の常習者だったわけだ。

モノづくりに従事しながら品質をないがしろにしてはいけない。
5Sと同時にすぐにやらねばならない改善である。

しかし、オーエスイーの品質保証には問題があった。
まず工程内検査の基準がなく、前工程の加工不良が誰の責任か分からない状態になっていた。

また、ゲージ類、検査器具も揃っておらず、あっても校正されていない、錆びている状態。

さらには、最終検査は教育されていないパートタイマーの中年女性たちが実施しており、検査の緊張感はなく、主婦が暇つぶしに井戸端会議をしに来ているような雰囲気だった。

それで、わたしは大手自動車メーカーで教育を受けた検査のスペシャリストをオーエスイーに送り込む。
検査器具の校正、新規購入をする。
古い検査器具は廃棄。
工程内でしっかり作り込み、検査もして、後工程に渡すルールと運用の徹底をした。

さて、問題は遊び感覚で来ている自称検査のパートタイマー6名である。
彼女たちは不具合と分かりながらも、それをお客様に発送してしまうことを繰り返していた。
わたしがその不正について問いただすと、彼女たちは「先代社長が暇つぶしに来るくらいでいいと言うから働いてあげている。そんなに真剣にやれと言うなら、わたしたちは考えてもいいのよ。そうなると検査は回るのかしら?」とわたしを脅してくる。

「それなら辞めましょうか。今のオーエスイーにあなた方の居場所はありません」

彼女たちとしては、わたしが脅しに屈すると思ったのだろうが即座に解雇。その後、労基に訴えるだ何だと執拗にわたしを追い詰めようとしたのだが、全て空振りに終わる。

その内1名はオーエスイーに残りたい、今の改善は良いことで自分も貢献したいと申し出てくれた。
彼女は正社員となり、今もオーエスイーの管理として活躍してくれている。

こうしてオーエスイーの不具合クレーム率は0.01%までになった。
その0.01%もお客様の設計ミスが原因で再製作となったものである。

品質が担保されると、今まで離れていたお客様が戻ってくる。
そして、利益がしっかり出る価格で発注をくれるようになる。

「絶対品質」
オーエスイーのモノづくりの思想として、この後も根付くことになる。

ただし、オーエスイーを倒産に追い込む問題はまだあった。
次にわたしが手を付けたのは、赤字受注を強制する売上第一位と第二位の顧客との対決である。

つづく。

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