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倒産寸前の加工屋を黒字会社に変貌させた話 その6

オーエスイーを立て直せ③ 「お客様」と対決せよ!

売上第一位、第二位顧客に値上げを要求する。
下請け企業体質になっていたオーエスイーとしては非常に難しい決断である。
しかも、その二社からの受注を失ってしまうと、年間売上の半分以上を失うことになる。
つまりは、仕事を切られてしまえば必ず倒産するという状況だったわけだ。

勿論、社内からも反対が起きた。
「お客様の言うことに全力で従ってやるのが俺たちの役割でしょ!お客様と対立するような平山社長のやり方は反対だ!」
あからさまに反対意見を述べたのは、先代社長の秘書的役割を果たしていたSくんだ。
彼は社内外であることないことを言いふらすようになり、後に解雇処分となるが、今はまだ先代社長からの引き継ぎで工程管理者を続けていた。

「しかし、この単価ではオーエスイーは必ず、しかも数ヶ月後には倒産するよ?」
「・・・・」
Sくんは不満気に黙り込む。

「値上げ要求しても倒産、値上げ要求しなくても倒産。それなら前に進むしかない。すぐに取り掛かろう」そうして売上第一位の顧客の時間単価を800円レベルから5,000円レベルに変更し、見積と共に電話での説明を試みる。

「何を馬鹿なこと言ってるんだ!先代社長の時はしっかり対応してくれていたぞ!新しい社長になってから値段対応を全くしてくれなくなった。うちの仕事はいらないという意味か!?」
「時間単価が中国でやっても合わない、材料代にもならないものを、そのままやらせようと言われるなら、そのように受け取ってもらって構いません」
「うちにそんな態度を取って、お前らは生き残れると思うのか?」

脅し文句は続く。
社員たちはひるむが、わたしの決意は固い。

「そこまで言われるなら、あなた方の仕事の見積もやることはありません」

こうして売上第一位の顧客は取引停止となる。
次は売上第二位の顧客である。
この会社にも時間単価5,000円での見積を提出して、電話にて説明する。
値段が合わなければ仕事は出せないとのこと。
次月からはあらかさまに仕事量が減り、社内に動揺が走る。

「今まで残業しなければこなせないくらい仕事量があったのですが、今月は、、、。どうしますか?平山社長」と工場長。
「心配はない。既に全国に営業回りをして、受注となっているお客様もいる。わたしがそのお客様たちにオーエスイーの窮状を説明して、何とか助けてほしいとお願いしている。必ず売上は盛り返して上手くいくよ」

その言葉通り、わたしは一か月の間に東北、関東、東海、近畿、北陸のお客様を営業し、営業し、営業しまくった。
深夜車を走らせ、朝一番からお客様と面談する。
オーエスイーの強みや取り組んでいる改善活動、それでも会社として厳しい状況にあることも説明する。
まさになり振り構わずの営業だ。

「経営状況が厳しい加工屋とは取引できない」と門前払いのお客様も数多くいたが、「オーエスイーがなぜ短期間で品質向上できたか教えてほしい」「単純に平山社長を応援したい」という声も増えていく。

泥臭い猛烈営業を続けたおかげか、一か月間仕事が全くない状況から、一気に売上が回復した。
苦しい状況の中、取引を開始したお客様はほぼ全て、今でも取引が続いている。
あるお客様は仕事を出す側だったのが、現在では我々の仕事を請け負ってくれている。
当時の寛容な調達担当の皆さまには心から感謝すると共に、わたしの一生をかけて恩返ししたいと思う。

売上は回復したものの黒字化するまでには、まだまだ問題は山積していた。
オーエスイーが黒字化するには4年の赤字を耐え忍ぶ必要があった。
以前、「赤字の原因の半分は社員側にある」と述べていたわたしの予測が見事に的中することになるのである。

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