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倒産寸前の加工屋を黒字会社に変貌させた話 その2

M&A成立。
オーエスイー社長に会社を売ってくれるように打診をしてから一年で、契約締結となる。
メインバンクと当時の顧問税理士にオーエスイーの企業調査を依頼して、「問題なし」の回答をもらってのスピード契約だった。

わたしとしては起業して10年目のM&Aであり、心躍っていたし、経営者仲間にも若気の至りで「俺はM&Aするんだ」と格好を付けたりしていた。

しかし、これが赤字企業特有の体質との地獄のような闘いの始まりだった。

M&Aの初手

オーエスイーを買収し、金沢から管理者を一人派遣させる。
彼はサラリーマン時代からの友人であり、ビジネスの師匠でもあり、ビジネスパートナーでもあった。かつ、切削加工企業の経営経験を持つプロだ。

「最初の三ヶ月はただ何もせず、オーエスイーの日常の業務の流れ、管理をつぶさに報告すること。そして、部品一点一点の売値、原価の詳細を管理表に記録すること」

これがわたしの最初の指示だった。
この指示は正しかったと思う。
なぜなら、この原価管理表がきっかけで、オーエスイーの受注の杜撰さが明るみに出ることになったからだ。
そのことは後で記述することにして、M&Aして一週間ですぐに落とし穴にはまる。

M&A当初のオーエスイーの事務所風景


赤字企業の落とし穴① 簿外未払金の存在

2015年3月31日M&A当初のオーエスイー決算。
売上:約4億円、純利益:700万円。
(実際にはアルムが無理くり発注を出して黒字化しているので、約2,000万円の純損失)

意気揚々とオーエスイーで頑張るぞと思っていたのだが、4月7日に簿外未払金(帳簿に載せていない未払金)が発覚する。
税金、機械や工場修繕費、取引先への支払いを滞らせており、合計すると約数千万円にのぼる。
しかも、すぐに支払わなければ、営業ストップするような状態だと言う。

オーエスイーに6,000万円出資した分では足らず、最終的には運転資金を含め追加で1億円の貸付を、アルムからやらざるを得ない状況になってしまった。

ここでのわたしの反省点は、M&Aする時のデューデリジェンスをメインバンクや税理士に任せきりにせず、現場と財務の突き合わせを自分でやるべきであったということだ。
これはM&Aをして事業拡大したいと願う方々にとっても反面教師にして頂けることだろう。
(メインバンクとは現在も良好な関係を築いており、メインバンクを責めているわけではない)

ただ、これはまだ序の口で、これからが赤字企業体質との本当の闘いとなるのである。

つづく。

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