サプライチェーンに関する思索 その6

サプライチェーン・マネジメント(SCM)について思索を深めていくと、単純に生産性という言葉では片付けられない苦労ともどかしさがあることが分かる。

調達企業と加工企業双方の努力と、継続的な変化が求められることも気付かされるに違いない。

上流工程から下流工程での要諦と、どのようにQCDを創り出していくのか、自動化とデジタル化がなぜ必要なのかも理解できたに違いない。

SCMの上流から下流まで自動化とデジタル化で繋ぐ。
これは選択肢の一つではない。
これをやらなければ、今やっていることの価値が陳腐化して、競争から脱落させられることになる。
それくらい日本の製造現場は海外調達に頼り切っており、国内調達に切り換えて製品価格に転化することも難しい状態だ。
つまりは、日本の製造業は一品一様の生産現場の自動化を真剣にやらなければ前にも後ろにも進めない状況にある。
それなのに、自動化で仕事が奪われる、デジタル化は嫌だと悠長なことを言っている場合ではないのだ。

SCMにおいてQCD以外に真剣に考えるべきことは在庫の問題だ。
やれ中国の買い占めだ、やれウクライナで戦争だ、やれ台湾有事だなどで、サプライチェーンの寸断がリアルな実感として押し寄せていて、企業経営やその業績に暗い陰を落としている。

過去数十年にわたり、自動車メーカーが推進したジャスト・イン・タイムの限界が如実に現れてきたのではないかと思う。
自社だけでなく、グループ会社やサプライヤーにまでJITの考え方が広がり、それをやりさえすれば効率化して業績は上がると信奉されてきた。

しかし、実際には自動車メーカーはそのグループ会社に、グループ会社はその関連会社やサプライヤーに負担を強いてきただけで、「俺が在庫を持ちたくないから、お前らが在庫を抱えてすぐに納入しろよ」の唯我独尊的システムになってしまった。

サプライヤーは遅延してはいけないため、必死に残業して、必死に在庫を抱え、必死に付いて行ったわけだが、それが報われているかどうかは不明である。

ただ、メーカー側としても在庫はリスクを増大させることになり、出来る限り在庫を少なくしておきたい気持ちは分からないでもない。

この問題も実は自動化とデジタル化で解決できる。
一品一様の自動化は、欲しいと思った時に図面データをシステム上に投入すれば、必要なPMIやNCP、見積やスケジュールなどを自動的に出力してくれる。
まさにJITを無理なく実現できるわけだ。

我々アルムのMMOPがそれに当たる。
大手メーカーが独自のクローズドなMMOP(サプライヤーをクラウドで繋いだ自動化システム)を構築すれば、サプライヤーはマシニングセンタをそのシステムに接続するだけで、自動的にプロジェクトの受発注、材料や工具の仕入れ、加工、検査までやってくれる。

あくまでも人手でやることを貫くのであれば(時にはデジタルで繋いでも自動化されていなければ)、JITを継続するには無理があり、大手メーカーは在庫を積極的に持つべきだろう。
もし、今のまま在庫を持たない経営をするのであれば、MMOPのような自動化システムを育成し、支援し、サプライヤーに至るまで導入を進めていくべきだ。

このどちらかに一つの決断を迫られていることを忘れてはいけない。
日本の製造業は実は背水の陣の状態であるのだ。

わたし個人の意見としては、大手メーカーはその豊富な資金をMMOPのような自動化システムに投じるべきだろうと思う。

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