ときメモGS1~4感想

ときめきメモリアル Girls Side 1

4はプレイしていたため、作中にたびたび出てくる葉月珪なる人物を知るために当人を攻略しようと決めていた。
基本的には葉月珪をメインに好感度を上げていたが、パラメータを上げる影響で登場してきたキャラクターにも触れる。GS4で波止場に奇妙なオブジェを造り上げていた三原色の我の強さには大層驚いた。これは1での三原色というよりも、のちに続く2の博物館内でチラチラ画面に映りこんでくる三原色に驚いたとも言う。3では胸像まで作っていたし、まさか4だけでなく3でも波止場に奇妙なオブジェを創作していたとは思わなかった。
思わず脱線してしまうほどキャラクターの濃かった三原色だが、本命は葉月珪である。彼に抱いていたイメージは「クールで、かっこよくて、なんでもそつなくこなす人」だったのだが、まさか自作のアクセサリーをひっさげてフリーマーケットに出展する行動力を見せてくれるとは想像していなかった。しかし緑のバケットハットをかぶってクールに路面にうずくまる彼はまるでスナフキンだった。おもしろかった。イベント客に声をかけず、ひたすら動じない葉月珪を主人公が助けるという構図だったのだが、イベントでお客さんにどう声をかければいいか、最初はわからないよな……としみじみ思いながら、同時に葉月珪の人間性が見えた気がした。なんでもそつなくこなせないこともある。葉月珪へのイメージが少し変わった。イメージが変わったといえば、葉月珪と過ごす海辺でのクリスマスだ。一年前に遠くに見える夜景を見つけ、それからずっと主人公に黙っていたらしい。意外におちゃめだ。そういう健気なサプライズもするのか、と葉月珪に対するイメージがまた変わった瞬間だった。
そういえば、1をプレイしている最中、「みんな自分の好きなことがハッキリしていて羨ましいな」と感じた。アクセサリー作りが好きな葉月珪といい、がむしゃらに創作に明け暮れる三原色といい、なんだか眩しかった。そういう10代を過ごしてみたかったな、と少しさびしい気持ちになったのをおぼえている。


ときめきメモリアル Girls Side 2

完全に見た目で若王子先生を選んだ。
プレイ前から「佐伯瑛はやばい」と風の噂で聞き及んでおり、メインヒーローだし初周は彼を攻略するか……と思い入学式当日を迎えた。ところがクラスの担任として登場した若王子先生のビジュアルがあまりにもハマりすぎてしまい、佐伯瑛に内心謝りつつ先生を攻略すると決めた。陸上部の顧問らしいので陸上部に入った。学力が重要らしいのでひたすら学業に励んだ。序盤において先生からの唯一のお誘いである課外授業にも根こそぎ参加した。なんという充実した学園生活か。こういう10代を過ごしてみたかった、と激しく思った。
先生はIQ200の天才科学者でかつては海外の研究施設で軟禁状態同然の生活をしており日本に帰国したあとは貧しさのあまりウサギやヘビを捕まえて食べていたこともあるうえに現在は海外の人間に追われている、というフィクションもフィクションな設定を抱えているのだが、若王子先生の魅力はそこじゃない。もちろん見た目も良いがそこでもない。あの大らかさ、朗らかさこそが最大の魅力だ。それから、陸上部の試合で「あとほんの少し冒険してみればタイムが縮まるかもしれないよ」と言ってくれるのだが、この言葉選び、これが本当によかった。「頑張れ」とか「勇気を出して」だとかじゃなく、「冒険」。冒険には失敗も怪我もつきものだけど、得られるものもちゃんとある。それを伝えてくれる言葉の選び方、ここにこそ若王子先生の魅力がぎゅうぎゅうに詰まっているんじゃないかと思う。それを朗らかな先生が言うから良い。引っ込み思案な転校生が来たとき、初日だから緊張するのはしかたないという主人公に「そうだね、先生もそう思う」と言ったり、趣味を訊かれたもののうまく答えられない転校生のかわりに「趣味は猫のノミとりです」と自分の趣味を言ったりする先生、非常に良かった。生徒たちよりも背が高いけれど、それでも同じ目線で物事を捉えようとしてくれている気がしたのが良かった。反面、「来年も君の手がかじかむことがありませんように」と言いながら主人公の手を温めてくれたり、デートの寄り道に「恋愛をしよう。お互い相手が見つかったら」と言ってきたりするので、非常に良くない気持ちにもさせられた。本当にやきもきした。主人公が未成年なので先生の対応はこれでもかなり思い切っているのだが、それでもプレイヤーの心情は乱高下極まりない。
ところで佐伯瑛とは1、2回しかデートに行かなかったのだが、どうやらパラメータを上げていくと自動的に佐伯瑛(含む攻略対象の男性)の好感度も上がるらしく、3年生になるころには佐伯瑛から好かれるようになっていた。もちろん爆弾も抱えさせた、不本意だったが。3年生にもなれば若王子先生との仲も順調で、このまま卒業を迎えれば……というとき、とある事情で佐伯瑛が遠くの親元に去ってしまう。問題はその別れ際なのだが、あろうことか佐伯瑛、「耐えられないんだ!」と叫び、こちらの心に爪痕を残していった。曰く、結局は親に逆らえず、普段働いていた祖父の喫茶珊瑚礁も閉店してしまった今、これ以上自分の情けない姿を主人公に見せたくないから俺のことは忘れろ、だそうだ。無理である。そんな悲痛な思いと叫び声を聞かせられたら、無理である。このときようやく「佐伯瑛はやばい」の片鱗を見せられた気がした。なるほど、主人公に軽口を叩いたりチョップで小突いたりする可愛げある姿は「佐伯瑛はやばい」の本質ではなかった。いや違う、痛々しい感情を隠すようにして普段の高校生然とした姿があり、さらにそれを覆う優等生の仮面がある。たまにつらそうな表情をする。それらをひっくるめて「佐伯瑛はやばい」なのか。1の葉月珪とは異なる不完全さ。なるほど佐伯瑛は本当にやばそうだ。この衝撃を岬の灯台で若王子先生から愛の告白を受ける最中にまでも引きずってしまい、ときめきメモリアルというゲームはなんというか、その、好き。そう思った。
上記まで書き終えたところで改めて佐伯瑛を攻略した。途中、佐伯瑛に「(好きな異性のタイプは)本当の俺を見てくれている人がいい」と言われた。そうか、それを言うか。そう言うか。「(主人公と一緒にいるときは)本当の俺でありたいと思う」とも言われた。そこまで言ってしまうのか。それはもう告白なのだよ。そう突っ込みたかったが、このゲームは卒業式に結ばれるシステムなので佐伯瑛も主人公もなんとなく良い雰囲気を強制的に押し流してしまった。
佐伯瑛を攻略していくと、彼と彼の祖父である喫茶珊瑚礁のマスターの口論に遭遇することになる。口論といっても、学業と仕事で限界を迎えかけている佐伯瑛を見かねてマスターが無理やり店を閉め、マスターはただ孫を冷静に諭している様子だった。しかし、両親に喫茶珊瑚礁を畳まれそうになったところを反抗していた佐伯瑛は祖父の言い分にも我慢がならないようで、不機嫌そうに自室に行く。そのあとを追ってきた主人公に佐伯瑛は「疲れた」と弱々しく吐いたのだが、なんというか、その弱音、もっとはやく言えなかったのだろうか。ただマスターは佐伯瑛について「甘え方を知らない」と評していたので、これほど追い詰められなければ弱音を弱音として吐けなかったのだろう。佐伯瑛もマスターに弱音を言ってしまえば即刻閉業になってしまうと思い、本音を言えなかったのだろう。そして佐伯瑛はやはり「耐えられないんだ」と言い残して主人公の前から姿を消してしまう。
そういえば、初詣の帰りに「正直になることと人を傷つけないことを両立したい」というような旨の言葉も彼は残していったが、正直でいなさすぎるのも時として人を傷つけるんだぞと強く言ってやりたかった。自分で自分の心にヒビを入れても誰も気づいてあげられないというのに。だが佐伯瑛のなかで「正直になること=心身がもたないと打ち明けること」と「傷つけないこと=祖父が好きな喫茶珊瑚礁を閉業させないこと」が結びついているのであれば、何も言えなくなっていたのも無理はない。それはそれとして「あ」とか「う」とかで構わないから何かしら言ってほしかったが。
そんな悲しい気持ちで迎えたバレンタイン、手作りチョコレートを抱えて喫茶珊瑚礁まで向かった主人公だったが、やはり佐伯瑛の姿はない。かわりにマスターと話すことができた。今までは佐伯瑛の視点でしか閉業の理由を知り得なかったが、ここでマスターからもそれを聞けた。マスターとしては、孫にこれ以上無理を強いるのは心苦しかったのだろう。小さいころから可愛がっていた孫ならなおさらだ。「瑛は、僕にとってはいつまで経ってもチビスケ」と語るマスターに思わず泣いてしまった。佐伯瑛がお祖父ちゃんっ子なのも頷ける。マスターの温かさを知ることができて嬉しい一方、この温かい居場所が突然なくなってしまった佐伯瑛という青年の心情は想像を絶するほど痛ましいだろうとも思った。人は痛みで成長するというが、とはいえ痛さは感じないに越したことはない。だからこそ佐伯瑛もマスターの居場所を守ろうとしていたのだ。それはマスターも承知しているが、可愛い孫の切羽詰まった顔を見るのは祖父として耐えられなかったのだろう。マスターは「正直になること=喫茶珊瑚礁が好きという気持ち」と「傷つけないこと=孫の心身を優先すること」を両立させず、切り離し、正直になることのほうを削ぎ落としたのだ。とても寂しいが、孫の心身を優先させたかったのもマスターの正直な気持ちのひとつでもあるだろう。どちらかのためにどちらかを捨てられるのは大人だから使える技なのだろうし、本当の自分がどのような気持ちなのかを見極められるのも経験を重ねた大人だから為せる技なのだと思う。
マスターは「こんなに素敵なお嬢さんを残しておけない」というようなことも言ってくれたが、それはこちらのセリフであり、佐伯瑛はこんなに素敵なお祖父ちゃんを残したままにしておけないだろうと思った。佐伯瑛もやばいが、マスターもやばい。自身を取り巻く状況が変わらなければ本音を聞かせやしない。この祖父にしてあの孫ありだ。おい佐伯瑛、お祖父ちゃんをひとりぼっちにするな。そんな気持ちが通じたのか、佐伯瑛は卒業式の日に戻ってきてくれた。マスターが諦めた喫茶珊瑚礁の存続も佐伯瑛は諦めていなかった。きっと両親を必死に説得してきたのだろうと信じたい。なんというか、本当に、本当に良かった。佐伯瑛と主人公が営む喫茶珊瑚礁にいつか元マスターがコーヒーを飲みにくる、そんな画をどうか妄想させてほしい。
余談だが、佐伯瑛とガラス展でデートしたときの反応から「ガラス越しに見るとお前変だぞ」とかなんとか言われたりしないのかなと思っていたら、見事に修学旅行でその会話をしてくれた。期待の裏切らなさがすごかった。
それからクリスことクリストファー・ウェザーフィールドに対して「この男の子、髪を結んだら普段の可愛らしさとのギャップがすごそうだなあ」と思っていたら、作中でもれなく一枚絵や立ち絵として現実となった。おまけにスーツも着てくれた。もう大満足だった。やはり期待の裏切らなさがすさまじい作品である。


ときめきメモリアル Girls Side 3

ただただ設楽先輩がおもしろい作品だった。あまりの傍若無人っぷり、それが良かった。
設楽先輩こと設楽聖司の好きなセリフは「遠慮してるように見えるか? 全然してないよ、むしろ嫌がってる」、「苦手って言ったか? 言ってないよ。やらないって言ったんだ」だ。この「○○か?」のあとに「△△よ」と続くところが良い。語尾の「よ」、この「よ」を付けなさそうな性格なのに付けるところ、ここが最高に良かった。この二つのセリフや、彼が頻繁に口にする「なんで」や、おもに紺野玉緒との会話で出てくる「そういうのって、どんなのだ」。このように設楽聖司といえばこんなセリフだな、こんな言い回しだな、と思い浮かべやすいキャラクターをしているあたり、シナリオライターも彼を書くのは楽しかったのではないかと思う。私だったら楽しい。ただひねくれた性格な以上、会話を収束させるのは大変かもしれない。個人の勝手な意見だが。
そんなことを考えながらうっかり2周してしまうほど設楽聖司という人間がおもしろかったし、彼が主演を務める文化祭の学園演劇のモチーフである『かもめ』に触れたり、初登場時に彼がピアノで弾いているショパンの『バラード1番』の動画を漁ったりと、久しぶりにミーハームーブをさせられた。そのくらいおもしろかった。彼が主人公という精神的支柱を増やし、ふたたびピアノに向き合えるようになって本当に良かったと思う。何より、彼がADVで「道が閉ざされたら、新しい道を探せばいい」と語っていたのは、学園演劇での「才能に一途に生きたとして、行き着く先が行き止まりだったら」という自分への問いかけに答えを出せたからなのだと思うと感慨深かった。ともすれば演劇の最後に言った「いい、行けよ」は昔の自分に対しての文句だったのではないだろうか。改めて考えたいのでもう1周はしようと思う。
ところで、今作のメインヒーローは桜井琉夏と琥一の兄弟なのだが、この二人はそれまでのキャラクターとは雰囲気が異なっている。彼らは青年漫画に出てくるような、絵に描いたようなヤンキーだ。他校の生徒とモメるし、同級生からは恐れられているし、喧嘩の真っ最中のシーンが一枚絵として出てくる。まるで悪党な顔の一枚絵の彼らを見るたびにプレイするゲームのジャンルを間違えているのかと疑ったものだ。そんな彼らのバックボーンについてはまだ真剣に深掘りできてはいないのだが、琥一と下校する際に彼が言っていた「つまらない青春が眩しい奴もいる」。これにはただただ頷いた。琉夏は何を考えているのかわかりづらい、繊細そうな印象だが、琥一は根は素朴なところがあるのだろうと感じた。文化祭の折に用心棒と言われてまんざらでもない姿は可愛くさえある。それについて等身大の少年らしさと一概にくくってしまうのは雑なようで気が引けるが、2の佐伯瑛が周囲に隠していた純朴さが琥一からはうかがえた。また、主人公の女友達である花椿カレンの、周囲から思い描かれる自分像と自分が思う理想の自分像の乖離への悩みを聞いたときはなんだか切なくなった。どうか幸あれとさえ願った。だが、彼ら彼女らの悩みを全部まとめて「眩しい」とも思ってしまう。
しかし、ぶっきらぼうだがわかりやすい性格の琥一と違い、琉夏はやはり掴みどころがない。周回を重ねていけば彼に対する解像度も上がっていくのだろうか。そんなことを思いながら、ボウリングの調子が悪いとぼやく琥一を「おいおい、泣きが入ったか?」と煽ってやった。ナイトパレードでも「へっ、悪かねぇ」と粗暴に感想を述べてやった。ときめきメモリアルの名を冠するゲームの主人公の口調がこれほど荒ぶって良いのだろうか。だが大変おもしろかった。琉夏に対してだけではなく、シリーズそのものに対する解像度も上げていきたい。
それから琥一が「女は○○」と口にするたびに思わず「女だからって○○じゃないといけないのか? じゃ、男のお前は△△なんだろうな」と反論したくなったが、これに関しては完全に設楽聖司という人間に影響を受けすぎたからである。
設楽聖司、なぜああも嫌味を嫌味で返す嫌味のラリーを続けたがるのだろうか。かと思えば「俺は嫌だ」のひとことで会話を強制終了してくることもある。2の佐伯瑛も「屈折している」と言われていたが、設楽聖司のほうがよっぽど屈折していると思う。そこが良いのだが。屈折に屈折を重ねて逆にまとまりがあるのがすごい。


ときめきメモリアル Girls Side 4

今作が初めて触れるときめきメモリアルだった。
ガソリンスタンドのアルバイトで出会う他校の男子生徒、白羽大地が好きだったのだが、なぜか3年生を迎えるタイミングで忽然と姿を消してしまった。相思相愛だけどまだ交際には至っていない、いわゆる両片思いの状態だったのだが、急にアルバイトを辞めて姿を消した彼には困惑させられた。どうやら彼を攻略するにはパラメータを上げたり、イベントを起こす必要があったらしい。そんな情報は知らないまま走り抜けた1周目は誰とも結ばれることはなく、今作のメインヒーローである風真玲太にせっつかれるまま高校生活をやり直すことに。泣く泣く2周、3周、いや6周くらいした。毎回、大地ではなくほかの男の子を攻略してしまったが。
そのなかでもとりわけ印象に残っているのは柊夜ノ介だ。これは彼を好きな人からは怒られそうな話なのだが、柊夜ノ介、ラストの告白で彼の印象がよくないほうに変わってしまった。かいつまんで言うと、柊夜ノ介は劇団座長かつ生徒会委員で日ごろからハードスケジュールなのだが、その忙しさを察してほしいがあまり主人公を無意識に責めていた、と告げてくる。このセリフに、そうか、主人公は責められていたのか、となんとも言えない空虚な気持ちになった。そのなんとも言えない気持ちをいまだにうまく言語化できずにいるので印象に残っている。ただ、その点を含めてじつに人間味のあるキャラクターだった。夜ノ介が演技にストイックすぎるあまりに劇団の仲間との関係が拗れる様子を見てしまった際はお腹が痛くなったりもしたし、目の前で泣かれたときはやっと泣いてくれたかと安堵したし、一度は離れていった仲間が再び戻ってきてくれたときには心から喜んだりした(仲間は夜ノ介の演技を見て戻ってきてくれたため、喜びもひとしおだった)。そのあたりも、彼が印象に強く残っている理由だ。最後に空虚な気持ちを抱いたとはいえ、柊夜ノ介という人間は大好きだ。彼の過ごしたような過酷な10代も、数年後に振り返ってみれば眩しいものとなるのだろう。そう願う。
今作のメインヒーローである風真玲太は9年振りに日本に帰国した主人公の幼なじみだ。1、2、3のメインヒーローたちとは大きく違い、とにかく風真玲太から主人公への束縛ともとれる好意がすさまじいのだが、それも9年会えなかった寂しさの裏返しなのかと思うと納得した。やたら主人公の行動を「禁止」したり、ほかのキャラクターへ嫉妬したりと、独占欲からの言動ばかりが目につくが、それらはまだ可愛げある。終始個人的な意見で申し訳ないのだが、9年前の思い出ばかり見て現在の主人公を置いてきぼりにするのは、なんというか、もっとこう、なんというか。またしてもうまく言葉にできない気持ちになったのだが、若王子先生の言葉を借りるなら、風真玲太には主人公に対してもう少し「冒険」してほしかった。いや、頑張れ。勇気を出して。応援している。大丈夫だ。安心しろ。君ならできる。なんでもいいから、そうした言葉をたくさん投げかけたかった。いっそのこと風真玲太は若王子先生と出会うべきだったのではないだろうか。

これはどの生徒キャラクターに対しても言えるのだが、彼ら彼女らにはつねに「安心」が与えられていてほしい。その前提のうえで冒険してほしい。葉月珪、佐伯瑛、桜井琉夏、桜井琥一、風真玲太という親元を離れているキャラクターにはとくに。それともすでに彼らは冒険中なのだろうか。それにしては親に対する気持ちが不安げなキャラクターがちらほらいるし、冒険した結果が「頼むよ。耐えられないんだ」になってしまった佐伯瑛を考えると心がちくちくしてしまう。そんな彼らを救うのが主人公なのかもしれないが、救わなかった世界線の彼らはあまりにも、本当に、なんというか、残酷だ。そうした無情さも楽しめるのがフィクションの醍醐味だが。
かといってまったく安心感のなかったキャラクターばかりだったのかと言われればけっしてそうではない。三原色やクリストファー・ウェザーフィールド、本多行、白羽大地らは妙に軸のしっかりした安心感があった。そのうえでおのおの好きなことに熱中していたように見える。みな好奇心の対象が多いからだろうか。そうした安心感をメインヒーローにも求めたい。そんなことを思った。


おわり

どれもおもしろかった。すごく。どれも甘酸っぱい青春だった。ものすごく。
2だけやたら長文の感想になったのは、若王子先生の印象が強かったのと、シリーズでもとくにメインヒーローの変化が感じられた作品だったからだと思う。
1の姫条まどかや2の志波勝己も攻略してみたいが、なんだかわりと深い闇を抱えていそうなのでたじろいでいる。3の桜井琉夏と桜井琥一も同じ理由で足踏みしているところ(なんだかんだ彼らと修学旅行先で蟹を食べに宿を抜け出したが)。2の氷上格は、あのまっすぐさがおもしろそう。正論を述べすぎて生徒会長に選ばれなかった彼の姿には心が痛くなったが。ただ教師のかわりに枕投げを止めにきたときは笑った。
それから、3の設楽聖司が「お前と会ったのが今で良かった」と言ったり、4の氷室一紀が「出会いを今からやり直したい」と言ったりと、つっけんどんなキャラクターが昔の自分を悔やんでいるのは微笑ましかった。
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