森鴎外と脚気

森鷗外はドイツに留学し医学を学び(ついでに現地女性を誑かして捨て)、その後陸軍軍医総監にまで上り詰めた当時のエリートだったが、「出世する能力」には長けていても「医師」としては無能だった。
その結果鴎外が総監する陸軍では脚気による大量の死者が出続け、一方海軍で兵食改革に取り組んだ高木兼寛海軍軍医総監の下で海軍は脚気罹患率を激減させることに成功した。
この話は知る人ぞ知るところではあるけれど、多くの人が「森鴎外は文豪かつ陸軍軍医総監にまで上り詰めた明治の偉人」という認識しかないだろう。
しかしその実態はわりとクソ野郎だぞ、林太郎。

これは私がこれまでも何度か取り上げてきた話題ではあるけれど、今回もまた取り上げることにしたのはこのかつての「脚気対策」と現代の「糖尿病対策」に多くの共通点があると思えてならないからだ。
かたやイギリスでの実体験とデータに基づいた兵食改革としょせんは机上の空論でしかなかった白米信仰、かたや実績に基づいた糖質制限といくらやっても結果がでないカロリー制限、構図はそっくりではないか。
日本ほにゃらら学会の重鎮は糖質制限にずいぶん批判的だったと聞く↓。

その筋の重鎮におかけましては鴎外の轍を踏まないようにくれぐれも気を付けていただきたいものだ。

追記:栄養・代謝・生理学的事実と糖質制限食

↑より。

<栄養・代謝>
①血糖値を直接上昇させるのは、糖質だけである。
②タンパク質は、間接的に血糖値を上昇させる。
③脂質は、血糖値を、全く上昇させない。
④追加分泌インスリンが大量に必要なのは、糖質だけである。
⑤タンパク質を摂取すると、少量の追加分泌インスリンがでるが、
 同時にグルカゴンも分泌されるので、通常は血糖値は変化しない。
⑥脂質を摂取しても、追加分泌インスリンは、でない。
⑦糖質制限食で高血糖は速やかに改善するが、
 肝臓や腎臓の糖新生などにより血糖値は確保されるので、低血糖にはならない。

<人体のエネルギー源Ⅰ:脂肪酸-ケトン体システム>
①脳は、ケトン体(脂肪酸の代謝産物)をいつでも利用できる。
②心筋・骨格筋など、多くの体細胞は、日常生活では脂肪酸-ケトン体が主エネルギー源であり、人体を従来の自動車に例えるなら、ガソリンの代わりは脂質である。
③赤血球を除く全ての細胞は、ミトコンドリアを持っているので、脂肪酸-ケトン体エネルギーシステムを利用できる。
④糖質制限食実践中や絶食中の血中ケトン体上昇は、インスリン作用が保たれており、
生理的なものであって病的ではない。農耕開始前の人類は、皆そうであった。

<人体のエネルギー源Ⅱ:ブドウ糖-グリコーゲンシステム>
①人体で唯一赤血球だけは、ミトコンドリアがないので、ブドウ糖しか利用できない。
②日常生活で、ブドウ糖を主エネルギー源として利用しているのは、赤血球・脳・網膜など。
③ブドウ糖-グリコーゲンエネルギーシステムの本質は
 「常に赤血球の唯一のエネルギー源」
 「筋肉が収縮したときのエネルギー源」
 「血糖値が上昇しインスリンが追加分泌された時、筋肉・脂肪細胞のエネルギー源」
 「日常生活では脳・網膜・生殖腺胚上皮の主エネルギー源」

<肥満改善と糖質制限食>

①糖質制限食実践中は、食事中も含めて常に脂肪が燃えている。
②糖質制限食実践中は、追加分泌インスリン(肥満ホルモン)が最小限しか出ない。
③糖質制限食実践中は、食事誘発熱産生(DIT)が、糖質食に比べると増える。
④糖質制限食実践中は肝臓や腎臓でアミノ酸やグリセロールを原料に糖新生が行われ、
 大量のエネルギーを消費する。
⑤少なくとも同一カロリー摂取なら、①②③④の4つの利点により、
 糖質制限食が高糖質食に比し、体重減少効果がある。

*糖質制限食を3ヶ月~半年続けていると、体細胞のケトン体利用効率が高くなり、
血中ケトン体が高値でも利用されるので、尿中や呼気中に排泄されなくなる。

**糖質を摂取すれば血糖値が急峻に上昇し、インスリンが追加分泌され、
①②③④の4つの利点は、即失われるので肥満しやすい。

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