昭和ジェントルと平成ガール【彼は彼であって彼じゃない①】

社会人になって1ヶ月が過ぎた頃、平成が終わった。

2019年5月

31年続いた平成の時代がおわり、令和がやってきたのだ。

平成生まれとしては、自分が過ごしてきた日々が色褪せていくような気がして、なんだかソワソワしたし、

冬に更新したばかりの免許証に書いてある「平成36年」は幻になった。

ちょうど同じ頃、新人研修を終えた私たち新卒は、希望が通ったり通らなかったりということはあったが、それぞれが無事に各部署に配属された。

私が配属されたのは100人くらいの部署だったが、実際には十数人でひとチームをつくりプロジェクトを進めていた。

私は、比較的、平均年齢が若めのチームに所属していた。

その中で中堅ポジションにいたのが、後に大切な存在となる「彼」だった。

「彼」は初めて会ったとき、顔に対して少し大きすぎる眼鏡をかけていて、40歳くらいに見えた。

チームで新人歓迎会を開いてくれた時に、年齢を聞いてみたら少し驚いた。

「今年で30だよ。」

私の7つ上である。

「ぎりぎり昭和生まれなんだ。」

と、ちょっと恥ずかしそうに言う彼の顔は、たしかに肌艶も良く、まだ若々しかった。

そこからの会話はお酒も進み、よく覚えていないのだが、

共通の趣味の話題で盛り上がったり、彼が職場の面白い話をしてくれたり、私が大学時代のエピソードを話したり、とても楽しくて、あっという間に飲み放題の2時間が過ぎて宴会はお開きとなった。

その後も定時後や残業後に飲み会をしたり、休日に職場の人たちと昼間から遊んだり、プチ旅行もした。

彼と私は誰がどう見ても「仲がいい先輩後輩」だったし、実際、「仲がいい先輩(後輩)は誰?」と聞かれたら、お互いの名前を挙げていたと思う。

これだけ仲良くても、2人きりで飲みに行くことが一度も無かったのは

それをしてしまったら何かが崩れる予感がしていたからだと、今になっては思う。

彼から飲みのお誘いがあった時は、開口一番に他誰が来るか聞いていたのは私だし
彼は「令和キッズ」にちなんで自分のことを「昭和ジェントル」、私のことを「平成ガール」と言って
お互いに距離が近づくたびに一線を引いていた。

こうして、昭和生まれの「彼」と平成生まれの「私」は令和の時代に出会い、仲がいい先輩後輩としての距離を保っていたのです。

私の転勤が決まるまでは。

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