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「真田丸」第32回感想

 真田丸、いよいよ関が原に向けて動き出しましたね。

 単純に物語として面白いので歴史の動かない回も楽しく見れていますが、やはり大河ドラマなので歴史が動いた方が面白い。

 今作がここ最近の大河ドラマと比べて飛び抜けている部分は、人物描写の複雑さだと思ってます。分かりやすい、一辺倒の性格のキャラが少ない。

 真田昌幸は天才的な策謀家ながら大名・真田家の舵取り役としては時代遅れの判断が多いです。徳川家康は秀吉の遺言捏造を部下に行わせる狸野郎の癖に、病弱の秀吉に無理矢理筆を取らせた行為に後ろめたさを感じて、後日秀吉の病床を一人で見舞いに訪れます。加藤清正は三成の横柄な態度に苛立ちを募らせながら、その感情は三成と仲良く豊臣家を盛り立てたいという思いの裏返し。秀吉も愛情深い人間として描かれながら、愛の暴走(ないしは愛しさ余って憎さ百倍)からくる酷薄な権力者でした。

 ドラマとしてみれば多少分かりやすい人物描写の方がストーリーが頭に入ってきやすいのでしょうが(特に大河ドラマのように大勢の脇役が出てくる場合)、歴史上の人物を分かりやすく描写するのって個人的には違和感があります。その点、今作の登場人物は皆自分の考える理想と覚える感情とに揺れ動きながら行動を選択していて見応えがあります。

 第32回『応酬』では主に家康の葛藤が随所に描写されていました。冒頭、天下取りを勧める本田正信の進言を「くどい」と一蹴しながら、彼が進める謀略を止めようとしません。

 諸大名を懐柔する宴席のシーンでは家康の露骨な仲間集めがクローズアップされ三成らが憤慨していましたが、宴席の上座は空席で家康は顔を出してはいません(顔を出さずとも人を集める家康と、自らもてなす姿勢を見せながら人を集められない三成の、格の違いも描かれていましたね)。

 秀吉死すの報に接し一人静かに冥福を天に祈るシーンが描かれながら、秀吉の遺命に背いて諸大名との婚姻を行ったことを咎められると「秀吉はまだ死んだと公表されてないんだから、遺命はまだ無効」というえげつない言い訳で周囲を黙らせました。

 次回は公式サイトの予告ページを見る限り、大谷吉継の葛藤が描かれるのではないかと期待しています。公式サイトの画像を見ると、三成の家康暗殺計画に対し、吉継は家康の屋敷に警護に駆けつけています。史実でも三成と堅い友情に結ばれながら、秀吉死後の政治的立場は親家康派だったという男です。真田丸では吉継の葛藤がどう描かれるのか今から楽しみです。

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