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お寺の先代さん[霊子さんの心霊体験]

昔から霊が見えるという霊子さん(仮名)の心霊体験のお話です。
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中学の時、徒歩で通学している途中に小さなお寺があった。
そこのベンチに座っていると、そこからたくさんの霊が見える。
銀杏の木があり枝に膝を掛けてさかさまにぶら下がっている霊。
足が悪く片足を引きずり、手をだらんとさせて歩いている霊。
きれいな着物を着て賽銭箱に向かって歩いて、最後は賽銭箱の中へと消える女の霊。
赤ちゃんを抱いたおじいちゃんの霊。
火の玉がたくさん飛んでいるし、子供の霊もたくさん遊んでいる。
でも、普段は学校帰りでまだ明るいので怖くはない。
その話を先輩にすると面白がって行きたいと言うので、7人で夜に集合することになった。
石段が長く、夜は怖かった。
先輩も懐中電灯で石段を照らすのだが暗くて気味が悪いので怖いと言っていた。
私も昼間と違って気味が悪く、行くのを止めようと言ったが、先輩たちには見えていないので
面白がってそのまま入っていくことになった。
するとどこからともなく「おーい、おーい」と低く唸るような声が聞こえた。
この声は先輩たちにも聞こえたが、怖がりの先輩は「犬じゃない?」と言うのだが、確かに人の声だ。
皆も怖くなって帰ろうかと言い始めたが、一人の粋がりな先輩が、「私は賽銭箱まで行ってくる」と言って
小銭を出し始めた。止めようよと言うけど聞いてくれない。
仕方なく後ろで待っていることにしたのだが、先輩が歩き始めると、「シャ、シャ、シャ」と足音が聞こえだした。
後ろを振り向くと、昼間見たきれいな着物の女の幽霊が、ものすごい形相で私たちの横を通り過ぎて行った。
その瞬間、横にいた先輩が「寒っ」と言った。
もう一度「帰ろーよー」と声を掛けたが、粋がりな先輩はそのまま進んでカランカランと鈴を鳴らした。
賽銭箱に小銭を投げると、その幽霊は先輩の体を通り抜けて賽銭箱に入っていった。
すると、鈴がガランガランと激しく大きな音を出して鳴り始め、鳴り止まなくなった。
さすがに粋がりな先輩も怖くて腰が抜けて、動けなくなってしまった。
今度はベンチのところから、「おーい、おーい」と声が聞こえた。
皆も慌てて帰ろうとしたが、腰が抜けて動けない先輩がいるので、両脇に回って腕を持ち
帰るぞと言って引き上げた。でも、先輩は「立てん、立てん」と言う。「そんなこと言っている場合じゃない」と言うと、
「違う、誰かが足を引っ張ってる。」と叫んだ。
足元を見ると、白いもやもやが絡まっているのが見えた。
でも必死で引っ張り上げて階段を走り下りていくと、今度は階段の上から「おーい、また来いよー」とあの声がした。
「誰が来るかー」と捨て台詞を残して、走って逃げ出した。
どうにか逃げ出して、家に帰り始めたが、そのうち二人は家が近い私のうちに泊まることになった。
3人で帰っていると「さっき足を捉まれていたのは何だったの」と何度も言う。
「わからんけど、もやもやしたのが足首に絡まっていたよ。」
「いやー、がっつり手で捉まれていたよ」
「怖いねー、怖いねー」と何度も言われた。
家に帰りついてお風呂に入って寝たのだが、明け方に ぎちぎち と音がした。
「何の音?」と先輩が聞いてきた。
もう一人を見ると、寝ているのだが顔が引きつっている。歯を食いしばって必死に痛みを我慢しているような顔。
寝ているのを起こすと、「痛ーい」と言い出した。寝てただけなのに脛がめちゃくちゃ痛いようだ。
みるみる脛が腫れだしたので、看護師をしている母を呼んで見てもらった。
「これ折れてるんじゃないの?」と言い、熱さましのシートを貼りながら、「何して骨折したの?」と聞いてきた。
折れた場所に打撲痕がなかったのだ。骨が折れるのは外から大きな力が加わったからのだから普通は打撲痕があるのだそう。
でも、それが無いのだ。先輩は「何もしてない。寝てただけ。」と答えていた。
母に病院に運んでもらったが、病院の先生も打撲痕がないのはなぜ?と気にしていた。勝手に骨が折れるなんて、聞いたことがないそうだ。
先輩が「寝てただけで折れた。」と言うが、そんなはずはないと言われるので、実は夕べお寺で幽霊に足を捉まれたと話した。
でも先生は、そんなはずはないと聞いてもらえなかった。
治療が済んで先輩は家に帰ったが、次の日に電話がかかってきて、来て欲しいと言う。
先輩の家に行って足を見ると、大きな青あざになっていた。
夕べ寝ていた時、手だけが出てきて足を抑えられたそうだ。「やめてー」と言ったがずっと抑えられていた。
また病院で診てもらうと、昨日より骨折がひどくなっていた。骨のひびが完全に骨折していた。
先生は、何かで圧迫したのかと聞いていた。
手だけが出てきて抑えられたと説明したが、本気にしてもらえなかった。
病院の帰り、あまりに怖いのでお祓いの出来る人がいるお寺に行って、話をした。
すると、「ああ、足の悪い人の霊が憑いているね」と言われた。
「このままだと、切断になるかも」と言われ、その後1カ月通ってお祓いをしてもらった。
2-3ヶ月後、お寺に犬の散歩に行くと、掃除のおばさんが久しぶりやねと声を掛けてきた。
ベンチに座っていると、気配がしたので後ろを振り向いた。すると目の前におじさんの顔があった。
すぐに霊と分かったので見えてないふりをして、シカトして前を向くと、後ろから「ねえ、見えてるよね」と話しかけられた。
でも無視して、すぐに逃げるのもまずい気がして、少ししてから犬に向かって帰ろうねと声を掛けて立ち上がると、「足が欲しい」と声がした。
それでも無視して、掃除のおばさんに挨拶するふりをして見てみると、おじさんは足が無かった。
それから数日後、そこを通るとき、掃除のおばさんがいたので、「足気を付けてね」と声を掛けた。
おばさんは「何で?」と聞いてきたので、「いや、足が無い奴がいるよね」と言ったら、
「このお寺の先代さんが、事故で足を失ってうつになり、その後、境内の銀杏の木で首つり自殺をしたもんね」と言われた。
銀杏の木にぶら下がっていたのも、ベンチで声を掛けてきたのも、先輩の足をつかんだのも、このお寺の先代さんだったのだと思った。


この投稿は、200話以上アップしてあるブログ「霊子の日記」からの抜粋です。

YouTubeにも「霊子さんの心霊体験」として投稿しています。


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