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『メインライターの西岡琢也さんについて』

サブタイトル:『今夜、あの事件記者が帰ってくる!涙の絶唱!!亡き美女を恋うる歌』
本放送:2000年1月20日
ゲスト:北村和夫
脚本:西岡琢也
監督:黒沢直輔

※ネタバレを含みますのでご注意ください

1.あらすじをざっくり

神社の古井戸で、90歳の老婆、細川ウタの死体が発見される。警察は自殺と断定したが、その記事を読んだ中島倫太郎(北村和夫)という老人が「ウタさんは自殺ではない!これは誤報だ!」と京都府警記者クラブに抗議に来る。ウタの恋人だという倫太郎の話に興味を持った杉浦は、例によってつた子の命令も無視して、独自に取材を始めるが、倫太郎は老人ホームでも有名なウソつき老人だった。

2.西岡琢也さんが京都迷宮案内シリーズの世界観を作り上げた

私は、本当の京都迷宮案内が始まったのは第2シリーズからだと思っている。
以前別の記事でも書いたのだが、第1シリーズではオカルト要素を含んだ、所謂「犯人探し」がメインのサスペンスだった。これはこれで一種のパラレルワールドとして楽しめるが、しかし『京都迷宮案内』の本当の醍醐味を知ってから見てしまうと、物足りなく感じてしまう。
京都迷宮案内シリーズのメインライターである西岡琢也さんが参加したのは、2000年の第2シリーズからだ。西岡さんが参加されたことによって、この作品は犯人探しのサスペンスから、杉浦が事件の裏側に隠された人間模様に興味を持ち、取材対象者の心の迷宮に迫っていく「ヒューマンミステリー」という方向性が確立されたのだ。
シリーズ後半からは、舞台が「京都府警記者クラブ」から「京都日報社会部遊軍」に変わり、題材も殺人や傷害などの「事件」の描写は少なくなり、市井の人々の心や人間模様を描いていく、ヒューマンドラマの要素が深まっていった。今回の記念すべき西岡脚本の一本目も独特だった。裏では、つた子たちが「祇園ホステス殺人事件」という大事件を追っていたが、杉浦は全く関心がなく、当初自殺と断定された老女とその恋人である老人ふたりの心に迫っていくという内容だった。坂井陽平(的場浩司)と森田悦子(大路恵美)や、京都府警総務部長の大洞浩次郎(北村総一朗:二役)というおなじみのキャラクターも初登場し、まさしくその後の流れが出来た回だった。
一般人がそう易々と警察の記者クラブに入ることが出来たり、ウタさんも車に轢かれて死んだのならその証拠は遺体に残るだろうし、井戸に落ちた時についた傷なのか車に轢かれた時の傷かどうかぐらい絶対特定出来るだろ?(京都府警の科捜研なら間違いなく一発で断定するはず)などなどツッコミどころもある‪のだがw
クライマックス、ウタさんを轢き逃げした犯人に対して、倫太郎さんが「なんでわたしも一緒に、井戸の中に放り込んでくれなかったんだ」と一言放つシーンがあるのだが、このセリフは、とても切ない…。
もしも第1シリーズのまま、オカルト×サスペンス路線のままだったら、きっと10年間も続く人気シリーズにはなっていなかっただろう。西岡琢也さんが京都迷宮案内シリーズの世界観と「杉浦恭介」というひねくれて飄々としたキャラクターを作り上げたと言っても過言では無い。

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