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やや北の国から京の都へ

初めまして。アベトモミと申します。この度、アンテナに加入することになりました。

生まれも育ちも宮城県石巻(いしのまき)市。専門学校に通っていた2年間だけ東京に住んでいました。アンテナのある京都からおよそ600km離れたところにいる私がどうして加入することになったか、長くなってしまいますが最後までお付き合いいただけたら幸いです。

15秒の初恋と発見

両親の音楽の趣味に影響を受け、幼少期から大貫妙子さんやYMOといった音楽とラジオが身近にある環境で育っていた小学6年生の頃、テレビCMで15秒だけ流れた音楽に心を奪われました。くるりの『ばらの花』です。水色の空と京都タワーの風景が映された中、サビの岸田繁さんとゲストコーラスのフルカワミキさんの重なる歌声。"安心な僕らは旅に出ようぜ / 思い切り泣いたり笑ったりしようぜ"の部分が流れただけなのに頭から離れず、そして人の輪の中にいるのにどこか疎外感を感じていた私の心の輪郭をはっきりとさせて、静かな優しさで肯定してくれた。あの瞬間はまさしく自分にとって音楽の初恋でした。

 高校入学とともにラジオを本格的に聴き始め、それがきっかけで一気にフジファブリックやクラムボン、rei harakamiなど主に2000年代前半の邦楽ロックを中心とした音楽を聴くようになり、ライブにも足繁く通うようになって今に至ります。

くるりの活動を追っていく中で『みやこ音楽祭』というものが開催されていることを知りました。くるりが企画・運営に携わるものの主に学生が運営の中心となって開催されており、矢野顕子さんや遠藤賢司さんといったレジェンド級のアーティストから長年京都を拠点に活躍するバンドまで出演する、ジャンルレスで手作り感溢れるアットホームなイベントです。くるりを基点に数珠繋ぎのように好きになったバンドも沢山出演しているということでどうにか行きたかったのですが、当時高校生だった私には宮城と京都の距離を埋めることは困難。惜しまれつつ2011年に8年の歴史に幕を閉じましたが、スタッフとしても携わりたく進学先の選択肢に京都を入れていたほどでした。

また、東北に住んでいると自然と東京・関東圏の情報が中心になってくるので、それまでは普段テレビやラジオから流れてくる音楽がメインストリームだと思っていましたが、高校時代よりお世話になっている地元のライブハウス<石巻La Strada>にてザッハトルテやギターパンダ、ふちがみとふなとといった京都ゆかりのミュージシャンがしばしばライブを行なっていたり、そのオーナーさんから曲を薦めてもらったことで関西かつ京都の音楽文化がなかなかディープなことを知り、少しずつ惹かれていきました。煙草が煙るブルースから夕方の横丁のような温かさを思い出させる音楽まで、いずれもどこか匂いや湿度を感じるものでした。こっちのラジオでは聴いたことのない、どれもが初めて知る世界で新鮮かつ魅力的に感じたのでした。

地方だから見えたもの

昔から書くことや作ることが好きで、昨年は石巻市で行われたアートや音楽などの総合祭『REBORN ART FESTIVAL』(通称:RAF)に作品を出展したのですが、そこで気づいたのは文化が人も地域も豊かにすることと、楽しみ方も含めて次世代に文化を受け継がないと地域そのものが廃れていくのではないかという危機感でした。幸いにもRAFがきっかけで 市内外から作家が集まったことにより活動が活発化し、アートの面において今後石巻という場所は仙台にも負けず劣らず、東北においても面白い拠点のひとつになっていくだろうと考えています。

こんな話をしていたら「石巻を拠点に活動した方がいいのでは?」と思う方もいるかもしれませんが、私の場合この場所で生活しながら活動することにより"震災が自分のアイデンティティーそのもの''になってしまうと危惧し、あえてこの場所を離れることに決めました。

しかしこの決断は、生まれ育った街だから、地方だからこそできたことだとも思っています。

好きと温度

アンテナにいつ出会ったのかはっきりした記憶がなく、恐らく1〜2年前からTwitterでフォローしていたと思います。ですがTwitterよりも先にInstagramで副編集長の岡安さんが撮ったYeYeさんのライブ写真を見つけ、フィルムのような柔らかい質感と音楽への真摯さが伝わってくる写真に惹かれたのがアンテナを知るきっかけだったのではとこれを書きながら思い出しました。

アンテナに惹かれたのは、コンテンツに"温度''があるのが理由でした。熱も、温もりも、対画面なのに伝わってくる。鋭いほどの真剣さの中に絶対的な「好き」がある。

特に『俺の人生、三種の神器』、皆さんもうご覧になりましたか?人生の転機がテーマなだけあってより濃度の濃い好きや熱が込められたエピソードも掲載されていますが、時には自分の過去において苦く弱い部分をストレートに表現している部分もあって、読んでいるこちら側の固い殻がはらはらと剥がれ落ちるような感覚に陥りました。きっと思い当たる部分が自分にもあるからこそ深く刺さり、心を打たれたのかもしれません。

京都という私の好きな街でそれらを発信している人達がいるというのは以前から知っていたのですが、RAFを終えて次へ進もうとする中で"新メンバー募集"の記事を見つけ、「こんなにも「好き」を持った人達と一緒にやってみたい」と思い切って飛び込んでみることにしました。

とはいえ関西のインディーシーンやカルチャーについてはまだまだ知らないことだらけ。日々勉強中でハードですが、新たな発見の連続で凝り固まっていた自分の世界がさらに広がっていくような充実した毎日を過ごしています。

写真や文章を通してカルチャーの"温度''を届けられるように、次の世代へと受け継がれる一助となれるように全力を尽くしてまいります。
よろしくお願いいたします!

ライター・フォトグラファー:アベトモミ

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