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記野式:サクッと!ゲーム業界講座 5月後半号

こんにちは。東京の緊急事態宣言は延びてしまいましたね…涙。もうひと頑張り!で済めばいいんですけど。ワクチンはできるだけ早く打ちますから早く宣言を解いて頂きたいなと思う今日この頃です。

さて、アメリカ市場データNPDの速報が遅れていたためメルマガ自体の発行が遅れてしまいました。ごめんなさい。でも、そのおかげでたくさんお知らせすることが増えました!

Bloombergによると、Nintendo Switchの新型が9月とか10月ごろ登場するのでは?とのこと。PlayStation 5 や Xbox Series X|Sが共有不足になるくらい世は半導体不足なんですが…このタイミングで新機種を発表する任天堂の強気を感じます。

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きっと6月12日に開催されるE3イベントに先駆けて発表されるんでしょうからすぐに続報が入るでしょう。こちらもアップデートいたします。

さて、早速まえがきの「定額動画ストリーミングサービス(SVOD)競争がもたらす映像エンタメ業界インフラの変化」から。今回の為替レートは1ドル = 110円、1人民元 = 17.25円で計算しています。

<記野式まえがき:定額動画ストリーミングサービス(SVOD)競争がもたらす映像エンタメ業界インフラの変化>

この短い間に2つくらい大きな再編がありました。取り上げてきた記事の総まとめにもなるので読んでみてくださいね。いずれにしても正常進化ではあるでしょうけど、間違いなく新型コロナ感染拡大(パンデミック)が進化を急激に進めたのです。

1.ハリウッド至上主義の斜陽

映画と言えばハリウッドですが、少し前からアメリカでは映画よりもテレビドラマのほうがエンタメ性が濃く、アツい!と言われていました。Netflix、Huluなどのオンデマンドの動画ストリーミングサブスクサービス(SVOD:Subscription Video on Demand)が登場して、加入者にとっては過去に映画館で公開された映画群が見られるだけでなく、優良なオリジナルドラマが制作され配信されるようになり、絶大と言われていたハリウッド至上主義が影をひそめることになります。

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さらに、昨今の新型コロナ感染拡大に伴う映画館の閉鎖やロックダウン。人々はステイホームを軸におこもりを要求されるようになりましたから、これらのSVODは高いニーズのもと飛躍的な成長を遂げ、一方映画産業は大打撃を受けるわけです。

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そんな中、独走していたNetflixを追いかけ、2019年末に立ち上がったDisney+、2020年にWarner Bros.が立ち上げたHBO Maxなどの勢いが止まりません。

Disneyは傘下のMarvelに加えて2019年に買収した21st Century Fox(以下Fox)のコンテンツを含む莫大なコンテンツ群を抱えた結果、それまでのNetflixなどへの「ライセンス」をやめて「自社配信」へと舵を切りました。

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Disney+は立ち上げて2年も経たないうちに1億人を超える加入者を獲得。コンテンツの強さが物語るところですね。

Disney やWarnerが独自サービスを始めることになったためNetflixがライセンスを受けていた旧作コンテンツもNetflixのラインナップから剥奪されてしまいました。

しかしながら全世界に2億人を超える加入者を持つNetflixは、独自のオリジナルコンテンツを制作したり、最近Sony Picturesとも提携してコンテンツの充実を図っています。

(1)Amazonが映画製作会社MGMを買収

Amazon Prime Video を展開するAmazonもこれらSVODの主要メンバーです。現在1億7,500万人以上の加入者を持つAmazon Prime Videoですが、5月26日、映画製作会社MGMを84億5,000万ドル(約9,295億円)で買収したと発表がありました。

MGMのロゴ、ご覧になったことありますよね?映画の最初に出てきたりします。

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MGMは1924年に設立されたハリウッドの老舗スタジオ。その有名な名前に反しておよそ100年の間には順風満帆と言えない状況も続き、過去にはTurner Entertainment や Sony Picturesなど様々な大手資本に助けを求めたいたこともあり、一度はチャプター11(米連邦倒産法第11章)も申請したことがあります。

新型コロナウイルス感染拡大に伴うロックダウンはせっかく再生しかけたMGMに大きな打撃を与えました。2020年1,210万ドル(約13.3億円)の損失を計上したMGMですが、ここ数か月売却先を求めて交渉を続けてきました。そこで買収元として名乗りを上げたのはAmazonでした。

MGMの買収には「007」シリーズ、「Rocky(ロッキー)」シリーズなどなど約4,000本の映画、1万7,000本のテレビ番組の権利も合わせて入ってきます。つまりこれらがAmazon Prime Videoに組み込まれるのです。

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Amazonは2020年に映画・テレビ・音楽などのエンタメ事業に110億ドル(約1.2兆円)を出資したと言われています。Amazonはかなり前から積極的に自社スタジオを使ってオリジナルコンテンツを展開しています。

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かくいう私もAmazonオリジナルの『The Man in the High Castle(高い城の男)』をシーズン2まで夢中になって見ていました(シーズン4まであります)。今後もAmazonはオリジナルコンテンツを野心的に進めると言われていてMGMの買収はこの観点からも合致していると思われます。

オリジナルコンテンツを続々と制作するNetflixと膨大なIPライブラリを持つDisney+、Discoveryを買収したWarnerのHBO Max(*後述します)に対抗するには準備万端というところでしょうか。

(2)WarnerMediaとDiscoveryの合併

この発表がAT&Tからの発表だったのでピンと来ないですよね。AT&TはWarnerMediaの親会社なんですよ。

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Discoveryは言わずと知れた世界的なドキュメンタリーチャンネル「Discovery Channel」を運営する会社です。Warner Mediaにとってはエンターテインメントの質が違う同社との合併が実現すれば、コンテンツの幅が広がるということなのでしょう。

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これも、SVODへのアプローチと考えるべきです。現在加入者数6,400万人を抱えるHBO Maxをさらに強化するということなのです。これにより合併後の会社はHBO、Warner Bros.、Discovery、DC Comics、CNN、Cartoon Network、HGTV、Food Network、Turner Networks、TNT、TBS、Eurosport、Magnolia、TLC、Animal Planet が含まれる巨大ライブラリになるのです。

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これがWarner 傘下のWarner Bros. Games(WB Games)にとってもいいお話だったら良かったですが…そのお話は後ほど。

2.Pay TV(ペイティーヴィ)とCord Cutting(コードカッティング)

地上波テレビがタダでみられる日本に住んでいる人にはわからないだろうな、って常識ですけど、アメリカではタダで視聴できるテレビ番組はほとんどありません。Comcastなどの大手ケーブル会社と契約してテレビ番組を見るのがフツーです。テレビ番組を見るためにはテレビモニターがあったらいいってことはアメリカではありえないのです。

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(1)Pay TV(ペイティーヴィ)

こういう有料のテレビ視聴のことを「Pay TV(ペイティーヴィ)」と言います。お金を払ってみるテレビ…まんまですが…衛星放送などもこれに含まれます。

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アメリカのPay TVには、複数(100以上とか)チャンネルのプランが準備されており視聴者がそこからプランを選んで契約します。そのプランに応じて加入者は月額課金されます。これで100ドル(約11,000円)は軽く超えてきます。ケーブルだとこれらTV番組に加えてインターネット接続も一緒にパッケージされることも多く月額ではかなりの出費になります。

<アメリカのTVチャンネル(番組)あくまでも一部>

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ただ、昔からそうなので、アメリカ人はコンテンツにお金を払うことにはあまり抵抗がありませんでした。「当たり前」だったのです。ところが、2010年代後半から少しずつこれらPay TVに陰りが見えてきました。

インターネットの普及によってNetflixをはじめとするSVODが好きなときに好きなところで好きなだけ見られる「オンデマンド」をしかも「安価」で提供したからです。これはもちろん新型コロナ発生の前からの話です。

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