2020年度動物看護師統一認定試験 問題と解答・解説(問61から問70)
問61 猫の食性に関する記述として誤っているのはどれか。
1 単独捕食者であり、群れで狩りを行わない。
2 少量頻回採食者であり、1日に何度も狩りをする。
3 新鮮肉採食者であり、体温より温かい物を好む。
4 甘み受容体が発達しているため、甘い物を好む。
5 ストレスの多い環境では、慣れた物しか食べない。
問61 正解4
猫の食性の特徴
・肉食性
・単独捕食者
・少量頻回捕食者
・新鮮食肉者
・甘みを感じる味蕾が無いため、甘みを感じない。
・クエン酸やリン酸の酸っぱい味を好む。
犬の食性の特徴
・雑食性
・群捕食者
・大食間欠捕食者
・腐肉食者(鮮度が落ちたものでも食べる)。
・甘み受容体が発達しているため、甘いものを好む。
問62 肥満に関する記述として誤っているのはどれか。
1 体脂肪率が過剰な状態を言う。
2 摂取エネルギー量が消費エネルギー量を上回ることで起こる。
3 犬では、急性膵炎のリスクが高まる。
4 猫では、糖尿病のリスクが高まる。
5 減量は、できる限り短期間で実施するのが望ましい。
問62 正解5
・肥満とは、脂肪組織に過剰に脂肪を蓄積している状態。肥満の判定には、ボディ・コンディション・スコア(BCS)を使用。
・肥満によってリスクが高くなる疾患
犬:前十字靭帯疾患、変形性関節症、椎間板疾患、股関節形成不全、甲状腺機能低下症、副腎皮質機能亢進症、インスリン抵抗性の増加、急性膵炎、シュウ酸カルシウム結石、尿路疾患、尿道括約筋機能不全、糸球体疾患、難産、気管虚脱、高血圧症、門脈血栓症、心筋の低酸素症、乳腺腫瘍、移行上皮癌、麻酔リスクの増加、暑熱への耐性低下など
猫:跛行、糖尿病、尿路疾患、腫瘍リスクの増加など
(参考:動物看護コアテキスト『動物看護の実践』第2版ファームプレス、他各社HP)
問63 ショックの病態にみられる症状の組合せとして最も適切なのはどれか。
a:震せん
b:黄疸
c:充血
d:血圧低下
e:粘膜色の蒼白
1 a、b
2 b、c
3 c、d
4 d、e
5 a、e
問63 正解 4
ショックとは
生体に対する侵襲あるいは侵襲に対する生体反応の結果,重要臓器の血流が維持できなくなり,細胞の代謝障害や臓器障害が起こり,生命の危機にいたる急性の症候群。血圧低下が指標になる。典型的には交感神経系の緊張により、頻脈、顔面蒼白、冷汗などの症状をともなう。
※解説あり
問64 ワクチン接種後に発現するアナフィラキシーの治療に用いられない薬物はどれか。
1 ジフェンヒドラミン
2 ファモチジン
3 デキサメタゾン
4 プレドニゾロン
5 アドレナリン
問64 正解 2
1 ジフェンヒドラミン:抗ヒスタミン剤(H1ブロッカー)
2 ファモチジン:抗ヒスタミン剤(H2ブロッカー)、副作用にアナフィラキシーがある
3 デキサメタゾン:合成副腎皮質ホルモン剤
4 プレドニゾロン:合成副腎皮質ホルモン剤
5 アドレナリン:副腎髄質ホルモン、アナフィラキシーの第一選択薬
問65 動物の身体機能が停止する直前の反応として適切でないのはどれか。
1 筋肉の緊張増加
2 尿や便の失禁
3 瞳孔の散大
4 対光反射の低下
5 心臓の停止
問65 正解1
1 筋肉は弛緩する
2 筋肉が弛緩するため、尿や便の失禁があることがある
3 瞳孔は散大する
4 対光反射は低下する
5 心臓は停止する
死亡確認は心臓拍動停止、呼吸停止、瞳孔散大・対光反射停止の3徴候を確認する
問66 ハムスターに関する記述として正しいのはどれか。
1 切歯は永久歯である。
2 臼歯は常生歯である。
3 臭腺を持つのが特徴である。
4 低温下でも冬眠することはない。
5 平均寿命は7~8年である。
問66 正解3
1 切歯は常生歯である。
2 臼歯は永久歯である。
3 マーキングや個体識別のために特異的な臭腺を持ち、種によって位置が異なる。いずれもテストステロンが優位に支配しているため、雄に顕著である。
4 至適環境温度18~21℃(愛玩動物飼養管理士テキストより)(『動物看護の教科書 新訂版』では、ゴールデンハムスター20~26℃』)、湿度40~60%。低温下で冬眠する。冬眠により体力が消耗し死亡することがあるので、冬眠をさせないようにする必要がある。
5 平均寿命 ゴールデンハムスター 2~3年
ジャンガリアンハムスター 2~2年半
問67 結腸が円錐状を呈する動物は、次のうちどれか。
1 馬
2 牛
3 山羊
4 豚
5 ニワトリ
問67 正解4
馬は途中で大結腸と小結腸に別れた2重ワナ結腸
牛は円盤のような形をした円盤結腸
豚は円錐型をした円錐結腸
ヒト、犬、猫はハテナマークのような形をした結腸の走行
問68 若齢犬の飼育管理として、最も適切なのはどれか。
1 胎盤経由で移行抗体を獲得するため、初乳を飲む必要はない。
2 代謝が活発で体温が高いため、成犬よりも室温は低めにする。
3 生後数日間の人工哺乳は、一般に2~3時間ごとに行う。
4 8週齢ごろから離乳食を始め、12~14週齢で離乳する。
5 新生子の体重あたりのエネルギー要求量は、成犬よりも少ない。
問68 正解3(若齢犬というのが、どの時期の犬を指すのかよくわからないため、選択肢から、生まれてから性成熟までと仮定した)
1 初乳から移行抗体を獲得
2 生後から離乳期ごろまでに、体温調節機能が発達する。それまでは保温が必要。
3 新生子は生後2時間以内に母乳を飲み始める(吸乳反射)。新生子期には、1~5㎖を2~3時間毎、移行期には10~20㎖を3~5時間毎、その後は1日に5~10回程度になる。
4 離乳は4~6週齢目に始まり7~9週齢までに終了する。
5 新生子の体重あたりのエネルギー要求量は、成犬よりも多い。
問69 高齢動物のケアに関する記述として正しいのはどれか。
1 身体能力の低下がみられるが、代謝は低下しない。
2 体温が低下するため、夏でも暖房を入れた方がよい。
3 認知症状に対しては、薬物治療以外に対処法はない。
4 寝たきりの場合、体位変換はできるだけ行わないのが良い。
5 感覚機能が低下するので、声がけなどを積極的にする。
問69 正解5
1 高齢期になると、代謝が低下する等の身体の生理学的な老化がみられ、運動能力の低下、反応性の低下がみられる。
2 高齢になると体温調節がしにくくなるので、寒すぎず、暑すぎないように室温を調節する。
3 認知症に対しては、薬物治療以外にも、不飽和脂肪酸(DHA・EPA)が含まれる食事やサプリメントを与えたり、生活のリズムを整える等の対処法がある。
4 寝たきりの場合は、褥瘡にならないように、定期的に体位変換をする。
5 感覚機能が低下するので、声がけなどを積極的に行ったり、散歩に行けるのなら散歩に行く。(抱っこやカートで散歩をすることも、刺激を与える意味で良い)散歩ができなくても室内でおやつを探させたりして、嗅覚を刺激したり、運動をさせることで筋力の衰えを抑えることができる。
問70 褥瘡に関する記述として正しいのはどれか。
1 若齢動物には起こらない。
2 皮下脂肪が多いと発症リスクが高まる。
3 肩、腰部などが好発部位である。
4 軟らかい敷物は避け、固い床に寝かせる。
5 体位を一定にしたままで安静を保つ。
問70 正解3
「褥瘡」とは「床ずれ」のことで、同一部位が長時間圧迫されて組織の血行が阻害されるために起こる局所の潰瘍、皮膚壊死などを起こすことをいう。主に寝たきりの高齢動物で起こりやすい。循環器疾患、糖尿病などの代謝性疾患、栄養状態が悪い場合など原因は複合的である。
肩、腰、膝、肘などの骨が突き出ているところに好発する。体圧分散できるマットレスを使用し、2~3時間ごとに体位を変換する。治癒は困難なため、褥瘡はできないように予防することが第一である。
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