2020年度動物看護師統一認定試験 問題と解答・解説(問71から問80)

問71 輸血用の血液を採取する際に用いる抗凝固剤として適切なのはどれか。

1 EDTA(エチレンジアミン四酢酸)
2 フィブリン
3 ヘパリン
4 プラスミン
5 クエン酸ナトリウム

問71 正解5
1 E D T A(エチレンジアミン四酢酸塩):血液一般検査で使用、血液凝固に必要なカルシウムと結合除去することにより、血液の凝固を阻止する。そのため、血清カルシウムの測定には使用できない。

2 フィブリン:血液凝固に関連するたんぱく質のフィブリノゲンが分解され活性化したもの。抗凝固剤ではない。

3 ヘパリン:血液生化学検査で使用。凝固を阻止する抗トロンビンIIIと結合して、その作用を促進。

4 プラスミン:線溶系に属するたんぱく質分解酵素。フィブリンやフィブリノーゲンを分解して血栓を分解する。抗凝固剤ではない。

5 クエン酸ナトリウム:血液凝固検査や輸血用の抗凝固剤として使用。カルシウムと結合除去することにより凝固阻止。血液とクエン酸ナトリウム(3.8%)が9:1になるように混合。

問72 大腸性下痢の特徴として正しいのはどれか。

1 1日あたりの排便回数は、健常時を変わらない。
2 1回あたりの排便量は、健常時より多くなる。
3 脂肪便が見られることが多い。
4 血液が混じるときは、黒色のタール便となる。
5 粘液が混じることが多い。

問72 正解5

1 排便回数は、著しく増加
2 1回あたりの排便量は正常
3 脂肪便はなし
4 血液が混じる時は、鮮血
5 粘液が混じることが多い。


問73 腸閉塞(イレウス)について、正しいのはどれか。

1 消化管が通過障害を起こした状態をいう。
2 異物の摂取によって起こり、腫瘍によっては起こらない。
3 主な症状は、貧血である。
4 診断には、糞便検査が有効である。
5 安静処置が重要で、自然治癒することも多い。

問73 正解1

腸閉塞(イレウス):消化管が通過障害を起こした状態。物理的な閉塞(完全または不完全閉塞)による機械性腸閉塞(機械性イレウス)と腸運動が麻痺することによる機能性腸閉塞(機能性イレウス)がある。犬猫は前者が多い。

原因:異物、消化管腫瘍(腸腺癌など)
症状:異物による閉塞:急性の激しい嘔吐、腹痛、元気・食欲の低下など。閉塞物が原因で腸が穿孔すると腹膜炎、ショックを引き起こす。腸閉塞は緊急疾患であり、直ちに外科的処置が必要。
腫瘍による閉塞:慢性的経過。

検査:機械的閉塞:事例により触診で触知できる
   腹部X線:異物の確認、小腸の拡張像、ガス貯留像
    消化管造影:局所的な通過障害の確認、ヨード系造影剤を使用(穿孔していても刺激が少ないため)
   超音波検査:超内容物の往復移動確認
治療:開腹手術による異物の除去、腫瘍の除去

問74 左心室のポンプ機能の低下に伴って起こる症状として誤っているのはどれか。

1 呼吸困難
2 チアノーゼ
3 頻尿
4 咳
5 心拍数増加

問74 正解3

左心系の機能障害
・血液量(心拍出量)減少→酸素供給の低下
・肺静脈うっ血、肺水腫
これらのため、代償機構による心拍数の増加のほか、発咳、頻呼吸・呼吸困難、起座呼吸、チアノーゼなどの呼吸器症状、元気消失、運動不耐性、失神、食欲不振など

問75 ファロー四徴症で見られないのはどれか。

1 肺動脈狭窄
2 大動脈騎乗
3 心房中隔欠損
4 右心室肥大
5 心室中隔欠損

問75 正解3
ファロー四徴症 ① 心室中隔欠損、② 肺動脈狭窄症、③ 大動脈騎乗、④ 右心室肥大の4つの構造異常が同時にある心疾患

問76 猫の甲状腺機能亢進症の症状として誤っているのはどれか。

1 体重増加
2 多飲多尿
3 嘔吐
4 活動性亢進
5 頻脈

問76 正解1
甲状腺機能亢進症の症状(犬では猫よりも発生頻度が低い)
・体重減少、多食、多飲多尿、活動性亢進、被毛祖剛及び脱毛、下痢、嘔吐、食欲不振など

問77糖尿病の犬で不足しているホルモンはどれか。

1 甲状腺ホルモン
2 グルカゴン
3 インスリン
4 アドレナリン
5 糖質コルチコイド

問77 正解3

1 甲状腺ホルモン: 「新陳代謝」の調節。 脈拍数や体温、自律神経の働きを調節し、エネルギーの消費を一定に保つ。

2 グルカゴン:肝においてグリコーゲン分解と糖新生によるブドウ糖の産生・放出を促進、血糖を上昇させる。

3 インスリン:膵臓から出るホルモン。血糖値を下げ、血糖を一定の範囲におさめる働きを担う。

4 アドレナリン:副腎から分泌されるホルモン、交感神経の伝達物質の 1 つ。 ストレス反応の中心的役割を果たし、心拍数を上げ、瞳孔を開き、血圧を上げるなど。

5 糖質コルチコイド:副腎皮質ホルモン、肝臓での糖新生促進し、血糖値を上げる。抗炎症、抗アレルギー作用あり。

問78 IRISによる慢性腎臓病ステージ分類の基準となる生化学検査項目はどれか。

1 BUN
2 CRE
3 ALT
4 ALP
5 ALB

問78 正解2

IRIS(the International Renal Interest Society)は, 小動物の腎臓病に対する科学的理解を深めることを目的に設立された団体。犬と猫の腎臓病に対する臨床獣医師の診断,理解,治療方法を向上させることを目標として活動。

慢性腎臓病は、空腹時の血漿クレアチニン濃度に基づいて分類する。

問79 血中脂質の生化学検査項目として正しい組み合わせはどれか。

1 GLU‐ALB
2 AST‐ALT
3 ALP‐GGT
4 AMY‐LIP
5 TG‐TCHO

問79 正解5

GLU 血清グルコース :成体にとって最も重要なエネルギー源。血糖値は、通常、インスリン、グルカゴン、副腎皮質ホルモンや自律神経によって一定に保たれる。

ALB アルブミン:血漿(血清)総蛋白の約50%を占める。浸透圧の調整、多くの物質の輸送タンパク。

AST (GOT):心筋、骨格筋、肝細胞のミトコンドリアに多く存在。

ALT (GPT):肝細胞内に存在。肝細胞が破壊されない限り、血漿中に流出しない。

ALP アルカリフォスファターゼ:腸管、腎臓、骨、肝臓に多数存在。

GGT 腎障害があると尿中に排泄。

AMY アミラーゼ:膵炎、膵臓の壊死、膵管の閉塞で高値。

LIP リパーゼ:トリグリセリドを加水分解する。

TG トリグリセリド:体内にある脂肪の1種(中性脂肪)。

TCHO 総コレステロール:コレステロールは、生体の細胞膜成分、ホルモンの素材として重要。

問80 犬の胸腰部椎間板ヘルニアに関する記述として正しいのはどれか。

1 髄核が逸脱するタイプをハンセンⅡ型という。
2 発症は、肥満体型に限られる。
3 後肢のみならず前肢も麻痺を呈する。
4 脊髄が傷害されるため、疼痛は認められない。
5 深部痛覚まで消失した例では、術後の回復率が低い。

問80 正解5

1 髄核が逸脱するタイプをハンセンⅠ型という。

2 発症は、肥満体型に限られない。

3 後肢のみ麻痺を呈する。

4 脊髄が傷害されるため、疼痛が認められる。

5 深部痛覚を失った状態では手術をしても歩けるように回復する可能性は約50%と低く、また脊髄が壊死して命を落とす進行性脊髄軟化症に陥る危険性も12%ほどある。(相川動物医療センターHPより)

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