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記憶の欠片(幼少期のエピソード)

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特に山もオチもない日常の一コマが、なぜか鮮明に記憶されている。 なぜそんなどうでも良い瞬間の記憶が、そのほか多くのビッグイベントの記憶よりも鮮明に焼き付いているのか。 あの日あの…
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2023年1月の記事一覧

幽霊の見える青年(アキシ)

この前、近所の喫茶店に行ったの 僕ねカフェ巡りが趣味だけど、その中でもよく行く定番の店 こじんまりしていて少し古臭いんだけど、 僕常連だからみんな顔見知りで、常連同士で談笑とかよくするの。 その店ら僕のサードプレイスになっていたんだよね その日は1人でカモミールティーを飲んでいたんだ すると近くに座っていた青年が僕に話しかけてきた。初めて見る青年だ。 「僕、幽霊が見えるんですよ。」 唐突に青年から出た言葉をいぶかしく思いながらも、なぜか僕は引き込まれた。 僕は不審に思

けつあごの生まれた日(大池ニキ)

「え?もう一つのエピソードですか?いや~、欲しがりますね~」 少し前のめりになりながら、満面の笑みを浮かべて大池氏は言った。 一見謙遜に見える態度の裏には、隠せない胸筋の躍動を私は見逃さなかった。 「大池さん、2回顎が割れたっておっしゃってたので、もう一つのエピソードを是非お聞きしたいと思いまして」 低頭でおねだりする私に対し、 「じゃあ少しだけですよ」 憎めない笑顔で大池氏は語り出した。 あれは年長の時だったかなあ、 磯部君という友達がいたんですね。 磯部君は目が細くてね

割れた顎が教えてくれた事(大池ニキ)

「いや~、小さい頃ってよくケガするじゃないですか~」 軽快に話始める大池氏は、自慢の胸筋を交互に揺らしながら、 何故か怪我の話題を嬉しそうに語り出した。 「僕ね、幼稚園の時2回顎割ってるんすよ」 けつあご・・・というわけでもないが、その鍛え抜かれた肉体からは、 いつ顎が割れても大丈夫という自信がみなぎっていた。 年少の時だったかな、幼稚園で遠足に行ったんですよ そう、浅草寺幼稚園、わかります? 浅草寺幼稚園の前て石畳なんですよね。 その石畳を、男女で手をつないで歩きながら

心の松葉杖 水野氏

あれは私が小学校六年の時の話。 その日は卒業式で、だんだん暖かくなってきて、 それにつられて私の気持ちも桜のつぼみのように優しく膨らんでいた。 卒業式は泣くのかな?なんて思っていたけど、意外と気持ちは淡白で、 なんだかガラス越しに卒業する自分を眺めていたように感じていた。 だからなのかな、卒業式の記憶ってほとんど残ってない。 ただ、卒業式の記憶が残っていないからこそ、 小学六年の卒業式は私の心に強く刻まれている。 それは、卒業式日私の足の甲の骨にはひびが入っていたから。