ペンギンズ
また猫が私の大切なぬいぐるみをいたぶっている。
小さなペンギンのぬいぐるみだ。端布で服も着せてやった。失うことを恐れるあまりに、影武者としてもう一体買ったくらい、大事にしている。結局は影武者も表に出し、2羽で私の枕元に並んでいる。
このペンギン兄弟に目をつけたのが、我が家の猫だ。
朝起きると兄弟のどちらかが寝室から拉致されて、別の場所に落ちている。深夜の運動会の餌食にされたのだろう。
そのうち飽きるだろうと思っていたが、定期的にペンギンズは拉致されていた。
猫は知らん顔。
なかなか手強い猫だ。
早朝に必死で原稿を描いていると、仕事部屋の前で小さく音がした。
ペンギン弟が落ちていた。
また拉致してきたらしい。
ぬいぐるみを拾い上げて、元の場所へ戻そうと立ち上がったとき、
ふと思った。
これは、嫌がらせではないのかもしれない。
私へのプレゼント。
お仕事お疲れさま、の差し入れなのだ。
まるで「ごんぎつね」みたいだな。
うちの「ごん」は、腹を上にして寝ていた。その尻尾は、キツネのようにフサフサだけど、どちらかというと狸に似ている。
誤解を解いた猫は、心なしか、満足げにも見えた。
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