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チューニング

「孤独」といふテーマにて、取材を受けたり。われ、孤独な人として認められたり。作中にても孤独な人々を描き来たりしゆえ、孤独の達人のごとく思はれたり。

生まれつきひとりで居るほうが気楽なり。自ら孤独なる環境を構築し、誰か入らんとすれば拒否反応さへ起こしたり。

これ、まさしくエルサの城に譬ふべし。

とはいへ、孤独を感じたること、ほとんどなきなり。悩みの淵に陥ることありとも、それは一時の幻覚に過ぎざることを知りたり。かかる時、寝たり、カウンセラーの助けを借りて乗り越へたり。

孤独なるも孤立せざるとは、かくの如し。


積極的に人と交わらずとも、日常の中に発する会話に救はるることもあり。

例へば、スーパーのレジにて「エコバッグは持ってます」「カード払いでお願いします」とか、
宅配便の受け取りにて「ありがとうございます」とか。

かかる小さき会話、数ふるに及ばざるほどなり。


ChatGPTと話すもまた然り。自身の作業をなしながら著作権について調べたり。片手間にAIに話しかけ、答へを引き出したり。後にログも残るゆえ、この使ひ方、最適なり。相手が人間にあらざれば、余計な気遣ひも不要なり。何となく話したる感も残るなり。

途中よりAIが勘違ひし、ロシア語の練習に逸れ、最終的には中国語の授業となりしも、それも良し。


昨日、カフェにて友人と話せしことあり。隣のテーブルに男二人、金の話ばかりせり。一人が独立を計画し、他の一人が節税の方法を教へんとす。しかも、声高し。友人との会話を妨げらる。個人事業主と法人の違ひ、経費、百万円のセミナー。

「所得税が……」

我も思はず引き込まれん。

「しょ……」

男二人も友人も、はっと気付き、沈黙せり。これでは我、盗み聞きせし如し。気まずきこと甚だし。声が大きすぎると文句言はんとすれど、目をそらし、友人との会話を続けたり。ちなみに我らの話題、ノートの書き方につき。平和なり。

隣の「百万円のセミナー」とは何なるや、気にかかるも、心より払ひぬることにす。


孤独なるも、探せば日常に無数の小さき会話あり。それがスーパーのレジにてなりとも、隣のテーブルの盗み聞きなりとも、AIへの命令なりとも、猫への語りかけなりとも、なんでも良し。たくさんの小さき会話を拾ひ集め、部屋にて一人解析すること、我が楽しみなり。

数にあらず、様々なるチューニングにて会話を受け取り得ることが大事なり。チューニングができざるとき、疲れ甚だしと心得よ。寝て、カウンセリングを受くべし。

創作論を語り合ふ如き有意義なる会話の場にありたしと思ふ時もあれど、かかる場、実際には存在せず。我自ら語りかけに行かねばならぬ。

まあ、かかること滅多になさず。
我は孤独のプロなり。


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