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シュガー

「さとう・としお」さんに会いたいか、と問ひたれば、かかる有名なりけれども、いまだかつて遭ひ奉らぬと答へぬ。名高きにいと珍しき氏なり。砂糖と塩。

友に「さとう」といふ者ありて、しばしば「シュガー」と呼ばれけり。いとかわゆき名なりと、羨みし事ありき。彼女、美しき人なれば、ぴったりの呼び名なりし。

「我ならば『ちよこ・れいと』さんに会ひたし」
と相手の者言ひぬ。チョコレート氏なり。

「『あんみつ・きなこ』さんも、親友になれむ」

かかる少女マンガのごときかわゆき名を考へて遊びいるうち、ふと、近ごろ甘き物を食べざりけることに気付きぬ。甘き物といふより、砂糖なり。

きなこ棒を作らむとし、失敗して「きなこ板」作りしより、きな粉多く残りけり。ガトーきなこ、といふレシピをYouTubeにて見つけ、これを採りぬ。きな粉、豆腐、はちみつ、卵を用いて、一週間おやつにしたり。

期せずして砂糖なしの生活となりぬ。

もとより甘き物を愛する我、仕事の間にファミリーパックのお得サイズのチョコレートを食べ尽くしける。然れど、一つ食べ始むれば止むことを知らず。あと一つ、あと一つと永遠に手を伸ばし続く。

左手に握りしデバイスよりも、チョコレートを手にする時間のほうが長くなりぬ。かくて顔がまん丸となりぬ。これではいけぬ、と、人から貰ひし菓子や、外出先にてのデザート以外は食べざることに決めぬ。

然るに、今度は家にて毎日ケーキを焼くこととなりぬ。腹が空きたれば、ケーキを焼かむとせり。ブルーベリーのケーキ、リンゴケーキ、チョコレートケーキなど作りぬ。

かくてケーキ作りも禁止し、家に菓子を置かざりぬ。おやつは干し芋か茎ワカメなり。体重もたちまち元に戻りぬ。

然れど、冬終はりぬれば干し芋にも飽きぬ。ここにてきな粉棒、否、きなこ板を作ることとなり、きな粉余りぬ。

ここに「ガトーきなこ」の登場なり。

砂糖なし、あるいはたまに砂糖生活を続けたれば、変はりたることは肌荒れがほとんどなくなりしことなり。体重も減りぬれど、常に心の片隅にあらまほしき「永遠に甘き物を食べたし」との思ひより解放されぬ。

甘き物とコーヒーは対の如くなれば、カフェインも自然に離れぬる。

とはいへ、我、甘き物大好きなり。誰かが持ち来たる名店の菓子詰め合わせのために、日々は手作りおやつにて過ごしいるなり。

全力をもてお待ち申す、砂糖氏よ。


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