![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/145540227/rectangle_large_type_2_8571ae07baca540b8b3780b9a27644eb.jpeg?width=1200)
シュガー
「さとう・としお」さんに会いたいか、と問ひたれば、かかる有名なりけれども、いまだかつて遭ひ奉らぬと答へぬ。名高きにいと珍しき氏なり。砂糖と塩。
友に「さとう」といふ者ありて、しばしば「シュガー」と呼ばれけり。いとかわゆき名なりと、羨みし事ありき。彼女、美しき人なれば、ぴったりの呼び名なりし。
「我ならば『ちよこ・れいと』さんに会ひたし」
と相手の者言ひぬ。チョコレート氏なり。
「『あんみつ・きなこ』さんも、親友になれむ」
かかる少女マンガのごときかわゆき名を考へて遊びいるうち、ふと、近ごろ甘き物を食べざりけることに気付きぬ。甘き物といふより、砂糖なり。
きなこ棒を作らむとし、失敗して「きなこ板」作りしより、きな粉多く残りけり。ガトーきなこ、といふレシピをYouTubeにて見つけ、これを採りぬ。きな粉、豆腐、はちみつ、卵を用いて、一週間おやつにしたり。
期せずして砂糖なしの生活となりぬ。
もとより甘き物を愛する我、仕事の間にファミリーパックのお得サイズのチョコレートを食べ尽くしける。然れど、一つ食べ始むれば止むことを知らず。あと一つ、あと一つと永遠に手を伸ばし続く。
左手に握りしデバイスよりも、チョコレートを手にする時間のほうが長くなりぬ。かくて顔がまん丸となりぬ。これではいけぬ、と、人から貰ひし菓子や、外出先にてのデザート以外は食べざることに決めぬ。
然るに、今度は家にて毎日ケーキを焼くこととなりぬ。腹が空きたれば、ケーキを焼かむとせり。ブルーベリーのケーキ、リンゴケーキ、チョコレートケーキなど作りぬ。
かくてケーキ作りも禁止し、家に菓子を置かざりぬ。おやつは干し芋か茎ワカメなり。体重もたちまち元に戻りぬ。
然れど、冬終はりぬれば干し芋にも飽きぬ。ここにてきな粉棒、否、きなこ板を作ることとなり、きな粉余りぬ。
ここに「ガトーきなこ」の登場なり。
砂糖なし、あるいはたまに砂糖生活を続けたれば、変はりたることは肌荒れがほとんどなくなりしことなり。体重も減りぬれど、常に心の片隅にあらまほしき「永遠に甘き物を食べたし」との思ひより解放されぬ。
甘き物とコーヒーは対の如くなれば、カフェインも自然に離れぬる。
とはいへ、我、甘き物大好きなり。誰かが持ち来たる名店の菓子詰め合わせのために、日々は手作りおやつにて過ごしいるなり。
全力をもてお待ち申す、砂糖氏よ。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?