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ポケモンカード
ラジオ体操を好みて仕ること、いと甚だし。日に四度もラジオ体操をせしめるなり。かかること、既に幾度も日記に記し置きたれば、「またか」と思わるるやもしれぬ。
されど、我が身はラジオ体操に生かされておると申しても過言にはあらず。まさにハリガネムシに寄生せられたるカマキリのごとし。ハリガネムシがカマキリを操りて池に向かわせるごとく、我が脳もまたラジオ体操に操られいるなり。
原稿を描きつつも、時計を見やれば放送の時刻となりぬれば、身は自動的に動き、ボーッとしている間に体操を終えぬ。カマキリと異なるは、水場で溺死することなく、むしろ健康となり、心も明るくなることなり。
さて、小学校の夏休みが近づき、ラジオ体操の季節もまた来ぬ。朝に小学校の校庭にて体操をする、日本の夏休み恒例の風景なり。子らが首からスタンプカードをぶら下げて通う姿、いと懐かしきものなり。
今年はなんと、ポケモンとコラボしたるラジオ体操の出席カードが発行されると聞きぬ。郵便局にて配布されると知り、急ぎ向かいぬ。地元の小さき郵便局は、昼過ぎにて客はおらず。
「かかること、恐れながら申し上げる。ラジオ体操のポケモンのカードを賜りたく存じる」
と申せば、受付の女房、少し困惑の面持ちにて答えぬ。
「小学校などの団体にて予約されし分のみ用意いたす。予約をなさいしや?」
「否……さようでござるか。配布なされると公式Xにて見たれば参りしが……予約された団体とは記されておらず……さようでござるか。団体と申すか……」
名残惜しみて立ち去らぬうち、奥におはする年長の女房、出で来たりて申す。
「少しならば許されましょう。いかほど所望なさるや?」
「一枚にて足りる」
「少し待たれよ……これにてどうぞ」
幾度も頭を下げ、感謝を述べて郵便局を後にす。
ポケモンゲットだぜ!
我にとりて、ポケモンのカードとは、ポケモンのラジオ体操の出席カードなり。
帰りてのち、さらにカードの配布について調べることを試みぬ。果たして「郵便局にて配布中」とのみ記されており、入手の手段が不正にあらぬことを確かめ、安堵す。
さらに調べければ、今年の第六十三回一千万人ラジオ体操・みんなの体操祭が催されることを知る。年に一度のラジオ体操の祭り、八月四日、旭川にて催されるなり。参加の望みあり。しばらく調べけれど、夏休み中なれば、かつ土日の航空の切符は高し。大人しくラジオにて参加することに定む。ああ、ついでに旭山の動物園を見、三浦綾子記念文学館にも行きたきことあり。何か奇跡の如き出張が入りはせぬかと、未だ未練がましく思うにあり。
ラジオ体操に操られて郵便局へ駆けつけ、挙げ句の果てには旭川に行こうとする。体操とは、身体を操らるることにてあるか。ハリガネムシに寄生せられしカマキリのごとく、沼へ飛び込まんとするに似たり。
否、すでに水の中に落ちているのかもしれぬ。
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