指先の心臓
夕方4時、まだ暑さむんむんの畑へ。
着いて早々、鎌で指の腹をスパッと切ってしまった。
突然、指の先に心臓があるみたいにドクンドクン。
血を吸いながら水を撒きつつ、頭はドクンドクンの指先の事しか考えられない。
そう言えば昨日、生地は自分の手で触ってみるものよと刺繍作家の方に言われた。
けっして、口で人には伝えられるものではない、と。
わたしはことばのことをやって行きたいから、何でも口で、ことばで、伝えられたらってどこかで思ってる。
でも、手仕事してると、生地や革に触りながら、口でも、頭でも、ことばでもない何かを使ってものをみていることがある。
ドクンドクンしてた指先の血がやっと止まった。
止まったら、そこにあった心臓の音もいつのまにか消えていた。