わたしの看取りプロジェクト23

「好き」と「ありがとう」はいますぐ伝えてね

父が認知症と診断されてすぐ、わたしは父にお礼を言うことにしました。
いまから12年前です。

ふつう、娘は結婚式の当日にあれをやりますよね。

「お父さん、お母さん、いままでお世話になりました」ってやつ。

でもわたしの場合、結婚を待っていたら父の認知症が進んでわけがわからなくなっちゃう、という危機感がありました。

ある日の食卓。わたしは父に言いました。

「お父さん、いままでありがとうね。教育を受けさせてくれたし、満足に食べさせてくれた。通勤も仕事も大変だったでしょ」

すかさず父は言いました。

「それはお母さんが家や子どもたちをしっかり守ってくれたからできたんだよ。お母さんのおかげで自分は仕事に専念できたんだ」

自分より母を立てるとは! お父さん、すごいよ。認知症なのに。

父がデイサービスに通っていたころ、わたしは家での父のようすや若いころのエピソードを書いて写真付きでプリントし、デイのスタッフさんたちにときどき渡していました。

あるとき「デイのお迎えが来たらこれ渡して」と、上記のエピソードを書いた手紙を母に託しました。

母はスタッフさんに手紙を渡す前、こっそり読んでコピーしたことをわたしは知っています。

その日から母の父への接し方が少し優しくなりました。

みなさんにお願い。
愛するご家族に今日、ありがとうと伝えてください。
(2014.9)

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