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【平家物語】巻02_16 卒塔婆流


都に帰りたい。
切なる願いを込めて平康頼と藤原成経はひたすら神仏への祈りに明け暮れる。自分たちで見立てた熊野三山に詣で、ときには夜通し祈った。

そんな明け方頃、康頼は夢に千手観音の使いが「花咲き実がなる」と訪れる夢を見る。
これは幸運の兆しかとさらに熱心に祈り続けると、今度は風が沖から吹き付ける夢を見る。袂に残ったナギの葉の虫食いを見ると「帰京の願いはかなうだろう」との予言に読めた。
いよいよ帰京の思いが募る康頼は、千本の卒塔婆を作り、そこに自分の名と、望郷の思いを込めた歌を綴り、海へ流した。
なんと、そのうちの1本が、幸運なのか神仏の力の必然なのか、厳島神社の渚にたどり着く。それを手に取ったのは、康頼の身を案じ、無事を祈願していた知人の僧だった。
この卒塔婆はやがて都へ送られ、後白河法皇と清盛のもとへたどり着く。法皇は彼らを不憫に思い涙し、清盛もまた彼の判断で流罪にした者たちではあるが、流石にその心も木石ではないので、哀れなことよと言ったのだった。

順調に帰京の伏線が張られております。
でもって、この祈祷大会に俊寛の姿は出てきません。彼ひとりが帰京できないことの伏線もばっちりです。
まんが描きとしては、ぜひナギの葉のくだりに挑戦してみたかったのですが、無理。描けない……!!
どうやったら「ナギの葉の虫食いが『帰京できます』に読める」状態を描けるのか、皆目見当がつかない……!!
……というわけで、無難なシーンのほうにしてしまいました。

康頼と成経が「これ、そう読めない?」「あー、なんか読める気がしてきた、読める!読める!」とかキャッキャと盛り上がってるのを想像するのは楽しいんだけど、そりゃ俊寛も付き合いきれないよなー(^^;

この章段、卒塔婆が島から流れに流れて、しかも狙い済ましたかのように厳島神社にたどり着くわけですが、ボトルメッセージでスコットランドからニュージーランドにたどり着いた例もあるそうですから、距離的には無茶じゃないのかな。
そういえば、厳島神社には、壇ノ浦合戦のあとに二位尼・平時子の遺体が流れ着いたなんていう伝説もありますね。時子の最期の思いが手を伸ばした先が、平家が祈りを込めた厳島神社……なんて思うと、ぐっとくるわけですが、そんないろいろ流れ着いてたら厳島も大変です。