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【平家物語】巻03_19 城南之離宮


幽閉同然の身となった父・後白河の状況を高倉帝は憂慮し、自分もいっそ出家遁世してしまいたいと手紙を送る。
後白河からは、どうか帝位にあってほしい、あなただけが希望だと返事が届き、高倉帝は額にその手紙を押し当ててさめざめと涙した。

多くの貴族達が流罪や罷免の憂き目に遭い、ついには法皇までもが幽閉。
権勢を競うようにしていた者たちは、次々に脱落していった。
そんな中で、かつて平治の乱で暗躍し、しかしつい先ごろ出家して高野山に篭っている藤原成頼は、一足先にこの世から逃れた我が身に安堵しつつも、この先の世を憂うのだった。

清盛はさらに平家寄りの立場である明雲を再び比叡山座主の座につける。
院政が停止されたこれからは、帝が政務を執るようにと言い残して福原に戻って行ったが、その清盛の言葉を伝える宗盛に、高倉帝は、「法皇から譲り受けた政務なら執りもしようが、この状況で渡された政務など、宗盛と関白・基通が自分達のよいように執りはかればよいだろう」と突き放した。

後白河法皇は、都の南にある鳥羽離宮に閉じ込められたまま、寒々とした離宮の景色のなか、治承4年の冬をここで迎える。

大人の高倉天皇は初登場ですね。治承3年(1179年)時点で18歳。
最初、もうちょっと大人っぽい、かつ暗い容姿で考えてたのですが、でも華やかな滋子の息子だしなぁ…と、ちょっと可愛い系にしてみました。

さて、「どんなにめちゃくちゃやってた人に対しても、落ちぶれたら全力で美化して同情する」という平家物語のいつものクセそのままに、今回も後白河院が全力同情されてます。
末尾の、離宮の寂しい冬景色の描写とか、しんみりくるわけですが、どうなんですかね。そんなしんみりしてたような気がしないのですが…意外と今様ジャイアンリサイタル三昧だったんじゃないの?とか思っちゃのですが…。

ちらっと出てくる藤原成頼というのは、後白河院の元近臣。
彼の奥さんは藤原邦綱の娘で、六条帝の乳母だった藤原成子。重衡の妻である大納言典侍のお姉さんです。
そんなわけで、院にも清盛にも近い関係だったのですが、後白河院と清盛がこんな風に決裂する前に出家して都を離れていたので、難を避けることができた…って状態ですね。

さあ、後白河院を鳥羽に置き去りにしたまま治承4年を迎え、巻3が終わります。この年の夏には源頼朝が挙兵し、お話が大きく動きます。
巻4の後半からはいよいよ合戦シーンも始まります。私も描くのが楽しみ!