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【平家物語】巻03_08 有王


幼少時から俊寛に仕えて可愛がられていた童・有王は、鬼界が島の流人たちが赦され、都に帰ると聞いて鳥羽まで迎えに行ったが、そこには主である俊寛の姿はなかった。
俊寛ひとりが赦されず、都に戻れるという話も聞かないと知った彼は、いよいよ居てもたってもいられなくなり、隠れ住まいをしている俊寛の娘からの手紙ひとつを髪を束ねる元結に結びこんで隠し、俊寛のもとへ旅立った。

商船に乗せてもらってなんとか鬼界が島まで渡ったが、俊寛らしき人は見つからない。それどころか、この島には田もなく村らしい村もない。
人を見かけても言葉が通じない。
なんとか言葉が通じる人間を見つけたが、俊寛の姿はなかった。

それでも捜し続けていたある朝、有王は浜辺を歩く人影を見る。
海草や魚を手に持ってふらふら歩くその姿は、都の流浪者よりもみすぼらしく、地獄の餓鬼のような姿であった。
そして、その者に声をかけて有王は驚く。
その痩せ衰えた男こそが、捜していた主・俊寛だったのだ。

有王も旅の途中で盗賊に身包みはがれたりしてるんですけど、この漫画では比較的小奇麗にしてます。きっと俊寛様にお目通りするために薩摩あたりで新調したのでしょう(適当なことを書く)。
一人で旅に出て帰ってこれるわけなので、「童」とは言っても高校生以上くらいではあるんでしょうね。追い剥ぎにあっても、姫君の手紙だけは死守するなんて、ほんとけなげなコです。

成親の部下も主人に会いに行ってますが、岡山に行った彼と、九州から船に乗って離島へ向かう有王との旅程の困難度が天と地ほど違うと思う。
島に渡ったはいいけど、言葉がうまく通じない…ってのが面白いですね。同じ日本でそこまで?と思うけど、都人でお屋敷の召使をしていた有王と、島で漁や猟に従事する人とでは、そもそも共有できる単語数も少ないと思われるので確かに会話は困難かも。