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フィンランドの湖で幻日をみて、

この写真は、2018年9月末、学部生最後の夏休みにフィンランドの北部、ラップランド地方のとある町を一人で訪れていたときのもの。


日本から飛行機を乗り継いで、町への最寄りの小さな空港にたどり着き、予約していたレンタカーを借りる。慣れない左ハンドルにどぎまぎしながら、美しい黄葉に目を輝かせながら、空港から1時間ほど車を走らせる。たどり着いたのは、湖に囲まれた静かな静かな町。

町に入って、初めてairbnbで予約した、ゲストハウスへ向かう。ホストの夫婦に温かく迎え入れてもらった。ここで何かやってみたいことは?と聞かれ、拙い英語で、ハイキングやボートなど自然を楽しみたいと伝えると、オススメのハイキングスポットをいくつも教えてくれた。そして、ボートを持っている友人に連絡を取ってくれ、近くの湖を案内してもらう約束を取り付けてくれた。

その約束の日。その日は特に寒い日だった。ボートを操縦してくれるLさんに挨拶をし、一緒に湖へと向かいボートに乗り込んだ。私もLさんも英語がそれほど流ちょうに喋れないので、会話はポツポツと。夏はここを泳ぐの?とか、冬はスケートできそうだね、とか。そんな他愛のない話の中で、船着き場に戻る途中のある会話だけはよく覚えている。

その日は比較的良い天気で、うっすらと雲がかかった青空が広がっていた。船着き場へ戻る途中、太陽の左右に幻日という虹がかかっていることに私が気がついた。それを彼に伝えると、彼は

「Sun is between rainbows.」

と言った。彼がどういう意図でこれを言ったのかはわからないけれど、「太陽が虹の間にある」という表現は、とても新鮮に感じられた。私にとっては、「虹が太陽の横に出ている」というのが普通の感覚、視点だったからだ。


だから何なんだと言われると困るのだが、こうやって、他愛もない話から、自分がそれまで持っていなかった感覚を不意に覚えると、なんだかうきうきしたような、若返るような(まだ若返るほど年を取っていないが)新鮮な心持ちで、うん、こういう瞬間に出会えるって幸せだな、と思ったお話でした。


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