小4。人生初漫才③

ちょっとあったかなって来ましたね!




ーーーーーーーーそうそうほんでその人選の話。




ネタは出来たはいいが誰に見せようかと。


「あんっまわかってへん奴に見せてもしゃーないよなー。」


「なんか動きとかで笑い取ってるやつに見せてもあかんやろ、将吾(しょうご)とか。」


「あーあれはあかん。でもだからってめっちゃ仲いい奴に見せてもあかんやろ。」


「せやな、それもあかん。なんか感想とか言いにくいやろうし、まずなんでも笑ってくれる可能性あるよな。」


「……和也(かずや)とかは?」


「あー和也な!」


「そんっなしょっちゅう遊んでるわけでもないし、あいつちょいちょいおれらの言うてる事で笑ってない?」


「確かに!距離感的にも丁度ええかもな!」




和也に決まった



どういう会話?

なんやねんそのスタンス

クソガキらまだいっぺんも人前出た事ないやろがえ






ーーーそして数日後の放課後、和也を呼び出した。



確か

「今日家に帰ったら、16時におれの家の近くの〇〇に来てくれ。見せたいものがあるねん。」

とか言うて誘ったような気がする。



石島と話し合った結果、漫才やるっていうたら身構えられてもアカンし、そもそも立ち話やから漫才やるとは言わんと普通に出ていって喋ろ。それでウケなあかんやろ。とかいう作戦になった。

これが大きなあだになった。





約束の16時。


待ちあわせ場所に和也は現れた。


僕の家の近所の団地の下にある、ほんっまベンチが1.2.3.4。


四つ正方形に並べられてるだけ、だけの小さな公園。


遊具もなにもないから普段そこでだれも集まらへん公園。そこに呼び出した。


和也「なになに!?見せたいものって!?なんなん!?めっちゃ緊張するんやけど!」


坂本「いやいやええから、とりあえずここに座っといてくれ。」


和也「なんでなんでなんで!なにか教えてーや!」


石島「いや!ええから、和也。とりあえずここに座っといてくれ。」


和也「なーんでよ!?なになに!?宝物!?」


坂本「いや、宝物とかではない。宝物とかはない。」


和也「じゃあなによ!?ゲーム!?ゲーム買った!?」


石島「いや、和也。ゲームとかじゃないねん。」


和也「マジでなんなん!?てかおれだけ!?なんで!?珍しない!?なんかドキドキするんやけど!!」







人選は大失敗だった。

というか作戦が大失敗だった。

和也は何も悪くない。

和也はこどもらしーいええ子や。

そらそうなるわ。

俺らが何も伝えなさすぎや。

そら誰が呼ばれてもそうなるわ。大人でもそうなるわ。

普段そんな仲良ないやつにいきなり「見せたいものがある」とか言うて呼び出されたら。

まさか物質的なものではないとは夢にも思わんわ。




坂本・石島「いや、とにかく和也いっぺんここに座っといてくれ。すぐに出てくるから、一旦ここに座っといてくれ!!」


和也「お、おーん。。」


なんとか巧妙な説得術で和也を座らせた僕たちはすぐさま団地の影に隠れた。


これが僕の人生初の舞台袖だ。


チラッと覗くと口を開けてなんとも子供らしい退屈そうな顔を浮かべた和也がいる。


あまり待たすことは出来ない。


石島と「よし、いこか。」と息を合わせると僕たちは上質な客の待つベンチの前へ飛び出していった。


坂・石「はいどーもーー!!バックアップですー!!」


和也「.......え!え!なに!?なに!?」


坂「いやーいきなりなんですけどねー」


和也「え!え!どうしたん!?ゆうすけ!なにこれ!?」


坂「学校って全然おもんないよな!」


石「なんでやねん!そんなんゆうな!」


和也「え!なに!?なー!石島!これ漫才!?」


坂「だってさ~・・・うんたらかんたらなんたらかんたら」


和也「なーて!なー!これ漫才!?」


石「いやあかんがな!・・・うんたらかんたらなんたらかんたら」


和也「え!今これ漫才してんの!?石島!これ漫才やんな!?」


坂「○○△△□□~」


和也「漫才やん...。」


石「○○☆△!!」


和也「これ漫才や。」


坂「☆○△▲〇!」


和也「.........」


石「□■!!☆〇★!!」


和也「.........」




ーーーーーーーーーーー

石「もうええわ!どーも!ありがとうございましたー!!」


一旦、団地の影にはける二人。

もう一度和也の前に行く。

心臓がドクドクバクバクいっている。


坂・石「どやった?」












和也「.........これって漫才やんな?」






いやそらそうなるわ。

ほんまそらそうなる。

まず笑うとかそんなとこまで行かんわ。

いきなり見せたいもんあるて呼び出されて、状況飲み込まれへんまま座ってたら漫才みたいなもん始まるんやもん。

同級生が「バックアップですー!」とか言うてくるんやもんな。

どう見ても「ゆうすけ」と「石島」やもんな。

そらたくさん「なー!なーて!」て話しかけるわ。

めちゃくちゃ無視されるしな。

おれらにアドリブ力がないからめちゃくちゃ無視してもうた。

なんなら見たらわかるやろ!うっさいねん!とか思てたわ。

それでいきなり「どやった?」て聞かれてもな。

まず漫才かどうかの確認から入るよな。

そらそうなるわ。


坂「まぁ、一応、、漫才なんやけど、、。」

石「どやった?」


石島、もうどやったとか聞くのやめろ。ウケてなかったやろ。それどころちゃうかったやろ。和也。


和也「......いや!え!すごいわ!めちゃくちゃおもろかった!なんかびっくりしてよーわからんかったけど!漫才や!え!漫才やるん!?漫才師なるん!?」


坂「いや、まだわからんけどな。一応今度の林間でやろ思てる。」


和也「すご!絶対楽しみや!マジで!絶対おもろいわー!めっちゃウケるやろなー!」


石「まだ誰にも言うなよ。」


和也「オッケー!内緒なやつな!」


坂「じゃあ、、ありがとう!帰っていいよ!」


和也「え!あ、おう!帰るわ!頑張ってな!」



みたいな感じやったと思う。


とにかく恥ずかしすぎてソッコー帰した記憶がある。



いやほんっまもっと感謝せなあかんし、もっと謝らなあかん。


和也が純粋すぎる。


和也は中学に上がったら、いっつもリップスライムとかキックザカンクルーとかのラップを誰よりも早く覚えてきて、廊下の端から端まで歌いながら闊歩してたやつ。

それがカッコイイと思ってたやつ。でもそれはまた別のお話。





ーーーー次号、いよいよ林間学校のレクリエーションの出し物を決めるホームルームの回

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