MKSAPを手に取ってみた
アメリカ内科学会が監修している勉強教材に、
Medical Knowledge Self-Assessment Program (MKSAP)
というものがあります。渡米前に何となく存在は知っていましたがSTEPも受けたしいっかと思って放置しておりました。生涯学習を唄っています、つらいですね。
https://www.acponline.org/featured-products/mksap-19
アメリカの内科レジデンシープログラムではプログラム内で毎年Intraining exam (ITE)という学力を図るテストがあります。恐らく進捗状況を確認したり、「こいつは卒業後専門医試験は大丈夫そうだな、危ないな」など確認することが目標なのでしょう。試験内容は選択形式でMKSAPと非常に似通っています。
MKSAPのバージョン19がリリースされて、家に届いたので少しだけちらっと内容をみてみました。まず腎臓内科を見てみたので、少し知識整理がてらメモしておこうと思います。
・スポットの蛋白/Cr比やアルブミン/Cr比は24時間畜尿で得られた結果と相関し、蛋白尿のスクリーニングやモニタリングに十分に正確である:日常診療で便利ですね
・ACE阻害薬やARB内服中患者では、尿中蛋白のモニタリングは不要:知りませんでした。もちろんモニタリングが必要な例外(ネフローゼ治療中、血管新生阻害薬投与中などなど)はあると思いますが、通常の高血圧診療では不要という理解だと思います。
・糖尿病性腎症の治療ではACE阻害薬とARBの組み合わせは無益かつ有害:納得ですね
・尿検査は無症状者の尿路上皮癌スクリーニングでは使用しない:症候性であれば尿検査+画像検査でしょうが、無症状者は不要
・CTウログラフィーはMRIよりも血尿の精査で有用:尿管の評価はMRIよりもurographyが優れる
・症候性低ナトリウム血症ではデスモプレシンと3%NaClの同時投与が推奨される(より予後をよくする+安全):ICUモニタリングが必要でしょうが、デスモプレシンの同時投与というのは頭にとどめておきたいと思います。
・体液正常性の高ナトリウム血症では静脈からの5%グルコースよりも、水分の経口摂取・経鼻胃管(経口摂取困難患者)が推奨される:禁忌がなければ腸管を使え、という原則通りでしょうか
・白衣高血圧患者では心電図や身体所見で心肥大所見がなければルーティンでの心エコーは推奨しない:逆であればスクリーニング推奨
・ステージ①高血圧かつ10年ASCVDリスクが10%未満の場合は、まず生活習慣の見直しが薬物療法よりも優先される
・妊娠中の慢性高血圧(<160/110)の治療は胎児のアウトカムに関連しない:うーん、多少の高血圧は許容ということでしょうか。
・腎動脈狭窄があっても、まず高血圧のマネジメントは薬物療法
・腎線維筋性異形成が疑われる場合は、CTアンジオがMRIよりも優れる
・若年のIgA腎症で、蛋白尿のない再発性の血尿の場合は、治療は保存的治療であり予後は比較的良い
・膜性腎症患者で、二次的な要因がなかったり、腎機能が保持されている場合は、抗Phospholipase A2受容体抗体が陽性であれば腎生検の回避が可能
・原発性膜性腎症は通常まず保存加療。30%は自然に蛋白尿が改善されるため。免疫抑制剤の使用はその後判断。
・造影剤腎症の予防法はeGFR>45の場合、確立したものはない
・敗血症患者への腎代替療法導入のタイミングは確率していない(早期介入vs臨床判断)
・腎結石の診断は超音波>>CT
・尿酸結石への効果的な治療は、クエン酸カリウムの投与による尿のアルカリ化
・CKD患者へのカリウム吸着薬は、ACE阻害薬やARBなどの導入を可能にする。
・CKD患者でHgbが11より多い場合は、エリスロポエチン製剤の投与は推奨しない。
・腎不全末期の高齢患者で移植の対象者でない場合、通常は腎細胞がんのスクリーニングは不要である。
・可能であれば腎移植は積極的に考慮する。
・腎代替療法の教育を早期にされた患者では、教育が不十分な患者に比べて、移植の待機リストに載る、移植を受ける、可能性が高くなり、予後の改善がみられるかもしれない。
・高齢患者で腎代替療法の適応出ない場合、緩和医療を積極的に考慮するべきである。
専門になる分野ではないですが、まめな知識のアップデートは定期的に必要そうです。やることが多くて大変です。
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