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もう、いっそ非常識に従え

かの有名な理論物理学者は、こう言っている。
常識とは、18歳までに身に付けた偏見のコレクションである Common sense is the collection of prejudices acquired by age eighteen.
まったく仰るとおり。

勤め先の同じチームに、もうひとり同じ職位がいる。
還暦の半地下アイドルオタ。
もう救いようのないパワーワードの中でも最高峰ではないだろうか。

かなりカジュアルな服装も許されている職場だが、メンバーらしき顔が背中一面にプリントされたパーカーで出社してきたときには凍りついた。
私が、ではない。
オフィスが。
彼の揃えるコレクションでは、ふつうに出掛けられる服なのだろう。
どちらが偏見かは推して知るべし。

さておき、Twitterを筆頭にSNSのおかげで常識という偏見のコレクションがばら撒かれるようになった。
素性を晒さない匿名性は、ただただ個人が嗜好をぶちまけるに最高だ。

対して責任をもって情報を発信する、あるいは本来の使い方をしている側にしてみれば、同じタイムラインを百鬼夜行が通っているようなもの。
店なり個人なりを晒してSNS利用している方々にもメリットはあるのだろうが、それ以上に負うリスクを思うと勇気に敬服する。

刃を黒く塗った辻斬りが潜むところ、提灯を掲げて歩くようなもの。
ちょっと提灯が違ったか、と斬って気がつくような話も枚挙に暇がない。

この数日でも、また1つ。
被害に遭われた「リストランテ小林」というお店は、たまたまオーナーでもあるシェフの苗字が同じで..と、この時点で別人なわけだが店舗の所在や来歴など少しばかりの共通点で誰とも知れぬ何者かに吊るし上げられたわけだ。

この誰とも知れぬ何者かは責め苦を受けることもなく、どこかでニヤニヤと笑いながら闇に紛れて、また黒く塗った刃で提灯に襲い掛かるだろう。

おそらくジャック・ドーシーも、そんな繰り返しのために考案したでもないだろう。が、5Gでブーストされて悪意へすり替わる爆発的な拡散力には、少なからずの予感もあったはずだ。
かの有名な理論物理学者は、こうも言っている。
人間の邪悪な心を変えるより、プルトニウムの性質を変える方がやさしい It's easier to denature plutonium than to denature the evil spirit of man.

コモン・センスは、日本語では常識と訳される。
が、いちばん大切なニュアンスが失われてしまっている。
文字通り”センス”なのだ。
揃えた偏見のコレクションを眺め磨いた唯一無二ユニークな、それ。
もしかしたら非常識かもしれないが、同調圧力に従うよりいいはずだ。

とはいえアイドルの顔が背中一面にプリントされたパーカーで出社をしようなどと私は思わない。そればかりはきっと、間違いなく。

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タイトル画像は「ピッピ」様からお借りしました。
ありがとうございましたm(__)m