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Parannoul

思春期の不安定な心理の中では、まだ何かが慰められているように感じる。「でも、僕はまだ若い。大人になったら何かが変わる。」と言うけれど、大人になっても変わらない人の方が多いよね。

https://www.sleep-like-a-pillow.com/parannoul-interview/ インタビューより引用

学生時代、何者かになりたくて何者にもなれなかった人間は想像よりも遥かに多いのかもしれない。しかし何故か、ただ自分だけが取り残されたかのように感じてしまう。

そんな感覚が、このアルバムを聴くとふと思い出される。

『To See the Next Part of the Dream』

韓国のシューゲイザープロジェクト、파란노을(Parannoul)の2ndアルバムである。

このアルバムは映画『リリィシュシュのすべて』のとある台詞から始まる。私の場合、今回のアルバムから映画を知ったため初めて再生した時に映画の知識はなかったが、そんな私にも、存在したのかしていなかったのかも分からない青春がフラッシュバックした。

その後掻き鳴らされるギターノイズは粗さもありつつ、内省さも持ち合わせた行き場のない感情のようなものを持っている。

シューゲイザーの代表格My bloody valentineはもちろんだが、ギターノイズにはsunny day real estateのような直球のエモを感じる。そして何より、このアルバムは全て打ち込みであり、尚且つたった1人によって作られている。ただ1人によって創作されたこのアルバムは多くの人に あの頃 を想起させる。むしろ、たった1人の感情だけが乗ったことで内省的な音が霞むことなく仕上がったのではないかとすら思う。

また、Parannoulのインタビューを読めばあるように日本のバンドにも影響を受けた、と記されている。確かに、ノイズの裏で鳴っているピアノにはどこか神聖かまってちゃんが持つようなエモーションが含まれているように思える。

syrup16gにも劣らない内省さにノスタルジーを重ねたこのアルバムは、最初に記したような何者にもなれなかった人々にとって、貴重な音楽体験になり得るものだ。Bandcampでname your priceになっているため、syrup16gはもちろん、ART-SCHOOLや初期〜中期のTHE NOVEMBERS周辺を好む方々にもぜひ一度聴いてみて欲しい一枚である。

https://open.spotify.com/embed/album/0sLt9EsWnVZgJAO5Sp35YQ?si=XoOVcttCRmOoVSJyIZtAgg&dl_branch=1

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