SHEmoneyブランド責任者・松尾真里さんが語る、仕事をする上で意識的に働かせている「想像力」とは
SHE株式会社が運営する女性向けマネースクール「SHEmoney」のブランド責任者・松尾真里さん。SHEmoneyとは、家計管理から資産運用の実践までを体系的に学ぶことができる、女性のためのマネースクールだ。
松尾さんは元々新卒でリクルートに入社し、事業開発などの業務に携わった後、当時スタートアップ企業的立ち位置だったSHEへの転職を決意。
苦い経験を味わった新人時代、大きなプロジェクトを任された時の重圧、新規事業でのチームマネジメントなど、キャリアを通してさまざまな経験を積んできた松尾さんが思う「仕事をする上で大切にしていること」とは何なのだろうか。
安泰のキャリアを捨て、SHEへの転職に踏み切った理由
SHEmoneyには立ち上げ時から携わっていますが、さかのぼってお話すると、私は学生の頃から事業開発にとても関心がありました。
きっかけは、大学時代のアメリカ留学です。Googleを始めとした、スタートアップ企業への訪問を重ねるうちに、IT技術やプロダクト開発に憧れを抱くようになりました。
帰国後は早速、積極的にプログラミングを学んだり、とある人材会社にリソースの出資をしていただき、実際にプロダクト開発に取り組んだりしました。
その後、リクルートへ新卒入社することになるのですが、この会社を選んだ理由はここでも一貫しています。事業開発ができる人材になることを目指していたので、起業家精神が強いと言われているリクルートを選びました。
リクルート時代は、着実にスキルを身につけ、ある程度力がついた段階で、自らの事業アイデアを起業家に提出し、フィードバックをもらうといった取り組みを行っていました。実は、SHE株式会社の代表である福田から最初に声がかかった時も、私はあくまで自分のアイデアを持っていこうと思っていたんです。
そうしたら、その場でSHEへの入社を打診され、私はその日中に「行きます」と承諾しました。ただ当時はSHEmoneyの構想はまだなくて、ライフコーチングカンパニーの領域としてファイナンスあたりを視野に入れている、といった漠然とした段階のものでした。
リクルートでキャリアを積んでいくことも安泰な道ではありましたが、私の中で、「20代で何かをやりきった」という確固たる紋所が欲しいという思いが強くありました。紋所があれば、たとえば出産などで一時的にキャリアから離れたとしても、現場に戻った時にまたそこからキャリアを再開することができます。
私自身はまだまだ道半ばではありますが、SHEへの転職、そしてSHEmoneyブランド責任者というこの立場が、私の紋所になり得ると思っています。
必ずしもリーダーシップを発揮しなくたっていい。私は、「フォロワーシップ」タイプだ。
リクルート時代、入社3年目で大きなプロジェクトの責任者を任されたことがありました。当時は、プレイヤーとして強く、戦略的で美しいストーリーを書くことができ、チームの先頭に立って引っ張っていくーーそういった人材が「リクルートのリーダー像」だと思っていました。
実際にそのような先輩社員を見習って、私も強いリーダーシップを取り、徹底的なトップダウンでチームをマネジメントしていくことに努めました。ですがその結果、ハレーションが起こり、チームも崩壊してしまったんです。
私自身のストレスも極限状態まで陥ったので、1回立ち止まって、考えてみようと思いました。信頼する上司や先輩にも当時の状況を相談したりして、「今のやり方は私に合っていないのではないか」と気付くようになりました。
その後は、全てにおいて自分の裁量で決定を下すのではなく、周囲の力を頼る方向にシフトしました。そうしていくうちに仕事が円滑に周り始め、結果もついてくるようになりました。
今もブランド責任者という立場ではありますが、こうした経験が過去にあったからこそ、部下や仲間の前で必要以上に格好つけたりすることはしないです。
たとえば困難な状況に面した時でも、つらかったら「つらい」とありのままを打ち明けるようにしています。幸運にも、私は周囲のメンバーに恵まれているので、みんな快く私の悩みを聞いてくれます。こうした悩みは1人で解決しようとすると精神的にきついこともありますが、シェアすることで負担はかなり軽くなります。
リーダーには、きっと2種類あるのだと思います。リーダーシップを正しく発揮できる人は、それで全く問題ありません。ただ私はもう1つの、「フォロワーシップ」タイプのリーダーの方が性に合っているんでしょうね。
ブランド責任者として「余白」を作り、「想像力」を働かせる
リクルート時代は厳しいコミュニケーションが主流で、理詰めされる場面も多かったですが、SHEのような新しい会社の場合、正解がそもそもありません。そのため、ラフに意見を交わせる環境を作ることがより重要視されます。
メンバーが新たに加わったときは、その人が個人的に抱いているwillと、SHEmoneyで叶えたい(成し遂げたい)willを1on1で聞く場を必ず設けるようにしています。自分はリクルート時代に副業でSHElikesのコーチを行っていた経歴もあるので、コーチングの精神はこういった所にも生きているのかもしれないですね。
チームメンバーの様子は普段から気にかけ、敏感でいるように意識しています。想像力を働かせ、1人で仕事を抱え込んでいる様子のメンバーにはすぐに声をかけ、「人を頼ることは悪じゃないんだよ」と諭します。いいものを作りたい、事業成長させたいという思いは元々みんな同じなので、自分の目の前にある目的の視座を1段上げさせるようにしていますね。
ただ実を言うと、リクルートでの新人時代、想像力を全く働かせていなかったために、周囲の信頼を根こそぎ失ったような経験をしたことがあります。仕事をする上での「タスク」は自分だけのものではない、タスクとはバトンリレー……その意識が当時は欠如していました。
0になった信頼残高を取り戻すためにまず行ったことは、仕事をこなすスピードを上げることです。その間にスキルとクオリティを地道に磨くことを1年ほどかけて続けた結果、周囲の評価も変わり始め、のちに大きなプロジェクトを任せてもらえるようになりました。これが、先ほどの入社3年目のプロジェクトリーダーの話に繋がっていきます。
ブランド責任者という立場上、毎日多忙ではありますが、余白(=暇な時間)を少なくとも1日1時間は設けるようにしています。これが、想像力を日々働かせるために意識して取り組んでいることの1つです。1つのタスクとして「余白」をきちんと管理することで、メンバーの話を聞く時間をすぐに作ることができます。
タスク管理を日々しっかり行っているので、夜遅くまで仕事をすることはまずありません。SHEはフレックス制で、私自身は大体10時〜22時勤務です。リクルート出身というとバリバリ仕事をするのが好き、といったイメージを持たれがちですが、私は基本的に休みたい人間なんです(笑)。 仕事とそれ以外の時間は、明確に分けたいタイプですね。