半夏生を見たかい?

半夏生だったらしい。聞いたことあるけど何だったかなという程度の認識だったのであらためて調べてみたら、いろいろと逸話があって面白い歴日だった。天から毒気が降るから井戸に蓋をするとか、ハンゲという妖怪が出るとか。

半夏生の日に降る雨は半夏雨だという。わざわざそんな言葉があるくらいだから、古来からこの日は雨が多かったのだろう。今日みたいな嵐めいた豪雨を古代日本人に見せたら、こんなのは半夏雨じゃない!とツバを吐きかけるかも知れない。

農家ではこの日までに仕事を終えて、五日間の休みを取ったりするそうだ。農業は大変というイメージしかないので、この時期にそんな休みを取るなんてピンとこない。休みと言ってもやることは他にいろいろあるんじゃないか。きっとあるはずだ。僕の想像の世界ではどうしても農家は楽をさせてもらえないことになっている。

農家の実際はともかくとして、この時期に休みを取るのは面白いなと思った。個人的には正月やお盆に休みを取るよりもしっくりくる。身体を休めるのと、夏への備えをするのとで、五日間なんてあっという間に違いない。我が家ならばまず庭の木の枝を切ったり、殺虫剤を撒いたりする。布団も全部洗って、真夏用と入れ替える。ベランダの雨樋と排水口のつまりを直す。猫のトイレも洗っておこうか。

そんなことを考えながら会社できわめてスタンダードないつも通りの仕事をして、雨の弱まったすきに帰ってきた。レインコートを脱ぎながら、半夏生半夏生…と何度か思う。毒気のある雨を少し浴びてしまったけれど、今のところ身体に異常はない。僕はまだ頭でしか半夏生をわかっていないようなのだった。