無限に拡張するメタファー辞典 〚NCT世界観考察〛
今回はNCTの世界観を考察していく上で重要な、"メタファー(比喩・暗喩)"についてご紹介していきます。
その前にまずNCTの基本概念について知りたいという方は、ぜひこちらの動画をご覧ください。
起源記憶から見るメタファー
起源記憶、とはNCTとして最初に公開されたこちらの映像のことです。
見ていただくと分かると思いますが、大まかなあらすじは「少年の夢が叶う代償として彼の大切な人が消えてしまう」というもの。
この映像は考察を行うための必要不可欠なメタファーを多く含んでいるため、私は断定的に起源記憶と呼んでいます。
三原色
"夢"のメタファー。
赤、青、黄、これらの色を混ぜ合わせるとどんな色でも作り出せるため。起源記憶には三原色のクレヨンが登場。
現実世界との対比を明確化するため世界観初期MVではメタファーとして強い効力を持っていたが徐々にその意味合いは曖昧になり、特にNCT2020以降は他のメタファーの一要素としてのみ存在する。
海
"夢"のメタファー。
起源記憶の少年が三原色のクレヨンで海を描くと、目の前に本物の海が現れたため。海を見たい、という少年の行動を踏まえ"願望"や”執着"のメタファーとしても有効。
水
"現実と夢、夢と夢、を繋ぐ媒介"のメタファー。
起源記憶の海、転じて水はNCT世界観に頻繁に登場する。神話や昔話などでも度々水は異界に繋がる媒介としてその性質を持つ。
水に溺れる描写は夢に溺れる様子と捉えられる。
砂
"夢"のメタファー。
起源記憶の少年は砂漠に住んでいるため、また砂に触れたテヨンが起源記憶を思い出すというシーンに起因する。
砂時計
"夢の終わり、世界観の一つの区切り"のメタファー。
砂時計は砂が落ち切るのを一つの区切りとし、ひっくり返せば再度時間を計ることが出来る道具。
時間の経過とともに砂が落ちていく様子は、夢の世界が無限であるという前提と対照的。
上部の砂が少なくなればなるほどメタファーとしての効力が増す。
宗教的メタファー
MVには度々宗教的なシンボルが登場し、それらはメタファーとして世界観に作用しています。キリスト教、ギリシャ神話、北欧神話、中国古代の五行思想など様々な要素が存在しています。
宗教とは一般的に、人智を超えた存在への信仰を主体とする思想体系を指します。つまり全てが叶う理想的な現実を目指し、夢の世界で奔走するNCTはある種の宗教的な集団であるともいえるでしょう。
宗教的メタファーが直接的な象徴となる場合もあれば、「教祖と教徒」「信仰者と非信仰者」というような人間同士の立場の相違と世界観の行く末を示唆する役割を果たす場合もあります。誰がイエスで誰がユダかなど、その視点は世界観の進行によって大きく変化していくため、ここではメタファーについての宗教的な情報のみを記載しておきます。
蛇
"欲"のメタファー。
旧約聖書の創世記では人間を誘惑する悪魔の象徴として描かれている。
リンゴ・ザクロ
"欲"のメタファー。
旧約聖書の創世記に登場する禁断の果実の解釈は時代によって異なり、リンゴともザクロとも言われている。
ザクロはキリスト教において再生と不死の象徴、リンゴはギリシャ神話で戦争の原因として登場する。
最後の晩餐
"裏切り、革命"のメタファー。
最後の晩餐とは、イエスが十字架にかけられる前日に、弟子たちと一緒に摂った最後の食事のこと。裏切り者ユダも食事に参加している。
聖母マリア
"愛"のメタファー。
イエスの母であるマリアは、純粋な母性愛の象徴。
宗教体系の中で従順な教徒として存在し、反抗することはない。
マント・フード
"教徒"のメタファー。
様々な宗教において、教徒や聖職者が祭服として使用。
マリアのベールや、イエスのローブなどを想起。
黄色
"裏切り"のメタファー。
裏切り者ユダが黄色の衣服を着ていたことから、キリスト教では裏切り者の色とも言われている。
椅子
"信仰の強制"のメタファー。
チャーチチェア(祈りを捧げるため礼拝堂などで使用する椅子)を想起。
映画をモチーフとするメタファー
ブルー・オレンジ
"夢と現実、および過去と未来"のメタファー。
映画『マトリックス』に登場する青と赤の錠剤に由来する。『マトリックス』では「満ち足りて何も知らない状態であり続けたい」場合は青い薬を、「人生が根底から覆るとしても真実を知りたい」場合は赤い薬を飲む。それぞれを夢、現実、というワードに置き換えることが可能。
なぜNCTの世界観ではブルーとオレンジなのかという点に関しては、重要なメタファーである海と砂(時計)の色に起因しているという仮説を立てているが明確な証拠は未だない。
NCT2020にリリースされたアルバム「REASONANCE Pt.1」には「The Past ver.」「The Future ver.」の2パターンがあり、それぞれブルーとオレンジのコンセプトで形成されている。
コマ・リング・回転体
"トーテム(そこが夢か現実かを判断する道具)"のメタファー。
映画『インセプション』で主人公が持ち歩いているコマに由来する。コマの回転が止まればそこは現実、回転し続ければ夢の中。
NCTの世界観ではコマ以外にもリングや様々な回転体が登場し、特にそれらが回転し続ける場合は考察の際の有効なメタファーである。
ガム・アメ
"夢に深く入り込むための鎮痛剤"のメタファー。
こちらも映画『インセプション』で使用されている鎮痛剤が由来。
特に世界観初期MVのメンバー達は夢の世界に適応しきれていないため、頻繁にこれらが使用されている。
その他のメタファー
〇(円・球・縁・ONE・원)
"音楽、グループ、メンバー、個人などの夢"のメタファー。
NCTには潜在的に〇の概念が存在。
NCT2020のロゴ、月、目、リングなどの印象的なモチーフからサブリミナル効果的に〇の概念を享受しているとも言える。
※この概念には企業によるプロパガンダ的な心理も少なからず混在しており(例えばEXOのスローガン「We are One!」は元々SMの企業理念として存在)、フィクションとノンフィクションどちらにも関わりを持つと考えられる。
ボール
"音楽、グループ、メンバー、個人などの夢"のメタファー。
野球、ビリヤード、テニスなどの球技は夢のコントロール、場合によっては夢を軽視して遊んでいると捉えることが出来る。
月
"夢"のメタファー。
簡単には到達できない場所であり、人々が夢を見る夜にしか現れないため。
目
"覚醒"のメタファー。
NCTのデビュー曲「The 7th sense」の歌詞「Open your eyes」に起因する。7感とはNCTとして覚醒したメンバー全員が共通で持っている超感覚である。
NCT2018の世界観映像でのユウタの発言「大きな目が僕を見ていた」や、宗教的なモチーフとして広く使用されているということからも考察が可能。
カメラ
"視点"のメタファー。
花
"夢への陶酔"のメタファー。
NCT2018の世界観映像でユウタは続けて「瞳の中は花びらでいっぱいだった」「眼差しが心地よくて"この夢から覚めなければいいのに"と思った」と発言。
霧・煙
"夢"のメタファー。
煙や霧を浴びる、もしくはこれらのなかを潜り抜けるといった描写は現実から夢への"境界"を超える行為ともとれる。
光
"洗礼"のメタファー。
描写によっては煙や霧と同じく"境界"を超える行為ともとれる。
木
"NCT"のメタファー。
NCTという太い幹からメンバーそれぞれの夢が枝として生えている。
鏡
"虚像、夢"のメタファー。
黒旗
"死や弔い"など現実世界に存在する恐怖を表すメタファー。
蝶
"夢と現実が曖昧になっている状態"のメタファー。
中国の故事成語「胡蝶の夢(荘子が夢の中で胡蝶になり、自分が胡蝶か、胡蝶が自分か区別がつかなくなったという「荘子」斉物論)」が由来。
鎖
"夢に心を縛られている、囚われている状態"のメタファー。
ピアノ
"夢の実験機械"のメタファー。
夢の中でメンバーを探したり様々な実験に使用。
笛
"メンバーの存在と居場所を認知する道具"のメタファー。
車・バイク
"憧れや達成したい目標"のメタファー。
ヘリコプター
"監視と力関係"のメタファー。
機体とメンバーのサイズ比や乗機有無により意味合いは異なる。
エレベーター・エスカレーター
"夢の中を行き来する手段"のメタファー。
※随時更新予定
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