お客様はウルトラマン

◉あらすじ
とある田舎の小さな居酒屋に、なんとウルトラマンがやって来た。ウルトラマンは店の大将とお酒を飲みながら話をしていたが、突然ある悩みを打ち明け始め…

◉登場人物
・ウルトラマン・・・居酒屋にやって来た国民的ヒーロー。何やら悩み事がある様子。
・大将(32)・・・小さな居酒屋を営む男。今日を最後に店を閉める予定だという。

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○本編

田舎にある小さな居酒屋。閉店間際の為、店に客はいない。そこへ1人の客がやってくる。

ウルトラマン「1人なんだけど、空いてる?」
大将「え?ウ、ウルトラマン?本物?」
ウルトラマン「で、空いてる」
大佐「あ、はい。。いらっしゃいませ。こちらにどうぞ」

ウルトラマン、カウンター席に座る。

大将「思ってたより小さいんですね」
ウルトラマン「あぁ、よく言われるよ。『テレビで見るより小さく見えます』って。
大将「そんなレベルじゃないと思うけどな」

ウルトラマン、メニューを見ている。

大将「あの、マスクはどうされますか?」
ウルトラマン「?」
大将「あ、いえ。お食事の際に不便でなければ、そのままで大丈夫です。逆に取ったら取ったでこちらも反応に困りますので。。」
ウルトラマン「生ビールと、おでんセットね」
大将「はい、かしこまりました」

ウルトラマン、マスクを少し上にずらしながらタバコを吸う。

大将「。。。」
大将「お待たせいたしました。生ビールとおでんセットです」

ウルトラマン、料理をスマホで撮影する。

大将「。。。」

ウルトラマン、ビールを飲みながら黙々とおでんを食べる。時折、ため息をついている。

ウルトラマン「なあ、大将」
大将「あ、はい!」
ウルトラマン「俺、最近仕事がなくてよ、いい仕事ないかな?」
大将「お仕事って、怪獣を倒すのがお仕事だと認識しておりますが。。」
ウルトラマン「怪獣も人手不足でよ、あんまり倒しすぎると後継者が育てられないんだとよ」
大将「それが目的でやってると思ってました」
ウルトラマン「昔はある程度めちゃくちゃやってたんだけどよ、今はコンプライアンスもうるさいからね」
大将「世界平和にもコンプライアンスがあるんですか?」
ウルトラマン「そらそうよ。昔は怪獣が来たらみんな俺らの事を頼りにしてくれていたんだ。けどよ、最近はみんな慣れて来たせいか『倒すのに時間掛けすぎ』とか、『うるさいから夜中に暴れるな』とかクレームが来るようになってきたんだよ」
大将「そうだったんですか。大変ですね。。」
ウルトラマン「平和ボケなのかわかんねえけど、嫌な時代になっちまったもんだ」
大将「時間掛けるなって言われても、最大でも3分間なんだから別にいいんじゃない?って僕なんかは思っちゃいますけど」
ウルトラマン「あ、それは嘘。そういうウルトラマンもいるけど、最近はテクノロジーが進化して、10分くらいまで動けるようになったんだ」
大将「そうなんですか?」
ウルトラマン「ちなみにこれ、内緒ね。怪獣側はまだ3分が限度だと思ってるから。その方が有利に戦えるからね」
大将「ヒーローとは思えない発言だな。。でも世界平和を守る為にはそういうのも必要なのかもしれませんね」

ウルトラマン、料理を食べ終え、帰ろうとする。

大将「ありがとうございました。あの・・・」
ウルトラマン「ん?」
大将「実は今日で店を畳むんです。だから、あなたがこの店の最後のお客様になります」
ウルトラマン「そうだったのか。全然知らなかったよ」
大将「今日が初対面ですもんね」
ウルトラマン「こういう昔ながらの店が消えちまうなんてよ、世の中上手くいかねぇよな」
大将「無理に常連キャラを演じてくれなくても大丈夫ですよ。逆にあなたが来てくれて、いい思い出になりました」
ウルトラマン「そっか。俺にもこういう喜ばせ方が出来るんだな。戦うだけじゃ、世界平和なんて叶えられないんだ。ありがとう、俺もいい時間を過ごせたよ」

突然、ウルトラマンの持っていたスマホが鳴る。

ウルトラマン「はい、ウルトラマン三課」
大将「三課だったんだ。。」
ウルトラマン「何?○○区で怪獣が暴れている?わかった、すぐ近くにいるから今から向かいます」
大将「あ、あの。何かあったんですか?」
ウルトラマン「こんな時間に怪獣が来ちまった。たぶんまだ研修中の怪獣だろう。サクッと倒して、すぐに戻ってくるよ」
大将「あ、あの。お会計の方は?」
ウルトラマン「俺が帰るまでは、まだあんたはこの店の大将なんだよな?」
大将「はい。一応そういう事になります」
ウルトラマン「じゃあ3分後にまた会おうぜ、大将」

ウルトラマン、勢いよく店を出ていく。

大将「ウルトラマ〜ン!」

大将、店に戻って電話を掛ける。

警官「はい、110番です。事件ですか?事故ですか?」
大将「事件です。今食い逃げされました。住所は○○区の〜〜という店です」
警官「わかりました。すぐ向かいます。男の特徴は?」
大将「全身ウルトラマンの格好をしています」

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