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「はじまりはいつも雨」の好きなところを思う存分語ります。

30年前の今日、1991年3月6日にひとつの名曲が誕生しました。

その曲のタイトルは、「はじまりはいつも雨」。

CHAGE and ASKAのASKAがソロとして発表したこの曲は、もともとテレビCM用に作られた曲でシングルとして発売する予定はなかったそうですが、一気に人気に火が付き、急きょリリース。
あまりの売れ行きに、生産が追い付かず、116万枚のセールスを記録したにもかかわらず、チャートでは一度も1位にならなかったようです。

そんなエピソードも、この曲の雰囲気や奥ゆかしさみたいなものに繋がっているような気がしています。

この曲を聴くといつも優しい気持ちになるのは、きっと多くの方に共通する感想ではないかと思います。
スーっと心に染み込んでくる感じ。
いつの間にか寄り添ってくれるような感じ。
前述の「奥ゆかしさ」その印象を形容してみたものなのですが、伝わるかな?


この曲の優しさは何処から感じられるのだろうと、本当に何度も何度も何度も何度も聴きこみました。
ここ数年で一番聴いたかもしれません。
すると迷宮のようにいろんな想いや推測が浮かんできて、書きたいことが散らかっていく一方でしたが、そこから自分なりにまとめたものをこの機会に書いてみようと思います。

●メロディーが神過ぎる
まずなによりも耳触りの良いメロディー。
別に音楽の専門家でもなんでもないので専門的なことが言えるわけではないのですが、歌いだしからサビに向かい徐々にエモーショナルになっていく感じ。特にBメロのキャッチーなところを過ぎて、サビ前の「誰よりも」の伸びやかなロングトーンにくると、グワーッと聴き手の感情も盛り上がってきます。
でも、サビではそんな聴き手をたしなめるように落ち着いたメロディー展開になるんですよね。
なんていうんだろう、映画音楽のような心地よさ、さりげなさを感じ、曲全体の安らぎを象徴するようなサビだなと感じます。

●編曲も神過ぎる
この曲は、ライブで披露されるとき、必ずと言っていいほどイントロが流れた時点で拍手が起きます。
それくらいファンの間では馴染み深いイントロで、これ以外には考えられないというくらい、「はじまりはいつも雨」のイントロです。
これはまさに、澤近泰輔さんの編曲の偉大さですね。
また、1番が終わった後のギターソロ、間奏の無限の広がりを感じさせるような展開、どこをどう取っても完璧な編曲。
ひとつの上質な映画を観ているような、そんなストーリー性を帯びた曲となるための、間違いなく大きな要素を担っていると思います。

●歌詞が素敵
いうまでもなく歌詞が素敵です。
これまで雨は多くの曲のテーマに使用されてきたと思いますが、多くの場合別れや孤独の象徴のように扱われてきたように感じます。
しかし、「はじまりはいつも雨」では僕と君とをつなぐ、象徴としてポジティブな使われ方をしています。
もともとASKAは「水の部屋」、「river」、「水ゆるく流れ」など、水の表現に長けたアーティストだと感じているのですが、その真骨頂とも言えるのがこの曲です。

君を連れ出す度に 雨が包んだ

雨をこんなに優しい表現で使ったアーティストはそうそういないのではないでしょうか?
もう一つは、ひらがなです。
この歌の中では「はじまり」「しあわせ」「ひとつ」「ふたり」という感じで表現できるものを平仮名で表記しています。
ひょっとすると深い意味なんてないかもしれませんが、このひらがなの柔らかさが、ボーカルの柔らかさにもつながっているのではないかと感じるのです。
終始感じるこの曲の優しさが歌詞からも感じられてくるのです。

●行間の妙が凄い
ASKAの歌詞には行間を読ませるものも多いのですが、この曲もその一つだと感じています。
この曲の場合は、曲の風景を想起させる行間とでもいうのでしょうか、曲の歌詞が進むほどに、目の前に登場人物と景色が見えてくるかのように浮かんできます。
中でも個人的に好きなのは、

ふたり 星をよけて

いつも思うのですが、曲のテーマは「雨」なので星が見えるということはその時点では雨は降っていないんですよね。
僕はここを、ふたりが雨を待っているいるようなイメージでいつも聴いています。
今夜君を誘うから、いつものようにしあわせな時間になるように、雨に包んでほしいなという気持ちで、空を見ているのだと思うのです。
星が夜空も素敵だけど、ふたりを繋ぐのは雨だから、星をよけて雨を呼んでいる姿を浮かべています。
ロマンチックだなぁ。
こんなに優しい雨ってありますか?きっとないです。
そんなどこか微炭酸のような恋の味が行間に詰められているように感じます。
あくまで、僕の個人的な読み方なので、全然ズレている捉え方かもしれませんが、聴き手にもれなく幸せなイメージを与えることそのものが、この曲が名曲として30年も愛され続ける所以であることは間違いないでしょう。

つらつらと書きたいことを書きましたが、「はじまりはいつも雨」が大好きっていうことが、読んでいただいた方に伝わればそれで僕はもう満足です。


最後に、リリース30周年を記念して「はじまりはいつも雨を語ろう」という企画を発案してくれたs.e.i.k.oさんと、企画に賛同して参加したファンの方々、ファンではないけど興味をもって読んでいただいた方々、これを機にこの曲を耳にしてくれた方々、すべての関わった方に感謝を伝えたいです。

人それぞれの愛の形はあれど、「はじまりはいつも雨」が30年愛されてきたこと、そしてこれからもなお愛されつづけていくであろうことがうれしく感じます。
この曲に出会えたことは、僕にとって大きな宝物です。

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