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特別展「中尊寺金色堂」

 中尊寺金色堂が建立されたのは平安時代後期。
 「当時、東北地方では大きな戦(いくさ)がふたつありました。その犠牲者を敵味方の分け隔てなく慰霊申し上げる気持ちが込められているのではないかと思っています」と天台宗東北大本山・中尊寺貫首(かんす)の奥山元照(おくやま・げんしょう)さんは2023年7月4日(火)に語った。
 「奥州藤原氏の平和への願いを感じとってもらえればありがたいです」。
 2024年1月23日(火)から同4月14日(日)に東京国立博物館(東京都台東区上野公園)本館特別5室において開催される「建立900年 特別展「中尊寺金色堂」」の報道発表会での発言である。

天台宗東北大本山中尊寺・奥山元照貫首


 中尊寺金色堂は1124年(天治元年)、奥州藤原氏初代清衡(きよひら)公によって上棟された。極楽浄土の有様を具体的に表現しようとした清衡公の願いによって、往時の工芸技術が集約されたお堂だ。
 東京国立博物館副館長の富田淳(とみた・じゅん)さんは「東北地方屈指の古刹で、藤原氏の栄華を今に伝えてくれる世界遺産平泉の構成要素としても世界に名を知られている金色堂。建立900年を記念した特別展です」。
 「藤原清衡自身が今なお金(きん)の棺で眠ります。金色堂内の重要な仏像11体全てを公開します。現地で見るのとは違った経験が出来るのではないでしょうか。祈りと美の空間を体験してもらえればと考えています」。

東京国立博物館・宮田淳副館長


 東京国立博物館学芸研究部東洋室主任研究員の児島大輔(こじま・だいすけ)さんによると、この展覧会の主な見どころは2つ。まず、金色堂中央壇の国宝仏像11体をはじめてそろって寺外で展示されること。そしてもう一つは、8KCGによって会場のモニターに金色堂を原寸大で再現すること。
 「奥州藤原氏の栄華の結晶で京・鎌倉をも凌駕した平泉文化をどうかご堪能ください」と児島主任研究員は語った。
 NHKメディア総局第一制作センター統括プロデューサーの国見太郎(くにみ・たろう)さんは8KCGという技術を活用して原寸大の金色堂を大型ディスプレイの再現すると説明した。
 詳細については「レーザー光、3Dスキャナーによって形状を計測するとともに、一眼レフで360度から撮影し”フォトグラメトリ”という技術で3KCGを制作することによって、文化財の3Dモデルが誕生して実物の質感を再現します」と国見統括プロデューサーは説明した。
 8Kディスプレイは横幅が7.2メートルで、画素密度は0.9ミリピッチと世界最高水準で、原寸大の金色堂が目の前に現れるという。

 金色堂は西を背にして東を向いて建っている。堂内には中央、西北隅、西南隅の3か所に須弥壇が設けられ、それぞれの内部に奥州藤原氏四代が今も眠っている。中央壇には藤原清衡が眠ると考えられている。この中央壇の壇上に安置される11体の国宝仏像すべてが公開される。
 そのうちのひとつが阿弥陀如来坐像(あみだにょらいざぞう)。お腹の前で定印を結んでいる。あとは勢至菩薩立像(せいしぼさつりゅうぞう)と観音菩薩立像(かんのんぼさつりゅうぞう)。

 阿弥陀三尊の両脇に3体ずつ安置される6体の地蔵菩薩立像。阿弥陀三尊と六地蔵のセットは、六道輪廻からの救済を願う当時の往生思想を体現したものと考えられている。頬がやや引き締まっていることから、阿弥陀三尊像よりも後の時代につくられたようである。
 あと公開されるのは、大きく腰をひねって手を振り上げる躍動感にあふれた持国天立像(じこくてんりゅうぞう)と増長天立像(ぞうちょうてんりゅうぞう)の二天像。引き締まった面貌と大きく翻る袖の表現が見どころ。


 開館時間や観覧料金は未定。決まり次第ホームページにアップされる。公式サイトはhttps://chusonji2024.jp/。お問い合わせは050-5541-8600(ハローダイヤル)まで。

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