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『キカイダー01』の世界大犯罪組織シャドウの作戦は、なぜ必ず失敗するのか?

『キカイダー01』に登場する悪の組織は「世界大犯罪組織シャドウ」である。ビッグシャドウ率いるこの組織は、ロボット軍団を擁し、月面基地も持ち、タイムマシンさえ開発。これほどの大組織なら、世界征服もいい線まで行きそうである。
 ところが、実際にはぜんぜんダメなのだ。それはいったいなぜか? ここでは典型的な二つの作戦を見てみよう。

◆悪の郵便局乗っ取り作戦!

『キカイダー01』の第38話「必殺の仕掛 血闘三つ巴!」で描かれたのは「郵便局乗っ取り作戦」。それは、次のような作戦であった。
 ①松山町郵便局を襲撃して閉鎖させる
 ②近くの荒れ地に、新たな松山町郵便局を作る
 ③手紙の内容を書き換えて、配達する
 作戦を立てたハカイダーによれば「本物の手紙を破り捨て、ニセの手紙を配達し、人間の信頼感をズタズタにし、世界を大混乱に陥れる」のだという。
 なるほど、確かにひどい犯罪(注1)だ。刑法や郵便法などの法律にも違反しまくりだし、請求書や契約書などを書き換えたりすれば社会は大混乱に陥るに違いない。
 とはいえ、手紙の内容を書き換えるというのは、大変ではないか? まず、本物の手紙を読んで用件を理解し、差出人と受取人の人間関係や近況を把握しなければならない。そのうえで、筆跡を忠実に真似てニセの手紙を書く必要がある。当時、ほとんどの手紙は手書きだったから、モノスゴク手間がかかったと思われる。
 また、手紙を書く人には、こだわりというものがある。決まった封筒、お気に入りの便箋、愛用している筆記用具。本物に見せかけるには、それらを入手せねばならん。
 さらに、請求書や契約書など重要な文書には印鑑が押されている。これも偽造したのだろうが、印鑑の偽造は筆跡の真似より大変だったのでは……。

電子『シャドウのダメ作戦』図A

量の面でも問題だ。番組が放送された1973年、全国の郵便局はおよそ2万1千局。集配された郵便物は140億通(注2)。1局あたり1日平均1800通である。右のような作業には、1通あたり1時間はかかるのではないか。すると24時間体制でも76人もの人員が必要だ。
 さて、これほど苦労して、期待した成果は得られたのだろうか?

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