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マツタキなる人々を訪ねて⑤女神の聖水の守り人
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山本渉さん
岩科地区に住む山本渉さんは、
「寸合(すごう)の水」と名のつく湧き水の取水地を平成18年(2006年)にひとりで整備し、
現在まで守り続けている。
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山本さんが人生をかけて守っている湧き水は、国柱姫命という女性の神様を祀る国柱命神社が背負う山道の中腹から湧き出ている。
この山道は、
かつては岩科と岩地を結び、
通勤や通学に使われていた。
山道ではあるが人通りは多く、
昔から美味しい湧き水として山道を行き交う人々の喉を潤していたという。
地元では子供も大人も「おまんこ水」と呼んでいたそうだ。
水が岩の割れ目からちょろちょろを流れる様子を例えたのだろうか。
神社に祀られる国柱姫命と関係あるのではないかと山本さんは考えている。
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寸合は「ちょっと」の意味で、
水は、
年間通して16度の湧き水である。
かつて村長が最期の水として病床で求めたのだという。
たしかに、
癖がなくすっきりとして美味しい水だ。
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しかし
、広い道路が整備され、
山道を通る人がほとんどいなくなり、
おまんこ水のことも知る人が減っていった。
美味しい水ブームで、
水が観光資源になる時代が来たが、
自分のところのおまんこ水の方が美味しい、
多くの人に知ってほしいと感じ、
平成18年、
一人で約300mパイプをつなぎ、
山の下まで水を通し、
畑の中に誰でも使える水汲み場を作った。
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退職前は理科教員をしていた山本さんは、
水質検査も自腹で行い、
安全で美味しい水ということを証明した。
水汲み場には、
「寸合の泉」便りを月に1回発行し、
水を通じたコミュニケーションを行った。
便りは平成26年まで100号が発行された。
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山本さんに源泉まで案内してもらった。
神社から湧き水までは徒歩10分くらいだが、幅1mくらいのなんとか道とわかる程度で、ほとんど通る人もいないので、
荒れてしまっている。
山本さんに木の枝を切ってもらい、
杖としながら進む。
看板はあるが、
山本さんと一緒でないとたどり着けないかもしれない。
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湧き水の場所はイノシシなどの被害を防ぐために金網で厳重に塞いでいる。
ここから麓の庵まで4メートルのパイプ72本をつなぎ、
288メートル下まで水を送り届けているのだ。
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「水に愛されていると感じている」と語る山本さんは、
生まれも育ちも岩科地区。
おまんこ水の湧く山は遊び場で、
メジロ取りや山芋掘りをしたという。
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いつまでできるがわかないが、
この水の美味しさを多くの人に届け、
守っていきたいと語った。
情報は取材時(2017年11月)のものです。
聞き手 : 住麻紀
撮影 : 行貝チヱ
(松崎町「絲」concept webサイトより転載)
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