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2023年全国大会②

2023年9月9日(土)

前日同様、朝4時に目が覚める。

しばらくベットの上でゴロゴロしてみるも退屈になり、TVをつけてみると、ラグビーワールドカップが行われていた。

前半が終了したところで、やはり気持ちが高ぶり落ち着きが無くなり、気を鎮めるために散歩へ出かけることにした。
外はまだ暗く人通りもない。

静かな場所を歩くのも、知らない土地を散策することも大好きだ。
歩くスピードだからこそ見つけられる街の風景を、独り占めできたような気分になる。

しばらくすると、人のいない時間帯にも関わらず反対車線の歩道を賑やかな、派手な服の集団が歩いてきた。

もしやと思ったら向こうから大きな声で話しかけてくる。
スワローのばーばたちだった。もう帰ってきたということは、もっと早い時間から散歩してきたということ。

年寄りの朝は早い。

井上馨や中原中也の生誕地、明治維新の史跡、歴史が好きな私にとって長州はパラダイス。

前日の開会式会場に到着した時も一番最初に幕末の志士たちの看板に目が行った。

~「明治維新策源地 山口市」時代の変革 うねりは この地から~

文久3年、長州藩主毛利敬親公は、藩庁を萩から山口へ移しました。このことがきっかけとなり、山口は明治維新の策源地となりました。
維新三傑の木戸孝允、西郷隆盛、大久保利通は、安部家の離れ「枕流亭」で薩長連合の密議を重ね、長州ファイブで知られる伊藤博文、井上馨、また久坂玄瑞、高杉晋作らは、萬代家の離れ「十朋亭」で天下の大事を語り合いました。
三条実美や坂本龍馬、大村益次郎をはじめとする多くの志士たちも出入りし、山口は倒幕運動と維新の変革を成し遂げるうえで大きな役割を果たしました。

と書いてある。
あー、試合でなければ史跡巡りをしたかった。帰りの観光でもきっと全員興味ない。
歴史のロマンを楽しむ若者はうちのチームにはいない。

さて話を戻す。
我々の初戦は第2試合のため少々出発がゆっくりだった。
6:30から朝食を摂り、7:30出発とした。

出発までの部屋で、なんとなくのゲン担ぎで昨日もらったスワロークッキーを頂いた。
気持ちのこもったものは実際の数倍美味しい。
みんなは勿体なくて食べられない!と言っていたが、食べずに賞味期限が切れたり、持って帰る間に割れる方が悲しい。 

少し早めにロビーへ降りると、ばーばたちがバスの前でたむろっていた。飲み物の準備、氷の準備、昼食の準備、全部やってくれていた。

昨年買うのに苦労した氷のことばかり気にして、昼食のことなどすっかり忘れ去っていた私は、心の底からばーばに感謝した。
本当にいつもいつもお世話してくれてありがとう。

グランドへ到着すると、ひとまず荷物を下ろし、日陰を探して荷物をまとめる。
ばーばに荷物番を頼み、若者と一緒にグランドの外周を散歩することにした。

会場は山口マツダ西京きずなスタジアム第2球場。

野球場の左右をソフトボール会場として2面取れるようにされており、野球のバックスクリーン裏でサインの再確認と簡単なミーティングを行った。

とにかく打てなくても、ミスをしてもいちいち振り返って落ち込まないこと。
反省は夜の宴会でしましょうというようなことを伝えた。 
誰だって失敗したらその瞬間は凹むけど、それを引きずっていい結果を出せる人はいない。
引きずらない方が難しいことはわかってはいるけど、言っておかなければと思った。

もう一つはとにかく攻める気持ちを持ち続けること。先攻を取って、攻める姿勢を緩めないこと。

キャプテンは先発ピッチャーに確認しないと!と言ってきたが、私はこれだけは譲れなかった。ここ1カ月考えていたことなので。

あとはいいイメージで臨むこと。
出来なかったらどうしようではなく、できる自分をイメージして、活躍する自分の姿をイメージして試合に挑もうと。
そして万が一失敗した時こそ声を出そう、誰かがその失敗をフォローしてくれるはず。

やみくもに声を出す文化はうちのチームにはない。結構みんな静かな方だ。かく言う私も誰かをいじるとき以外は黙って試合を見る方だ。

「声出しとは何ぞや」そう考えた時、「声を出せ」ではなくて「言葉を出して届けろ」という言葉を見て、その通りだなと思った。

相手に届けたい言葉を出す。
言葉には力がある。
チョイスする言葉、いつ、誰に掛けられた言葉かも大きい。
自分がミスしたら、「みんな助けて!みんな打って返して!」でもいいし、「私が取り返す!」でもいいのだと思う。

私が仙台育英の須江監督のように、バスケ日本代表のトム・ホーバスヘッドコーチのように素敵な言葉を掛けられたらいいのだが、なかなかそんな力は持ち合わせていない。
なんなら伝えることは下手な方だと思う。
だからこうして頭の中を整理しながら文章で書くことが多い。

本人に直接メールやLINEで送らず、読んでいるかどうかもわからないブログで書くのは単なる自己満足でしかないが、結構みんな読んでくれているようだ。

グランド一周の散歩を終えると、練習場所が空くまでブルーシートを広げてストレッチをすることにした。
プロ野球トレーナーによる指導動画を見ながらのストレッチは、ストレッチというより筋トレや!とブーイングもあった。
しかし、なんだかんだできないのが悔しいらしくみんな頑張った。

青木ばーばは「やり慣れんことして怪我するぜ」と何度も言ってきたが、怪我しないためのストレッチなんよと言い聞かせた。

そうこうしているうちに第一試合が始まり、練習場所が空いたので荷物を移動する。
いつものアップを終え、縦ノックまで済ませてからピッチャー陣の球を受けに行った。
あゆみんもゆみちゃんもいい球が来ている。
何度もミットの芯で取れなくて綾乃と2人でその都度謝った。

試合時間も迫ってきたので、3塁側のベンチ近くへ荷物を移し、日陰に入って試合の行方を見守る。今日勝ち上がれば当たる相手ではあるが、そこまで考える余裕はない。
というより、先のことばかり考えた試合はいつも足元をすくわれてきた。

心を無にして試合を眺めていた。

我々のやるべきことは目の前の相手に全力で向かっていくこと。
それしかない。

キャプテンが呼ばれ、オーダー用紙の提出とコイントスが行われた。
いつも表裏を外す右田キャプテン、今回も外したのか相手が先に選んだのかは定かではないが、結果オーライの先攻に決まった。

ベンチ入りすると、自分たちが使いやすいように椅子や机をセッティング。
用具の検査時に資格確認も行われ、今年からは資格証に加えて写真入りの身分証明書が必須となった。

相手のフィールディングを見ながら、グラブ捌きや肩を確認する。
自分たちはいつものボール回しからスタート。
キャッチボールが全ての基本、キャッチボールを大切にするようこの1年ずっと言い続けてきた。強く、速く、低く、丁寧に。

大事な5分を削ってでもやる意味があるという信念がある。
ケンコーボールは良く跳ねるしグランドは固め。色々な確認をこの5分で行わなければならない。

試合開始前に監督が呼ばれ、オーダーの最終確認、審判さんの紹介を受ける。
9月も半ばとは思えぬ暑さ、審判さんたちには感謝しかない。

選手の集合は久しぶりにホームを挟んで整列した。
私はベンチ前に1歩出てみんなの背中を見守る。初めてみる景色はいい景色だった。
私の背中には、愛媛から駆けつけてくれた多くの親御さんが居る。
敢えて振り向かない。
皆さんの顔を見たら私が緊張してしまいそうだったから。

初戦の相手は京都府代表、佐川急便京都ソフトボール部さん。
言わずと知れた、JDリーグSGホールディングスのお膝元。

もちろん実業団経験者がいらっしゃるわけで、怖さは十二分にある。
だけどここで勝ったら、草ソフトチーム凄いやん!となる。

我々は挑戦者だ。