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戒めと期待

今日は7月31日、全国大会まであと半月となった。

6月9日と7月14日に予定していた松山商業高校さんとの練習試合は、残念ながらともに雨天中止となった。

7月26日は伊予地区春季大会
メンバーが揃わなかったとはいえ、私が記憶している限り初の敗北。
過去2試合のリベンジとばかりに竹内投手の調子が非常に良かったので、4対1とリードして迎えた最終回はほぼ勝利を確信していた。
ツーアウトランナー2、3塁、ピンチながらもアウトあと一つで終わり。
出番を終えてやれやれという気持ちで、なんとなく試合の行方を眺めていると、迎えたバッターに初球を打ち返され3ランホームラン、同点とされ最後の攻撃では三者凡退で同点のままゲームセット。
抽選の結果6-3で敗北した。悪い流れはくじ運さえも遠のくものなのか。
先方の抽選結果確認で、初っ端から4つ連続〇が出た時にはもう笑うしかない。
早々に敗北を悟った。

あとからスコアをみると、その打者はたまたまアウトになっただけでよい当たりを2本同じところに打っていた。
フェンスの無い大会ならではの守り方で、2失点まで良しとするポジショニングを指示しなかったベンチワークのせいの敗北だと猛省した。

7月28日は練習試合
対戦相手は幾度となく雨とコロナに振り回され、なかなか試合をすることが叶わなかった西条高校さん。
グランド探しに苦慮したものの、無事快晴(というより猛暑)でようやく3年ぶり?5度目の正直で試合をすることができた。

エースは噂に聞いていた100km/hを投げる好投手。
チェンジアップを磨いてより良くなったとも聞いた。
全国前にこの速球を打席で見られることが大いに意味があると考えていた。
好投手ならば1試合のうちにヒットが2、3本出ればいい方。
それでも完全試合でなければ勝てる余地は必ずある。

しかし、結果は散々たるものだった。1試合4エラーでは勝てるはずもない。
全国レベルでは一つのミスが命取りとなる。
これでもか!とぼろぼろの守備に、せっかく相手してもらった西条高校さんと、暑い中集まってくれた審判さんに心底申し訳ない気持ちになった。
バックネット裏に集まった親御さんたちにも、こんな大切な時期に不甲斐ない試合を見せてしまいなんとも心苦しかった。

この日が全国に向けて最後の練習試合。
本番のつもりで臨むようにと言ったものの、もう最後の方には大会ならコールド負けで終わっていた状態。
もちろんパワーもスピードも高校生には及ばないが、結果だけを見ればうちの攻撃は3安打1得点。簡単に打ち崩せない相手にはこんなものだと思う。
一方の守備、被安打5で10失点はチーム史上前代未聞。
決して気が緩んでいたとは思いたくはないが、愛媛県代表としての責任を全員が再確認しなくてはいけない。

生涯部門ではあるが、私は様々なことを犠牲にしてこの大会に臨む準備をしてきた。
あくまで私がやりたくてそうしてきた。
選手のみんなに全てを犠牲しろとは微塵も思っていない。
ただ、昨年の全国大会で敗れた後に、1年間頑張り続けられなくてもいいから、せめて直前の半年だけは何とかソフトボールに重きを置いて頑張って欲しいと伝えた。

あの日負けて悔しかったんじゃないの?勝ちたいんじゃなかったの?

個々がソフトボールに向き合う気持ちの強さはどれほどなのか。
私はこうして毎年、生涯スポーツと競技スポーツの間で悩み、モチベーションの乱高下を繰り返しこの時期を迎える。
北海道ということで観光が楽しみな部分もこれまで以上にあるけれど、やはり私は勝ちたい。勝ち上がりたい。勝ち上がる喜びに勝る楽しさはないと思っている。

ほんの少しの努力の積み重ねでいいから、最後の悪あがきをして欲しい。
毎日四六時中頑張れなんて求めていない。
練習の時間にガッと集中して、日常の暇な時間に少しだけ自主練するだけでいい。
練習に来れなくても、自分ができ得る最大限の努力をして欲しい。
力を出し切って負けるのと、力を出し切れずにミスで負けるのでは大きな違いがある。

あの舞台で勝つことは、今目の前のちょっと楽しいことより確実に楽しいし嬉しい。
必死でやった先の喜びは何物にも代えがたい。
せっかくその力があるにも関わらず、チャンスをふいにしてしまっている気がしてならない。

この練習試合はようやく西条高校さんと対戦できるとなったものの、グラウンドに空きが無く困っていた。
この時期どこもグランドは取り合いで確保が難しい。
岡野先生から「どこかグラウンドないですか?」と連絡がきたときは、私もあちこち探したが空いているはずもなく、困った末に伊予協会の横山さんに相談したところ、手配に奔走してくれて伊予銀行グラウンドを抑えて下さった。
とべスワローのためにとわざわざ申請書を作成して提出して、しかもこの猛暑の中審判さんを5名も集めて下さり、朝からグラウンド作りもしてくださった。
試合球は大会使用球のナガセケンコーを準備、本番さながらの用具点検に試合進行、片付けの手伝いまで何から何までお世話になった。
これは決して当たり前ではない。感謝してもしきれない。

選手の親御さんや、今回遠征に行けないコーチの美咲、たくさんの人から全国大会頑張ってねと寄付をいただいた。
思い起こしてみれば、先月北条北中へ行った時も、当たり前のようにナガセケンコーを用意してくれて、うちのやりたい練習に中学生たちがしこたま付き合ってくれた。

趣味の世界でやっているソフトボールだけれど、練習も試合も大会も、数えきれないくらいの人たちが裏で動いてくれて私たちは楽しくソフトボールができている。
そのことを決して忘れてはいけないし、それこそが先ほど述べた”責任”だと思うのだ。
気軽に北海道へ遊びに行く感覚で試合に向かうのは、その多くの方々の協力を踏みにじる行為。
頑張って力を出し切ったけど力及ばず敗れた後は、目いっぱい北海道を満喫しよう。
何事もメリハリが大事。

この直前での屈辱的な敗北を、しっかりと受け止めて反省し前を向かなくてはいけない。
負けたことが屈辱ではなく、負け方が屈辱。
我々が全国大会でよいパフォーマンスができるよう、協力してくださった多くの人の気持ちを裏切ることはできない。
こんなにも多くの人たちに応援され、仕事を休んで北海道にまで行って、ふがいない試合だけは絶対にしてはいけない。

これは負けてはいけないという意味ではなくて、ベンチにいるメンバーも含めてチーム全員で勝ちへの執念を持ち、チームが勝つために自分ができることを自ら考え、全員が同じ熱量で同じ目標に向かう姿が見せられるかどうかだと思っている。それが自覚と責任。
結果は勝った方が強かったというただそれだけの事なので。

現体制で3度目の全国大会。
今年は特に、心を鬼にして勝ちに拘って采配をしていこうと思っている。
そこは選手のみんなにどうか理解をして欲しい。

練習試合2試合目は先方が1年生中心だったこともあり、自分たちのペースで試合をすることができた。
その中で確認出来たこともたくさんあって、使える作戦、リスキーな作戦、打順の再検討、先発投手などなど私の中で腹が決まった。

全国までの最後の試合で、これほどにコテンパンにやられて良かったのかもしれない。
これだけどん底の試合をしたら、あとはもう浮上するのみ。
選手同士の情報共有、立ち位置や構えの工夫、ただ振り回すだけでないアイデア、四球を狙うカット技術、ほんの一瞬の隙を逃さない走塁と観察眼。
個人がチームのためにできることは何か、グランドに立っていないときに準備できることは何か。人それぞれに役目があって、その役目はみんな異なる。今一度考え、反省し準備をしよう。

プレー面では偉大な方たちに教わったことを今一度思い起こして、あの時学んだことを実行できたか確認しよう。
毎回意識して守れていた?意識して打席に立っていた?

泣いても笑ってもあと半月。
本番では勝ちたいという思いの強いチームが勝つ。執念を見せていこう。
目標のベスト8を達成できる力は間違いなくある。
あとは勝ちへの執念だ。

打ちたいと気が焦ることもあるだろうが、まずは目の前の1球に集中。
守備でも手堅くいきたくなる気持ちもあるが、丁寧さはいるけど大事にいきすぎず、そこも邪念は捨てて目の前の1球に集中。

いつも通りの平常心で。
それでいて積極的に。負けることを恐れない勇気をもって。
やみくもに猪突猛進するのではなく、これまでの練習に裏打ちされた能力と技術に基づいた冷静さと熱い前向きの気持ちをもって。

その1球のボールの行方に何十人という大人が一喜一憂していく。
その積み重ねの先に、表裏21個ずつのアウトがあって、悲喜こもごもがある。
文字にしてしまえば簡単であっさりしているけど、この中にたくさんの要素が詰まっているからソフトボールは面白い。

調子を落としている選手は全国に向けてパワーをため込んでいる最中。いまは助走中。
調子のいい選手はこれからさらに上がっていける兆し。
反省するだけした後は、不安に思う気持ちを全部捨ててとにかくみんなで楽しむことに全力を注ごう。

ここぞの時はみんなで間を取って確認しながら丁寧に。
ミスってしまったら本人が一番元気に前を向いて、全力でピンチを食い止める。
誰かが食い止めてくれたら心からのお礼を伝えよう。
そして試合中に過去は振り返らない!

自分自身を信じて自信をもって、そして仲間を信じて。
選手のみんながやれば出来る子だと私は知っている。
ピッチャー以外は野手も打者も受け身のスポーツ。
相手に合わせなければいけない難しさがあるけれど、そこが面白い部分でもある。
二度と同じシチュエーションに巡り合えないところが奥深い。
だからこそ”絶対”もない。
格上に勝つチャンスだってどのチームにもある。

仮に7回裏、ツーアウト満塁、1点差の試合があったとする。

リードしている方の守備側ならば、
「自分のところに打球が来て失敗したらどうしよう。サヨナラ負けしてしまうかも」
「四死球で同点のランナー返してしまったらどうしよう。」
と考えてしまったり、
リードされている方の攻撃側ならば、
「ここで自分が打てないと負けてしまう」と追い込まれてついついボール球や変化球を空振りとなりがちではないだろうか。

結果に囚われた瞬間に急に不安になり、考えても仕方がないとわかっているのに、うまくいかない未来、失敗するかもという恐怖で急に動きが硬くなりミスをする。
まさに負のループ。
失敗したらどうしよう、出来なかったらどうしようと考えると、そう考える自分によってますます緊張して体が硬くなる。
普通の場面ならなんてことのない場面であり得ないミスを犯したりもする。

逆にこの人のメンタルどうなってんの?っていう人は、先のような状況でも投手ならバシバシコースを付いてくるし、打者なら粘りに粘って出塁したり、走者一掃のタイムリーヒットを放つ人もいる。
その違いは、いかに集中しながら平常心を保てているかどうかではないだろうか。

今自分ができることは「結果」や「他人」に囚われることなく、ただこの瞬間、この目の前の1球に集中することだけ。

言うは易しで、実行することは難しい事ではあるけれど、ぜひ意識してみて欲しい。

マインドフルネスと呼ばれる状態をご存じだろうか。
意味を検索してみると、過去や未来ではなく、今ここで起こっているものごとを体験し、ただ目の前のことに集中する状態。
今、この瞬間の自分の心身・周りの状況に集中し、自分の思考・感情・行動などについて善悪の判断や評価をせず、ありのままを観察する方法。
と書いてある。

他者が起こした失敗に評価や判断を一切せずに受け入れ、今この瞬間の自分の心身・周りの状況に集中し、自己認識力を高めた状態をマインドフルネスと呼ぶのだそう。
まさにこれが、「目の前の1球に集中する」という状態ではないだろうか。

以下はネットで見つけた話だが、有名なスポーツドクターが、女子レスリング最強と呼ばれた吉田沙保里選手の「脳波」を調べたというもの。

通常の選手は「集中状態が高まる時は、リラックス状態が低い」らしい。

しかし吉田選手は、たとえオリンピックの決勝だとしても、
「集中状態が高まる時も、リラックス状態が高い」状態を保つことが分かったそうだ。

集中しているのにリラックスしている。(ゾーンに入っている状態)
なぜそのような脳波が起こるかを分析すると「今この瞬間を楽しむことを忘れないから」ということだったらしい。

痺れる場面も緊張も、オリンピックの大舞台も、その置かれた環境全て、この瞬間を楽しもうとしているということ。
よく、オリンピックに向かう選手が「楽しんできます!」と言って叩かれる光景を見てきたが、一流アスリートの「楽しむ」という意味は、いわゆるエンジョイではなくてこういう意味で「楽しむ」なのだと思う。

他人の評価や結果から解放されているときこそ、自らが求めている結果に近づく。
過去・未来・他人・評価・結果ではなく、「今ここ、自分」に集中する。
「この一球は絶対無二の一球なり」と言われるように、その1球に悔いのない心を込める。

パリ五輪をはじめ、ここ数カ月様々な競技の世界大会が行われている。
それらを見ていて思うこと。
あまり注目されずいると、案外気楽に試合が出来て良い結果も出やすい傾向にある。
もちろん根底には技術や努力があってこその結果だが。

逆に応援や支援、期待をしてくださる人が多く、事前に注目されてしまうと、勝たないといけない!と硬くなってしまって思うような結果が付いてこない。
技術や努力が相手に上回っていたとしても、その力が100%発揮できない状態に陥ることが起こり得る。

一流の中の一流選手は、マインドフルネスの状態を保ちながら試合を楽しみ、再び良い結果を残す好循環にハマっていくのだろう。

もちろん期待されることや応援されることで頑張れることもあるし、予想以上の力が出ることもある。
支援されること、注目されることで責任が生まれる。
その責任を背負っての勝利が格別なのだろうなともしみじみ感じた。

どれほどの方が我々に期待してくださっているかは未知数だけれど、痺れる試合の報告をしたいし、願わくば勝利を報告したい。

チームが一つになれるよう、みんなでお揃いのものをと毎年何かしらプレゼントをしてくれるゆみちゃん、ななみん、なっちゃん。
今年は名前入りのタオルをありがとう!
3人が主となってみんなを勝利に導いてくれると信じています。
もちろん周りのみんなもついていきますよ!

みんなやればできる子!

勝利の喜びの中で、美味しい北海道の料理とお酒をいただこうではないか。そしてクタクタになって、笑顔で愛媛に帰ってこようね。