見出し画像

草食信仰森小説賞 中間ピックアップガチャ

 こんばんは、草くんです。信仰の森も期間が半分になりました。進捗はいかがでしょうか?

 それはさておき、現在森には素晴らしい小説が投稿されております。あまりにも粒揃いです。ピックアップしようとすると21作になってしまうのであみだくじを致しました。ご覧ください。

画像1

画像2

 数字は投稿順となっております。しれっと自作も入れたのですがダメでしたね無念です。

 それではあみだくじで選出された作品のピックアップを始めます!


3、告白/辰井圭斗
 
 エピソードタイトルの「信仰の総算」非常に素敵です。こちら信仰としてはストレートに主人公の持つ信仰、キリスト教徒という立場での神の話になります。……と思われましたが、会話という名の独白形式で神、信仰について語られ、徐々に姿かたちを違うものへと変化させていきます。
 この流れが端正で、辰井さんの美しい筆致もマッチし、どんどん引き込まれます。引き込まれていくのにラスト一文ではすっと離される、この対比がいいですね。信仰とは個々の持つ、胸に秘めた祈りの形か……と、浅学ながら神妙な顔になってしまいました。
 神の形が変わっても祈るのはやはり、自分を救いたいからかなと私は解釈しました。というのもこの主人公、どこか清廉なんですよね。多分教徒とはそれぞれ神の理想像が違うので、言うなれば全員間違っていて全員正しいのですが、主人公はそれを苦痛に思っている。その上で信じたいと祈っている。清らかな信仰に見えました。
 是非読んでみてください。腑に落ちる、という感覚を味わえるかと思います。


7、偶像のキモチ/川谷パルテノン

 これめっちゃいいですね……まず主人公のクズさと文章の勢いが本当に好きです。改行があまりなく壁となっているんですが、まったく気にならず読めるところが本当に好きですね、切ないけどすかっと爽やか。気持ちが良かったです。
 真面目な講評に入ります。設定が非常に面白いです。死んだ人間を仏様になるとはよく言いますが、本当に仏にした上で、仏にした人間は罰として地蔵菩薩の体をなし、人格がそのまま残っている。尚且つその人格とは相当のクズ。この仏からは考えつかない人格が内側にあるという舞台設定が開幕脳にがつんと入ります。続きを読みたくなる、非常に掴みが上手いです。
 偶像のキモチという、キモチを片仮名にすることによってのライトさが、この話がある面では死者との対面・一方的な対話であることを浮き彫りにしすぎず、爽やかな印象に繋がっているのかとも思います。
 語り口が軽妙で、読んでいて本当に爽快な小説です。是非朗読してみてください。


8、手記/私は柴犬になりたい

 柴犬さんこんにちは! お名前が長いため犬種だけ抜き出しての挨拶失礼致します。
 初見での率直な感想は哲学的だな……でした。信仰というテーマを掲げたので、宗教的・哲学的な作品も来るだろうと喜んでいたのですが、柴犬さんの「手記」はまさにそうで、散文詩でありながら哲学思想を組み込んであるように見受けられました。
 目がいくのはひらがなのみで構成されている段ですね。「わたし」から「あたし」と一人称が変わっているのが特に印象深く、一瞬別人格かと思ったのですが、深層心理あるいは氷山の一角と読ませて頂きました。人の深層に土足で踏み込む感覚になりぞくぞくしましたね……最高です。
 自分を俯瞰または傍観する視点を忘れられない人ほど生に苦しむ、というような印象を受けましたが、かといって死を選ぶわけでもない。これが非常に人間的で、作品全体を包む膜になっています。
 奇抜でいていてどこか原初の匂いがする貴重な読み口です。是非一読を。


16、雪が巡る地/山本アヒコ

 ちょっと講評というよりも感想文になってしまうんですが、なんでこんなに凄いのか言語化できずびっくりしました。魂で良い……と思わされた感じです。
 でもどうにか抽出してきたのですが、画が恐ろしくいいからだと気付きました。ただ、画が恐ろしくいいのにずっとモノクロなんですよ。一話目は薄暗い重たい灰色がずっと敷き詰められており、そのトーンを二話目も引き摺ります。主人公は妹を失い、探し、戦場に出るのですが、ここにも黒煙が上がる暗い画が続きます。主人公自体も渇いたモノクロな男です。
 話は後半に向けて一気に画面が暗くなる……と見せかけるんですよこの小説。なんだこれは。このまま暗くなっていって幕切れかと思いきや、晴れているのに雪が降ります。
 これ、ここなんですよ。画面が一気に明るくなってしかしそれは溢れんばかりの白色です。本当に最後まで画が良いです、ハレーションのような白ののあとはどこか宗教画めいてもあり圧巻でした。すごいですねこれは……。
 アヒコさんの信仰を皆様も是非読んでください。後生だ。


18、生まれた時に与えられ、死ぬまで離れないもの/神澤芦花(芦花公園)

 忙しい中でのご参加ありがとうございます!それだけでもう嬉しいです。
 ある男性二人の一生を、それもこの二人が濃密に関わった場面を切り取っての恋愛小説です。恋愛小説なんですが、どこか幻想小説の読み味を孕みます。筆致が上品だからかな、とにかく空気感がいい。「あなた」に語りかけるような文章がまた胸が詰まります。
 少しだけ出てくる主人公の元彼女の台詞が特に印象的で、信仰というテーマが集約された巧みな台詞です。未読の方のために抜粋は遠慮しますが、この台詞を軸にして更に物語が動きます。
 最後に主人公が持つものは形がないけど確かにあるしそれは主人公しか持てない、持つことの許されないもの……最後の最後に読者を更に引き込む手腕、本当にお見事です。
 是非読んでください、絶妙な読後感を味わえます。


 あみだくじによるピックアップは以上になります!あと16作くらい紹介したいのですが、待てができない犬過ぎるので自重します…。

 そしてこちらのピックアップは上記の通り完全ガチャで行いました。ピックアップされなかったから賞はない、ということではもちろんございませんのでよろしくお願いいたします!


 このように森はいいペースで植林がなされており、そのどれもが素晴らしい作品です。こちらでピックアップできなかったものも、それはもうそれはもうぜひ読んでいただきたいものばかりです!

 草食信仰森小説賞、ぜひとも足をお運びください!いい森です。

 森はこちらです。→草食信仰森小説賞


 それでは皆様!期間終了まで、改めてよろしくお願いいたします!!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?