Remember さくらインターネット

EQ2を引退した後、わしはダンジョン&ドラゴンズオンライン(DDO)を経てロードオブザリング オンライン(Lotro)を始めた。

この二つのゲームはレンタルサーバー運営を主業務とする「さくらインターネット」によって日本語化、サービス開始されたばかりのゲームであった。
当時、日本語環境で遊べる欧米産のMMORPG(DDOは厳密にはMOだが)といえばUO、EQ2以外はほぼ壊滅状態で、そんな折のLotroのサービス開始の知らせは、学生時代に指輪物語やドラゴンランス等の欧米産ファンタジー小説を読み耽ったわしにとってこの上なくありがたいものであった。

当時のさくらインターネットの代表である笹田社長は自身がコアなネットゲーマーという事で、Lotroの日本版サービスに着手したという。
プレイヤーの一部は,笹田氏をガンダルフになぞらえてササダルフ等と呼びその功績を称えた。
さすがにササダルフというネーミングはどうかと思ったが、わしの様に英語は分からないが欧米産ゲームが好きな者達に、Lotroという最後の砦を用意してくれたさくらインターネットに対する謝意には十分に共感する事が出来た。

しかしサービス開始後のわずか半年後、オンラインゲーム事業の不振によりさくらインターネットは大きな損失を出し、笹田社長は引責辞任。
程なくしてLotroはサービス終了する事となってしまった。この辺りの経緯は下記の記事に詳しい。
日本上陸、そして撤退した欧米MMOの軌跡―『D&D Online』と『LotR Online』
「指輪物語」においてフロドやガンダルフを始めとする旅の仲間達は、サウロンの闇の軍勢や指輪の魔力の誘惑といった万難を排し、やがて見事にその目的を達するのであるが、現実世界のゲームにおいては赤字という至極リアルな困難の前には成す術なく、ササダルフの指輪物語ワールドはあっさりと破綻したのであった。

月額課金モデルが既に時代遅れになっていたとはいえ、多額の損失を生み出してしまった事には同情の余地がある。
しかし記事にもある通り問題はその後、撤退の仕方である。
以下、サービス開始から終了までの経緯をまとめた。

2007/6/1    :日本語版サービスが開始
2007/11/27 :大幅赤字を発表 笹田社長が引責辞任
2007/12/5  :Lotroを含めたゲーム事業の継続を発表
2008/11/3 :拡張パック『モリアの坑道』を2009年初夏に導入すると発表
2009/6/30:日本でのサービス終了を発表
                    この時まで「モリアの坑道」については一切触れられず              2009/9/30:日本語版サービス終了
                    米サーバへのキャラクター転送なども行われず

「モリアの坑道」とは新クラス2つの追加を含んだ大規模アップデートである。2008年の導入発表後より、日本語版公式サイトではしきりにこの新コンテンツの紹介が行われた。ゲーム開発のTurbine社より発表される新しい情報を日本語で知る事ができるのは、日本語版運営があってこそであった。
既存のコンテンツに飽き始めていたわしを含むプレイヤー達は、これらの情報に大層胸を躍らせたものである。
しかし期待を持たせながらも結局「モリア」はサービス終了まで導入される事はなかった。
運営の公式掲示板への問い合わせの書き込みも、全て黙殺された。

今回これら関連情報を検索するに当たり、下記サイトより当時の事情を知る事ができた。笹田氏に代わり社長就任した田中某のブログである。
さくらインターネット創業日記-オンラインゲーム終了について
準備はしていたが開発元のTurbineから許可が出なかったとの事であるが
それならばそれでなぜそれを公式サイトで告知せず、この様な個人ブログで言い訳がましい事を書いたのか? 
記事に対する最初の書き込みが、大部分のユーザーの想いを代弁してくれている様に思うので、あえてコピペする。

『今更。。。ああでした、こうでしたと言い訳しないで下さい。
契約短縮からサービス終了の噂が出ているのにサービス継続、モリア導入を告知しておきながら噂通りのサービス終了
モリアも伸ばし伸ばしで結局サービス終了
フォーラムではサポートに質問しても満足な返答も無し
どう見てもユーザーに誠意を持った対応とは思えません
赤字で終わるのは仕方ないにしても終わり方が最低
とてもサービス業の会社のやり方には見えません』

仮にさくらが「モリア」の導入中止を発表していた場合、ユーザーがさらに目減りしていたであろう事は想像に難くない。
よってさくらはサービス終了までの日銭稼ぎの為に、あえて事実を公表せずだんまりを決め込んだのであろう。
どうせオンラインゲーム事業からは完全撤退するのだから、ゲーマー達からの信用問題など、もはやどうでもよかったのだと考えられる。
今考えても姑息なやり方に、わしは当時の怒りが再び蘇る思いがした。
わしにとっては「たかが10年前」の出来事である。
だが彼らにとっては「もはや10年前」の出来事であろう。

ロードオブザリング オンラインは、わしにとっては最初で最後の「サービス終了による引退」を体験した、苦い思い出を伴うゲームとなってしまった。
当時の運営責任者達は知るべくもないかもしれぬ
今でもそしてこれから先も、霧ふり山脈のスメアゴルの如く
胸に暗い想いを抱きながら過ごしている者がいる事を。

素敵な思い出を残し去って行った「いとしいしと」
「さくらインターネット」に災いあれ!