草ノ根プレゼンツ 緊急トークライブ “Let’s Talk About RACISM” をふりかえって[ヨシダアカネ]

先日6月13日(土)の夜9時から、
私たち草ノ根は初めての試み、YouTubeでのストリーミング配信によるトークライブを行なった。
(現在アーカイブにて公開中!~6/20まで)

きっかけは、5月末にアメリカはミネソタ州・ミネアポリスで起こった、白人警官による黒人男性 George Floyd さんの殺害事件だ。
警察暴力をはじめとする、黒人の命や生活(lives)を脅かす人種差別に対する抗議運動は、#BLACKLIVESMATTER のハッシュタグとともに、瞬く間に全米に拡散した。

そしてその波はSNSを通じて、ここ日本にも届いた。
6月上旬にInstagramのタイムラインが黒一色に染まったことを覚えているだろうか?
多くの友人たちがこの問題についてアクションを起こしていた。
SNSに溢れる多様な言説を目にし、自ら考え、混乱の最中にもかかわらず言葉を紡ぎ出す彼らを見て、たくさん心を動かされた。
2年間、大学院でヒップホップを例にした人種差別の研究を行なっていたので、彼らの胸中はいやというほどわかる。
彼らのために何かしたい。知識の共有をしなければ。

そんなとき、パートナーであり共に草ノ根を運営する Seiji Horiguchi からトークライブの提案を受けた。彼も思うところが多々あったのだと思う。
私は快諾し、私たちは何かに突き動かされたかのようにこのトークライブの開催を決め、準備にとりかかった。
今このタイミングで開催することに、すごく意義を感じていた。
本当はもっとちゃんと準備したかったし、万全を期して臨みたかった。
でも、「いま」やることに意味があったのだ。
それはご視聴いただいたみなさんにも伝わっていると思う(思いたい)。

さて、内容についてだが、
あらかじめ「目的」としてアナウンスしていたものはこちら。

①「今」を伝えるSNSだけではなく、「過去」に何があったのか、アカデミックな視点から黒人史や黒人文化の解説をすることで、「未来」に向けてどうすべきかを考える。

②ムーブメントを継続させるために必要な「学び」と「語り」の場を提供し、SNSの外に出るきっかけをつくる。

これにもとづいて、セクションを3つ設け、それぞれについてしゃべった。

セクション1
黒人史を概観する
~奴隷制から大量投獄まで~

セクション2
差別をするのはどんな人?
~加害者性の自覚~

セクション3
「怒る」ことについて

一番重きを置いたのはセクション1。
史実を理解してから今回の問題を考えると、また見え方が変わってくるので、今回これを開催する上でこのセクションは欠かせなかった。
この、歴史の部分に関しては今後もっと焦点を絞って、丁寧に解説する勉強会もやろうと思っている。

セクション3では、チャットが最も動いていて、印象的だった。
私たちの怒る権利はだれにも奪わせない。
そして、まっとうに怒るためには学ぶ。

また、このセクションの合間に、本の紹介をしたり、
様々な立場や考えの人からいただいたコメントを紹介したりした。
コメント紹介をすると、奥行きがグッと広がったのですごくよかった。
本記事の最後に、紹介したコメントを記載するので、ぜひ読んでほしい!

90分の予定を大幅にオーバーして、最終的に2時間ちょっととなった放送の間、
離脱者が非常に少なかったのも嬉しかった。
そしてなにより、チャットが盛んに動いていたのもよかった!
「『学び』と『語り』の場を提供する」という今回の目的が達成されたような気がした。
放送中に見られなかったコメントの数々も、放送後くまなく全て拝見した。
パンチラインがたくさん飛び出していて最高だったし、
いろんな立場や世代の人たちが同時に、あのライブを観ていたことが感慨深かった。
本当にありがとうございます!
放送終了後、感想や労いのお言葉をくださった方々も、ありがとうございました。
感無量です・・・。

反省点は、
年号やデータがするっと出てこなかったり、思うように言葉が出てこなかったりしたこと。
これは完全に私の準備不足なので、次回は必ず改善する。

そうだ、実は、次回の開催日程がすでに決まっているのです!
7月26日(日)21時~
次回はもっと個別の事例にフォーカスして、
より深く濃くディスカッションできればいいなと。


それでは最後に、放送内で紹介した様々な方からのコメントを掲載して筆を置こうと思う。

※坂下先生が呼びかけ人となった、
NHK『これでわかった!世界のいま』(2020 年 6 月 7 日放送回)の番組内容とSNS での投稿に関する要望書
全文・署名フォームはこちらから(~6/19まで!)


「みんなの声を紹介」でのコメント
(放送内で紹介した順)

1. 半ライス大盛りで。 さん

ツイッター、インスタグラムで「Black Lives Matter」を発信したり、見たりして思うのは日本人はもっとシンプルに感じたままに動いてみればいいのに、、ということ。

“黒人差別の歴史を詳しく知らないから”や “政治的な発言は皆に煙たがられる”と思い発信できない人が周りにいる。中には”今更になって言い出すなんてダサい”と言う人もいるらしい。

例えば、たまたま教室に入った時、クラスメイトの内2人が喧嘩しているのを目撃した。片方が掴みかかり首を絞めていて、もう一方は「息ができない、死んでしまう」と叫んでいる。
どうする?
“2人の間の過去に何があったかわからないから”、 “止めたら他のクラスメイトに嫌われるかも”と思って止めなかった、結果その生徒は亡くなってしまった。
後になって “俺は2人が仲良くなれるように手伝ってたよ。その場では止めなかったけど” と言ってる人もいる。

全員に “いや、いいから助けろよ” って言いたい。
シンプルに考えよう。

インスタに投稿、訴える good
署名する 当然 good

踊ったり歌ったり配信したり、、それぞれのやり方で発信するのが素敵だと思う。
投稿よりも人の心に触れて伝えることができると思うから。

だからあかねgood!!!



2. Riyako Murata さん

SNSの活用が新たに大きな影響を与えているBLMへの活動について感じること

いま日本ではアーティストやダンサーのような密接にブラックカルチャーと関わる人々が主に大きな声をあげています。
でもそれじゃ足りないと思う!

わたしたちが生きているなかで当たり前になっている色んなことに目を向けてみると、日本中ほとんどすべての人がブラックカルチャーの恩恵を受けていると思います。

聴く音楽、観るテレビ・映画、食べているもの、使っているもの
まったく関わっていない人いますか?
特に音楽。
HIPHOPだけじゃない!
SOULやJAZZだってもっと昔に確立されたブラックカルチャー!

その音楽を聴いたことがある人、踊ったこと歌ったことがある人は絶対に彼らの文化の恩恵を受けたまま無視しちゃだめ!

”昔から黒人差別はずっとあるから“って人の命が関わっているのに、当たり前になっていいわけないよね?
自分の身の周りで起こってないからって、彼らの恩恵だけ受けてノウノウと生きているのはとっても失礼で恥ずかしいことだってわからないと。

同じ地球に住む、同じ人間!
みんな目に見える色が違うだけで同じでしょう!
一緒に愛を持って生きていきましょう!



3. Fuko さん

中学生の頃からヒップホップにハマりだしたんだよね。ただ単にかっこいいっておもったから。その頃は何で自分は黒人じゃないんだろうとか、何で男じゃないんだろうって思ってた。どんなに憧れてもその一部にはなれないんだなって悲しかった。他の音楽聞くようになってもR&Bとかジャズとかだった。憧れのアメリカ、憧れの黒人。

でもその文化を知れば知るほど、黒人になりたいって思えなくなった。憧れのアメリカは自由の国じゃないって知った。と同時に、自分の人種や自分の性別に誇りを持てるようになった。それは日本がどうこうってはなしじゃなくて、自分はそれを選べないし、そのままで生きていくしかないって気づいたから。めっちゃ当たり前なんだけどね。選べないなら、受け入れて、誇りを持つ。彼らがかっこよく見えたのはその境遇にも関わらず自分たちに誇りを持っていたからだった。

だけどその社会の構造がそのままであっていいはずがない。自分で選べない何かで人としての扱われ方が変わる、そんなのはおかしい。それはアメリカだけでなく、日本でもそう。その構造はとても大きくて、長く続いてて、とても自分の力では変えられそうにないように感じてた。でも、今、変わるかもしれないと思っている。学ぶ、声を上げる、寄付する、デモに行く、他人の立場で考える。ひとりひとりができることを少しだけやってみると、世界って変わるんじゃないかな。夢見すぎって言われるかもしれないけど本気で思ってる。

どんな人も自分に誇りを持てて、すべての他人を尊重できる社会になりますように。



4. 坂下 史子 さん

立命館大学の坂下史子です。アメリカの人種暴力と抵抗の歴史を研究しています。
Black Lives Matterは、日本語で「黒人の命は大切」とか「黒人の命も大切」と訳されることが多いのですが、「Lives」は「命」の問題にとどまらず、「生活・暮らし・生きること(権利)」全般を含んでいます。抗議デモの直接のきっかけは、ジョージ・フロイドさんや、アマド・オーブリーさん、ブレオナ・テイラーさんらが亡くなったことかもしれませんが、その陰には、おそらくすべての黒人が少なくとも一度は直面しているであろう、日常的な暴力やハラスメントがあります。彼ら・彼女らの暮らしは常に監視下に置かれていて、ジョギングをしたり、夜にフードをかぶって出歩いているだけで「脅威」とみなされ、通報されたり、職務質問を受けたり、最悪の場合には命までも奪われるという現状があります。日々の暮らしを安心して営むことができない状況がこれまでずっと続いてきたからこそ、彼らが「黒人の人間らしく生きる権利が大切」だと訴えていることを、私たちは忘れないことが大事なのではないかと思います。
ところで、みなさんは、今週ニュースになったNHKのツィッター動画の問題をご存じでしょうか。NHKのニュース番組が投稿したアニメ動画には、黒人(特に男性)が「怖い存在」「脅威」として描かれ、その人種差別的なステレオタイプに国内外から厳しい批判の声が上がりました。投稿は削除され、代わりに、「配慮に欠け、不快な思い」を与えたとの謝罪が掲載されました。しかし、動画の最大の問題は、視聴者に「不快な思い」をさせたことではなく、抗議デモを解説するはずの番組が、デモの誘因となった警察暴力を正当化するようなステレオタイプを再生産し、結果的に人種差別の仕組みの維持と強化に加担してしまったことです。アメリカでは、まさにこのようなステレオタイプが、黒人の命や平穏な暮らし(Black Lives)を奪うことを正当化してきた長い歴史があり、デモの参加者はそのことに抗議していたのにもかかわらず!です。
この問題について、私を含むアメリカ研究者有志は、昨日NHKあてに要望書を出しました。メディアやSNSでも紹介されているので、関心のある方はぜひ読んでいただければ嬉しいです。今日の様々な話題ともつながる部分が見つかるのではないかと思います。
最後に、このような意義深い緊急トークイベントを企画・開催してくださったヨシダさんとHoriguchiさん、また高い関心をもって今このイベントを視聴してくださっているみなさんに、深い感謝と敬意を表します。



5. 匿名

重要なのは、より俯瞰した視野と想像力だ。

「差別はよくない」
これはもちろん大前提ではある。
しかしジョージフロイド氏が
殺害された数十秒の動画だけで
世界中が反応し、ハッシュタグをつけ、
黒い画像をSNSにあげることは
少し安易なのではないかと思う。

黒人差別は今に始まった問題ではないし
ましてや差別は黒人に向けられたものだけではない。
自分はフランスでヘアスタイリストとして
仕事をする中で差別をされてきた側の人間だった。

「黒人が白人警官に殺された」というのは確かに事実。
しかしいろんなケースが世界中にはあるはずだ。
アジア人⇆アフリカン
アジア人⇆ヨーロピアン
など。

重要なのは、より俯瞰した視野と想像力だ。

自分は肌の色ではなく、
その人のルーツで区別するようにしている。
例えば黒人については
「Black People」と呼ぶのではなく
「African ◯◯」と呼ぶ。
"African American"だったり
"African European"だったり。

逆に自分も「Asian」と自己紹介をする。
肌の色では区別していない。

重要なのは、より俯瞰した視野と想像力だ。



6. Marin さん

「SNSで拡散だけすればいいと思ってる人がいる」とか「そういうあなたはどうなんですか?」とかっていう意見をみると萎える。
誰かがリーダーシップをとって何か一つのことをやったり提案したりすると、それを見てるいろんな人のいろんな考えがあるから、仕方ないけど、人のあら探しのような意見。
でも、この問題をSNSで拡散してる時点で、
みんなこの問題について考えられてるから
それでいいじゃないですか少しずつで。
自分はSNSで拡散されてる動画をみたら、リアルに伝わってきて自分を変えたいって思った。



7. Sae さん

ここ数日、アフリカンアメリカンの問題についてずっと考えています。

先日のTerryのZoomディスカッション
#breakthesilence ,violence も拝聴しました。
歴史や現状を深く知らないまま、
日頃の Black Culture の恩恵を outfit の様に試し、
重い問題に当たる時はそれを脱ぐ、そんな行為は
ただの cultural appropriation なのでは
という憤りも伝わりましたし
実際に影響を受ける Black 以外の人が声を上げる事が
とても大きな意味になる
という思いも伝わりました。

誰がこの事について行動してるしていない、
誰がこの事をどう思う思わない、とか、それよりも。
自分は、知って、調べて、ちゃんと考えられる人になりたいと思いました。

また今回のことに限らず、自分で咀嚼する必要のある事、
世の中には本当に山程あります。

DETROITのラストシーンが、今は忘れられません。

#AsianForBlackLives


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