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トークライブ "Let’s Talk About RACISM vol.2" を振り返って[ヨシダアカネ]

第2回目の開催からあっという間に2週間がたってしまった…
誠二くんが網羅的で素晴らしい振り返りを書いてくれたので、
私は放送内であまりできなかった「お気持ち表明」をしようかなと。
というのも、当日は準備してきた内容を話すのに精一杯だったので…(笑)


アメリカの黒人奴隷制度というのは、ナチスのホロコーストに並ぶ、
国家規模での大量虐殺の歴史でもあります。
アメリカという国は、
何千万という人々の命や尊厳を奪ったうえで成り立った(ている?)国だということ。

アメリカ史を概観してみると、
奴隷制度が敷かれていた期間と奴隷解放以降の期間では、前者の方が長いです。
その長さ、およそ250年。
お母さんも、おじいちゃんもおばあちゃんも、ひいおばあちゃんもみんな奴隷です。
現代に生きるアフリカ系アメリカ人の先祖の多くは、元奴隷です。

ここで、
オバマ前大統領の青春時代を描いた映画『バリー』(Netflixで見られます!)での一幕をご紹介しましょう。

バリーことオバマは、授業で奴隷制度を例に出して論を展開し、
白人である友人のサドから、
「聞いていいか?なぜすぐ奴隷に結びつける?」
(Can I ask a question, though? Why’s everything always gotta be about slavery?)

と問いただされます。

後日、夜間に大学構内に入ったバリーは、
警備員の白人男性に呼び止められ、たまたま通りがかったサドに助けられます。
サドの手にはお酒の缶。
サドと二人きりになり、半ばやけくそになったバリーはこう切り出します。
「君は酒を飲んでも問題にならない」
「俺は歩いてるだけで犯罪者扱いだ」
「なぜ奴隷にこだわると思う?」
(You know everything’s about slavery?)

サドは「さあね」と答え、バリーは
「だからクソなんだ」
(That’s why you’re an asshole)

と吐き捨てます。

この一連の会話から見えてくるのは、
アメリカ黒人にとっての奴隷制の重みと、
彼らと非黒人との間における歴史認識のズレではないでしょうか。
奴隷制という負の遺産が、
今もなお(劇中では1981年)彼らに影響を及ぼしていることがわかります。

また、
「アメリカ国内を歩く肌の色の濃い人物」であるというだけで犯罪者扱いされる、
という状況が現代も変わっていないということは、
先の George Floyd 氏の事件が物語っています。

繰り返しますが、そんな状況のすべての発端となったのが黒人奴隷制度です。

この残酷で狡猾で倫理性の欠片もない制度が250年も続き、
アメリカという国の発展に寄与してしまい、
今もなおその影響を受け続けている人々がいるという事実に、
きちんと真正面から向き合う必要があると思います。

この間インスタライブでNワードについてしゃべりましたが、
Nワード然り、BLM然り、それらの議論に必要なのは歴史的な視点です。
現代の、身の回りの事象だけを材料にして考えるべきことではない。
歴史的な見地を踏まえると、
「黒人はNワードを言っていいのに、他の人種がダメなのは納得がいかない」

「Black Lives Matter は逆差別だ、 All Lives Matter でしょ」
などという意見が、いかに的外れでとんちんかんなのかがわかると思います。

なので、学ぶこと/考えることをやめずにいきたい。いきましょう。


次回は、
上杉忍『アメリカ黒人の歴史』第2章[南北戦争から「どん底」の時代へ]
奴隷解放前後の南北戦争期~戦後の再建期を扱います。
ちょっとまだ日程は未定なのですが、またぜひご参加くだれば幸いです!


最後に、放送内でご紹介した参考文献リストを掲載して、終わりにします。

◆ジュリアス・レスター文、ロッド・ブラウン絵『あなたがもし奴隷だったら』片岡 しのぶ訳(あすなろ書房、1999年)

◆ハリエット・アン・ジェイコブス『ある奴隷少女に起こった出来事』堀越ゆき訳(新潮文庫、2017年)
↑ハードカバーもあり!原典は1861年

◆池田まき子『自由への道 奴隷解放に命をかけた黒人女性 ハリエット・タブマンの物語』(学研プラス、2019年)

◆ニール・ホール『ただの黒人であることの重み ニール・ホール詩集』大森一輝訳(彩流社、2017年)

ただの黒人であることの重み: ニール・ホール詩集www.amazon.co.jp 1,100円(2020年08月10日 21:31時点 詳しくはこちら) Amazon.co.jpで購入する

◆和田光弘『植民地から建国へ植民地から建国へ 19世紀初頭まで』(岩波新書、2019年)

以上、紹介順


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