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ボードゲーム紹介①:ごきぶりポーカー

ごきぶりポーカーというカードゲームを知っているだろうか。

このルールについて解説するのはこの記事の趣旨とはずれるので、参考サイトを貼っておく。興味がある人は是非見て欲しい。

ごきぶりポーカーはなぜ面白いのか

結論から言えば、嘘をつくコストを下げるシステムがあるからだ。

このゲームの基本システムはダウトと同じだ。いかにして嘘をつきながら手元のカードを減らし、他の人にカードを押し付けていくかが重要となってくる。

しかし通常のダウトは自分 vs その他になっているため、嘘がバレるリスクが非常に高い(もちろん、「その他」の中の一人になったときには、他の「その他」の人が嘘を指摘してくれることにかけて自分が積極的に動かなくなるというシチュエーションは容易に想像できるが、今は置いておこう)。

嘘がバレてしまうことは、たとえゲームだとはいえ耐えがたいものがある。人狼のように理詰めできる部分が少ないとはいえ、

嘘による駆け引き

そもそも嘘をつくゲームにおいては、積極的に嘘をつかなければ駆け引きは生じない。誰もが守りに入って、淡々と場をこなしているだけだと、あれよあれよという間にゲームが進んでしまって何も面白くないだろう。誰も何も話さない人狼、一周回って見てみたいが、一度で十分な気もする。

例えばクーというゲームは嘘を指摘するメリットがあまりにも低いように感じた。もちろん一度しかプレイしていないので、その感覚がどれほど正しいのかは分からないが。

そうすると全員が淡々と手番をこなすだけになってしまい、場を面白くするために嘘をつき・指摘するというピエロのような役回りを演じる羽目になってしまう。

嘘がバレるリスクに対して、嘘をつくリターンがイーブン近くにないといけない、ここのリスクとリターンのせめぎ合いを「駆け引き」と呼びたい。

ごきぶりポーカーにおいては、その嘘がバレるというリスクを2つの方法で低減している。そのことによって嘘をつくリターンを相対的に上昇させ、駆け引き性のあるゲームが生まれるというわけだ。

(ここまで、私は駆け引き性がゲームの面白さを担保するという前提に立っている。これについては詳細な議論が必要だが、本記事の主眼ではないため別記事にて改めて述べることとしたい。)

一つ目の方法

一つ目の方法は

一対一の戦いにしない

ということだ。

このゲームでは、人から押し付けられたカードを、他に人に押し付けることができる。例えば「かえるです」と言ってAさんから回ってきたカードを確認し、Bさんに「いいえ、これはさそりです」と言って押し付けるのだ。

もし他の人に押し付けるという部分がなければ、誰かが自分を指名した時点でその人と一対一の戦いになってしまう。もちろんゲームとして成立しないが、嘘を見抜くしかゲームを前に進める方法がない。

そうすると、嘘をつくのが苦手な人はなるべく嘘を見抜くのが苦手な人に押し付けるようになってしまう。嘘をつくのが上手い人が勝つという、ゲームとしては当然なのだがパーティゲームとしては失格のゲームになってしまう。

しかしこのゲームでは、自分が嘘をついた相手がカードを見た時点で、一対一の戦いから逃れられるシステムになっている。その時点で、そのターンに自分が負ける(=カードを受け取る)心配はなくなる。あとは他の人たちの醜い嘘のつき合いを眺めているだけでいい。しかも自分はそのカードが何のカードかを知っている。岡目八目、絶対安全圏からニヤニヤする楽しみがここにはある。

二つ目の方法

二つ目の方法は

「ゲーム前後半」におけるゲーム性の違い

による。

ゲーム前後半、には二つの意味がある。

ラウンドの中で、全てのプレイヤーは嘘を見抜く立場から、嘘をつく立場へと入れ替わっていく。つまり自分がカードを渡す人がさらに別の人に渡してくれるだろうという一方的な「信頼」のもと、嘘を見抜く立場を捨ててカードを見て他の人に渡すこと、つまり嘘をつく立場へと入れ替わる。

そしてその順が深くなればなるほど、つまりA→B→C→D...とカードが渡っていくと、嘘をつくことにはリスクが伴う。例えば4人でやっていたとき、Dさんは他の人に渡すということができない。他の三人はそのカードが何かを知っているからだ。これはゲームのルールである。

そうすると、Dさんは嘘を見抜くしか選択肢を与えられていない。ただし、少し状況は異なるが、Cさんもカードを見るという選択肢を取った時点で、嘘をつくしか選択肢が与えられていない。そうすると(参加者数−2)人まではカードを渡す人をナイーブに「信頼」して、嘘をつく立場にまわることができるが、最後の二人には異なる読み合いが発生する。

つまり否が応でも嘘をつかないといけない、嘘を見抜かないといけないという状況に持っていくゲームでもあるのだ。コストを下げるというよりも

そしてもう一つの意味は、このゲームの敗北条件に関わってくる。

このゲームは4枚同じカードを最初に集めてしまった人が負けだ。したがって同じカードが2枚くらい集まってきた段階で盤面は別のモードに移行する。

複数枚集まっているところには、そのカードを集めようという暗黙の力が働く。そうすると嘘をついてでもその人にカードを押し付けてやろうという流れになるため、嘘をつく(心理的)コストが下がるように感じるまた口には出さないものの連帯感のようなものが発生する。それがさらに嘘をつくコストを下げる。

例えばAさんの手元にゴキブリが2枚集まっている場合、BさんからするとCさんに「これはゴキブリです」と言って渡すことがほぼノーリスクで行える。なぜならCさんからしても、ゴキブリはAさんに渡したいはずであり、今Bさんと一対一の対戦に持ち込む必要性がないためだ。するとCさんはBさんからもらったカードをノータイムで見るし、Bさんからするとそのカードがなんであれ、そのターンの敗北はなくなることになる。

逆に複数枚集まっている人からすると、狙われていることが分かっているのでまた別の読み合いが発生する。こいつは自分に3枚目を押し付けようとしているから...といった

4枚というのも絶妙で、余裕をかましているといつのまにか手元に複数枚集まってきてしまうということも起こる。立場がころころと入れ替わるのもこのゲームの醍醐味だ。

さいごに

ごきぶりポーカーはダウト系のゲームの中では初心者でもとっつきやすい名作だ。これを機会に友人とプレイしてみてもらえると嬉しい。

ダウトのもつ一対一の難しさを低減したゲームとしてFABFIBが挙げられるが、こちらは前の人のついた嘘を後ろの人が引き受ける、という別の面白さがある。機会があればこちらも簡単に解説してみたいと思う。

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