月光 調声晒し
オーケストラコンサートの記事を書いている間に、宮舞モカちゃんによる「月光」のカバーが2万再生を超えたので、記念にこちらも調声晒しをします。それにしてもこの連休中、1日3000再生以上されているってこと?普段1年で3000行く動画も殆どないのに?どうなっているの?
この曲、原曲は聴いたことがある程度でどうとも思っていなかったのですが、ある日Suaraさん(オケコンの「キミガタメ」の原曲シンガー)による生歌カバーを聴く機会があって、その声のパワー、表現力に度肝を抜かれました。音声合成でそんなことができるキャラは長らくいなかったのですが、宮舞モカちゃんならもしかして、その何分の一かでも再現して皆をびっくりさせられるのでは?とコンサート用データ作成中に思いつき、こっそり作っておいたものです。もちろん、試作版の音を勝手に出すわけにはいかないので、発売後に自分で買った製品版に置き換えて公開しています。
私は別に調声その他隠しておく理由はなく、他の人の調声も良くなって欲しいといつも思っているので、ここで解説していきます。
さて、冒頭からカーブがえらいことになっていますが、これはむしろ冒頭だからです。コンサートの記事で解説したように、私の場合はテンションと有声・無声で表現を作り込むのが基本になります。この曲では他のパラメータは表示されている通りで固定です。
テンションは高い音は高く、低い音を低くが基本になります。この冒頭部は「世界に落とされた」で大きく下がりますので、ここでテンションを大きく下げて同時に無声に近づけると、このような絞り出すような声になります。
有声無声は、まず語尾の息を抜くところを下げます。音の先頭で下げると、子音を強調したり、母音であれば唸ったり絞り出すような声になります。下げすぎると音が悪くなりますが、この曲は音が多少雑でも迫力になるので、かなり下げて使っています。母音のロングトーンは基本全開にしますが、その前後で下げて無声に近づけると、その母音を強調することができます。
「Gods」は、これも解説したように子音で終わる外国語ですから、最後を切ってsが八分の表に来るように調整します。この語尾の子音がリズムのどこに来るかで、英語のリズム感が大きく変わります。日本語の曲でも、全てつなげてレガートにしてしまうと、いくら他を頑張っても平坦な印象になります。良い調声はまず音の長さ、デュレーションに気を配るべきです。これはVOICEVOXのような、他にいじりようがない音源でも有効なテクニックです。
ブレスは私の場合入れないことが多く、特にコンサートではホールで悪目立ちしやすいため6曲中1曲(ホールニューワールド)しか入れていません。この曲ではリズムを構成する上で重要なので入れています。
続きです。同じようにカーブを描いていきます。特筆すべきことは「こんなものの」の「な」の終わりにしゃくりが入ることです。これは狙ったものではなく、ライブラリの特性で勝手に入ったものです。法則性は不明ですが、人間っぽさに大きく貢献するのでそのまま有り難く活用しますw
最後の「ない」は一音符に二母音が入ります。これはそのまま歌詞を入力すると非常にダサいので、何らかの方法でコントロールします。このような二重母音は先頭の母音を伸ばして、最後に母音が切り替わるのが普通で、英語の「ay」に置き換えるとそうなりますので、それを使う手もあります。私の場合は、普通に分割して、最後の「い」までに息を抜いて無声に近づけるようにしています。他にも色々な方法があると思います。
「この鎖が許さない」は息が切れるように歌うので、テンションを思い切り下げます。ライブラリによっては(京町セイカとか)ここまで下げると声にならなくなりますが、宮舞モカは大丈夫です。この辺が表現力が高いと言われる所以ですね。テンションを下げて無声に持っていくとノイズになってしまうので、ここは有声に近づけます。
続くパートも同様です。ちなみに真面目に原曲を聴かずに記憶で作っているので、歌詞を間違えてますねw 気づいた時には修正期限を過ぎていました。。
同じことの繰り返しは飛ばして、「弱さを許す?」まで行きます。ここは高音が続いて盛り上がるところなので、基本的にテンションはプラスです。有声無声も基本的に全開ですが、子音を強調したい「す」だけ無声に近づけています。また「私を」の「を」は母音が続くので、補助的に子音「w」をいれて「うぉ」というふうに発音させます。
「加速させて行く」の部分です。ここはロングトーン高音なのでテンションプラス、有声全開です。どう聴いても「加速させてく」と歌っているので、歌詞はそのようにしています。後に続く「うぅうー」の部分は、息を抜いてハミングのようにしています。この音程でテンションを下げすぎると不自然なノイズになるので、そちらは程々にします。
転調後もやることは変わりませんが、1半音とはいえキーが上がっているのでテンションの値には注意が必要です。マイナスの値はより注意深く使うべきです。
「爪痕をつけて」の後「てぃえええー」みたいに歌う部分は、この曲の最高音で一番カッコいい部分ですが、今までと特にやることは変わりません。宮舞モカはこの辺で声が裏返りますが、そのままで特に違和感がないので今までの説明通りのことしかしていません。裏返らせたくなければテンションを上げるか、トーンシフトをマイナスにするとよく、もっと力強い感じになりますが、この曲の場合は声を絞り出す方が似合っているように思います。
あとは曲の終わりまで同じなので省略します。これにプラスしてPowerfulあやSoftのカーブを書いてやると表現力が増しますが、やることが増えるのと、カーブを増やすと音が悪くなっていきます。テンションと有声無声で声をコントロールする方法はどのライブラリでも共通で使えるテクニックなので、まずはこれをざくざく描けるようになると良いと思います。ちなみにこれはライト版でも全く同じに通用します。
この曲で使ったテクニックはここに書いた通りSynthesizer Vのほんの一部ですが、宮舞モカの性能もあいまってこのように人間らしく歌わせることができます。特にバラード系では有効なテクニックですので、活用してみてはいかがでしょうか。
というところで記事を締めたいと思います。ここまで読んでいただいてありがとうございました。